飼 育


2199のフラーケン中佐の過去話。Ⅲでは笑い方の面白い変態スピッツちゃん(飼い主ガイデル)でしたが
今回ただ格好良くなっただけかと思いきややっぱり変態さん(*´∀`*)。しかも飼い主は総統です?すごっ!
それはともかく、ひとさまの萌え見て萌えた、そんなSSです。(2013.04.017)
              
このSSはエルク・ドメル×アベルト・デスラーの描写を含みます。
また、フラーケンさんが可哀相な目に遭う(調教)ので嫌な人は読まないでくださいね。






 「ヴォルフ・フラーケン少佐、か……」

 登録軍人の詳細ファイルを呼び出し、デスラー総統は眼前に立つフラーケンの経歴にざっと目を通し、
そして右手を掲げガミラス式の敬礼を崩さぬまま控えている本人を見やった。

「この度の任命、有難く拝命いたします。ガミラスと我が総統に、限りない忠誠を」
「よい。そんなことは判っている」

 賛辞に全く興味を示すことなく、デスラーはすうっと立ち上がった。
思ったより長身だ。顔が繊細なので優男だと思っていたが、なかなかどうしてしっかりとした骨格を持った
肉体と、何ものにも怯むことのない強い眼差しが印象的だと、初めてデスラーを間近に見たフラーケンは思う。
彼にしたって、上官を敬わないことでは有名な男だったが、デスラーの尊大さは次元が違う。

「君は犬だ」

「……」
「私の、猟犬だ」
「はっ。ディッツ提督からも総統直轄の部隊を編成すると…」
「犬が口を利くな」

フラーケンは眉を顰めた。一体、総統は何と言ったのだ?

「君には悪い癖がある。とかく上官に逆らう。己の力を過信する。…独善が過ぎるのだ、わかるかね?
ドメルはあの懲罰房に腹を立てていたがあれは間違いだ。軍に懲罰機関は無くてはならない」
「……総統閣下……」
「安心したまえ。もうあのような小汚い牢屋に君を放り込みはしないよ。君はこの私の直接の部下なのだからね。
ただ、」

そこでデスラーは言葉を止め、フラーケンをまばたきもせず見つめる。

「例の特務艦を任せる以上、私への恭順は常に態度でもって示してもらう」

それまでは呆気にとられ何も反論できなかったフラーケンだったが、デスラーの横暴な物言いに我慢が
ならなくなってきた。

「……そんなことは、御免被りますよ」

確かに以前の上官であるゲールなどとは比べものにならないほどの大人物であることはわかるが、
だからといって惨めに腹を見せ尻尾を振る法は無い。

「俺は犬じゃ無い」

デスラーは一瞬、鼻白んだような顔をしたがすぐさま「面白い」と、口角を吊り上げて見せた。
「君のことをディッツやドメルにくれぐれも頼むと言われたのだがね。君は彼等の顔に泥を塗るのか」
「……」
「恩を仇で返すとはな、とんだ駄犬もあったものだ。君はあのまま牢屋に繋がれて廃人になったほうが
よかったのではないかな」

デスラーの目はどこまでも冷たくフラーケンを見据えている。
他人の生命など、微塵も思いやることのない目だ。

「……ディッツ提督とドメル将軍に対して恩義を忘れることはありません。彼等が総統閣下に忠誠を
尽くせと言うなら、従いますよ」
「ほう。ならば君はこの私の命令には従わない、と?」
「犬のように扱われるならば、死んだ方がましというものです」

