かすり傷。
切り傷。
うち傷。
打ち身……。
打撲傷。
青あざ……。
治りかけのかさぶた……。
「なにしてるの?」
「この傷の名前、考えてるの」
その白い指で辿るのは、戦いの証。
「……うーん、切れ味の悪い短刀で切りつけられた傷はねえ……。切り傷でいいんじゃない?」
「でも、叩き付けるように攻撃してくるから、青あざになるんだよねえ。傷のまわりが」
「まあゴブリンが刃を研いでるなんて考える方がなんかイヤだけどね」
「お陰で治り悪いんだよね」
でも、そんな傷ばかり。
怪我が治ればまた怪我をして。傷跡は増えていく一方。
けれど考え方を変えれば、この怪我をして、みんなを守っていることになるんだろうか。
「あ」
「なに?」
「この傷の名前、決めた」
名前が分かった、じゃない。
きょとんと首を傾げて、問い掛けてくる視線に、にっこり笑って答える。
「ずばり、“名誉の勲章”!」
自信満々に答えたのに、返ってきたのはちょっと冷たい視線。
「……旦那様度が増したね」
「だ、だめ?」
「むしろ無駄な怪我はしないように、心がけようね」
結局心配されてしまうのだから。
「えぇえええぇぇ〜」
「強くなれば、いいじゃない」
強くなりたい。
もっと、誰かを守れる強さを。
了