清らかな関係


ヤンデレフィッケルさんのお話です。pixiv投稿作品。(2015.03.15)

 大きなガラスの壁の向こうに、愛しい人がいる。
彼は部下の理不尽な行動が理解出来ず、怒りを露わにしていた。
その、銀色の髪をしたいつも忠実な、かつ理不尽な部下は不敵に微笑んでいる。

「おい、出せ、フィッケル!」
「何のつもりだ!」
「ふざけるな!」

きっとこんな風に怒鳴っているのだろう、でもあらん限りの声を張り上げても、フィッケルの耳には届かない。
音声マイクを繋がなければこのガラスの壁の向こうの音は聞こえない。


 巨大なガラス張りの密室には先客があり、ぬらぬらと光る桃色の触手を蠢かせ、彼の直属の上官である
フォムト・バーガー隊長の体に絡み付いている。軍服はだいぶ破れてしまったが仕方が無い。次第に
素肌が露わになるにつれ、強気に見えたバーガーの険しい表情に怯えが滲み広がってきた。
大きな口を開けて怒鳴ることも諦めたらしい様子を見てとったフィッケルは呆れるほど冷静に室内音声
マイクのスイッチを入れ、愛しい隊長へと呼びかけ始めた。

「隊長。大丈夫ですよ、そいつは人体に危害は加えません」
『…馬鹿を言え、この有様を見てよくもそんな』
「怪我はしませんよ。ただ、好物が精液だそうで、それ欲しさにいかがわしい行動をとるそうですがまあ、
彼等にとっては自然な捕食行動ですから責められるものでは無いでしょう」
『おい!フィッケル!涼しい顔でそんなことを言うな……っあ…っ』

 目の前で隊長のズボンが引き裂かれ、股間を触手がズルズルと撫で、欲望の兆しを探している。
素肌にはねっとりと触手の粘液が淫靡に光り筋を引いている、そんな様子をフィッケルはうっとりと見つめた。

「好くしてくれるらしいですよ、隊長」
『お前、一体、………』
「いいじゃないですか、ゲットー少佐もいなくて体がお寂しいのでしょう?」
『な、……あぁ……あ…』
すっかり衣服を奪われ、隊長は私の見ている前で触手に乳首を弄られ喘ぎ始めた。そこも触手の持つ
粘液が付着して、いやらしくライトに照らされ光っている。

『よけいな、世話だ、…あ……』
触手は鋭敏な感覚器で興奮している箇所を的確に探り出し、そこを執拗に責めてゆく。
触手の太さは色々で、無防備に晒された股間にも数本の太さもまちまちな触手が絡み付いていた。
「部下の目の前で、こんな姿をさらすなんて。恥ずかしいですね、隊長」

フィッケルの目の前でバーガーは体の至るところを触手に巻き付かれ、大きく脚を開かされ、その中心を
嬲られている。人間同士での行為ならば前戯と名の付く行為もあるのだろうが、相手は触手生物だ。順序も
あったものではない、もう彼の肛門に容赦なく太い触手を突き立てており、バーガーの荒い息づかいと共に、
じゅぶ、ぬぷ、と触手の表面から滲み出る粘液が泡立つ水音まで聞こえてくる。

「それにしても、こんな目に遭っても勃つんですね。いささか呆れますよ」
『うっ、……うるせ……』
「見られて感じるんですか」
『……』
悪態をつく余裕も無くなってきたのか、バーガーは無口になり悩ましげな視線をガラスの向こうでどこか
冷ややかな微笑みを浮かべたままの部下へとくれた。肛門から侵入した触手に体の奥から刺激され、
立派に勃起したペニスから透明な液体がたらり、たらりと垂れている。このような刺激に慣れている、と
思われるのかと不安にかられる程、触手は巧みにバーガーを刺激し、彼の体から半ば強制的に淫水を
湧き出させてはその下腹を濡らしていった。


「ゲットー少佐にも見てもらいますか?映像を送ることだって出来ますよ」
『や、止めろ』
「何です、部下に見られても平気だけど恋人には見られたくないなんて、妬けるなぁ」

尻穴には今は丁度ペニスと同じくらいの太さのものが入り込み、その身を蠢かせている。

『んっ、ふ………』
バーガーはもう、物を言うことも出来なくなっていた。その、良く文句を言う口にも触手が入り込み、喉の
奥までぐいぐいと侵入してくる。歯を立てることも出来なかった。そして何時の間にかバーガーのペニスの
先には、他の触手とは違う先端を持つものがしっかりと絡み付いている。
そんな、一切の自由を奪われたバーガーの姿態をガラスの壁の向こうからフィッケルは食い入るように
見つめていた。

こんな状況でも半ば強制的に性感を与えられ、そして達しようとするのかバーガーは足先の指をぐうっと丸め
込んでいるのをフィッケルは見逃さない。やがて触手に抱かれたまま、バーガーの裸体は弾かれたように
大きく跳ねた。
ペニスの先端に張り付いていた触手が何かを飲み込むようにいびつな凹凸をその腕に形成する。

フィッケルはガラスの壁にぴったりと体をつけ、愛する上官の震える爪先、揺れる紫色の髪の毛、
口の端から垂れてゆく唾液さえ見逃すまいと目を見張っていた。精を搾り取った触手は絡めていた
腕を緩める。その瞬間、
気を遣ってうつろな目をし、荒く息をついていたバーガーは思い切り触手を
振り解き、逃れようと走り出そうとした。が、触手は彼を離すつもりはなかったらしい。素早く伸びた腕が
バーガーの右足に蔦のように絡み付く。

『フィッケル、……!』

憎悪に燃える青い瞳が射貫くようにフィッケルを睨み据えている。

 ああ。こんな状況でも、貴方はいつもの貴方なのですね。

凄む瞳はまるでナイフのようにフィッケルを裂いてゆく。

 貴方に切り裂かれるならば本望なのに。

ぞくぞくと興奮に背が粟立つ。フィッケルは歪んだ期待に笑い出しそうになり、拳を口に押し当てそのまま
唇に当たった皮膚をぎり、と噛みしめた。

『……ああ……!』

ガラスの向こうで、バーガーの下半身が再び触手に苛まれている。
馴染んでしまったのか、どこか恍惚とした表情を見てとり、このような下等生物に愛する隊長を抱かせて
おきながら、自分は決してこのようなことを直接出来ないのがもどかしい。

本当は、抱きたい。
心ゆくまで愛を囁き、闇が白むまで貴方を抱いていたいのに。

許されぬ恋に幾度涙を流しただろう。
貴方の隣に居ることができる人を見て、幾度心に嫉妬の炎を滾らせたことだろう。

目の前では四つん這いになって逃れようと藻掻くバーガーに触手が絡まり、青い肌には至る所に粘液が
まとわりついてぬらぬらと光っている。尻の間で忙しなく触手が蠢いているのが見えた。
『ああ、ああ、……いやだ、止め……はぁっ、はぁっ、ああああ!』
がくん、と全身が跳ねる。また射精したのか。がくがくと衝撃の余波が全身に拡がり行く様さえフィッケルの
視界にはあきらかだった。

そんな、触手なんかに隊長の精をやりたくなど無かった。でも、仕方がないのだ。


 バーガーがぐったりと床に俯せたのと同じくして、触手生物もとりあえずは満足したのか、ゆるゆると腕を
引っ込め、小さく丸まりひとつの塊になった。
辺りは急に静寂に包まれる。直ぐにでも傍に駆け寄り、愛しい男を抱き起こし、触手の粘液や汗に濡れ
乱れた紫色の頭髪を綺麗に整えてやりたい衝動もあったがフィッケルはその場に立ち尽くし、バーガーの
挙動を見守った。


『……』

身じろぎもせず気を失ったかに見えたバーガーだったが、やがてフィッケルの視線に気付いたかのように
目を覚まし、むくりと憔悴しきった顔を上げる。フィッケルの銀髪がライトを反射したのか、バーガーは眩しそうに
眉間に皺を寄せ目を細くした。

『……フィッケル…』

目元には涙の跡があったがフィッケルの心は痛まなかった。ただ全てが愛おしかった。

『どうしてこんな真似をした』
「好きだからです。隊長」

嗄れた声でバーガーは部下をなじるが、フィッケルの答えはバーガーにとってはあまりにも意外過ぎて、
彼は二の句も告げず呆然といつもは己に忠実な部下を見上げた。
しかし体に力が入らないらしい。暫くはフィッケルを仰ぎ見ていた顔もくたりと再び床に落ちる。





Next→