デスラーは心持ち顎の先を上げフラーケンの言葉を聞き終えると、ふ、と小さく笑い口を開いた。
「この私にしてみればドメルもディッツも飼い犬だ」
彼は優雅な足取りで歩み、壁の向こうへ行ったかと思うと手に鞭を携えて戻ってきた。フラーケンはギョッとする。
「彼等を差し置いて君は人間気取りかね?」
デスラーは軽く鞭の両端を掴むと引き、しなりを確かめ薄く微笑む。使い慣れた仕草だ。
うっかりその様に目を奪われていると素早く鞭が振り上げられ、フラーケンの脇腹を打った。
呻く間も無く、矢継ぎ早に鞭が振り下ろされる。
「彼等よりも自分が優れているとでも思っているのか?」
びしり。
空中で優雅な曲線を描くデスラーの鞭は容赦無くフラーケンの身体を打ち据える。
「あの方たちだって人間だ、犬なんかじゃない」
フラーケンは怯まない。
苦痛に顔を歪めながら眼光鋭く見上げてくるフラーケンを、興味深そうに見やったデスラーだったがやがて
軽く指を鳴らし、衛兵を一人呼ぶと「拘束具の用意を」と命じた。
「……」
5分も経たぬ間にフラーケンの目の前には以前身につけたのと同じ拘束衣が用意され、衛兵と従卒がそれを
フラーケンへと装着してゆく。
鉄球こそ嵌められなかったものの、彼は再び身体の自由を奪われ、口元には枷を嵌められた。

「はは、君にはその姿が良く似合うよ、しばらくそうして黙っていたまえ。もうじきドメルが来る。
犬小屋から見ているがいい」
引き綱を引かれ、フラーケンは何も言い返すことのできないままデスラーの前を去っていった。

「なかなか面白い犬だ」


やがて衛兵がドメル将軍の来訪を告げると、デスラーは立ち上がり隣室へと向かった。



「やあ、元気そうだね、ドメル。相変わらず君の活躍は目覚ましい」
「有り難うございます、総統。ですが兵士の疲弊が激しく」
「ああ、それはディッツと相談したまえ。彼は有能な男だ」
「は…」
「ようやく私に会いに来たのだな、エルク」
名を呼ばれ、ドメル将軍は微かに眉根を寄せた。
「待っていたよ」
「……総統…」
「アベルト、と。ここでは昔と同じように呼びたまえ」
「それは、出来かねます」
「ふふ」
デスラーの手がドメルの頬をそろりと撫でる。
「…総統、また……セレステラ宣伝相が……」
「何、ここは君と私だけの秘密の部屋だ。彼女もここは知らん。衛兵もな」
指が顔の凹凸を丹念になぞってゆく。唇を指が這ったとき、ドメルは思わず息を止めた。
「会いたかったよ。エルク」
指の上からデスラーの唇が重ねられてゆく。
指は唇を離れ、少し強張ったドメルの顎を掴んで逃げることを許さなかった。

「さあ、抱きしめて……」
幾度も唇を重ねながらデスラーは囁く。その声は次第にドメルの頑なで、清廉な心を毒してゆく。
「総統…」
何度も躊躇いながらドメルの手がデスラーの肩に触れ、密着する面積が増えてゆく。
「エルク」
デスラーは躊躇いを見せるドメルを詰ることはせず、両の手でドメルの頭を掴み一層深く唇を重ね、舌を差し入れた。
「…ん……」
ドメルが自分に弱いことをデスラーは心得ていた。
きれい事を並べたところで、この男は自分に惚れ抜いているのだ。
幼い頃からずっとこの男は自分に魅せられ、その劫罪から逃れようと私から離れ、結婚までした。
それでもどうだ。
エルク・ドメル、貴様は私から離れられない。
耐えれば耐えるほど、お前の中の欲望は膨れあがるばかり。


 ドメルの手がデスラーの身体を這う。遠慮がちだった手が次第に熱を帯びる。
「エルク……私の名を、呼んで」
「……」
「ねえ…」
「……アベルト、……さま…」
逞しい両腕がデスラーの腰を引き寄せ、己の身体に押しつける。
大きな手がマントの留め金を外し、邪魔な布をデスラーから取り払った。
「アベルトさま」
太く低い声にも、力強い瞳にも戸惑いと抗えぬ欲望を滲ませ、それでもまっすぐに自分を見つめるドメルを
デスラーは満足そうに見つめ返す。
「私がこんなに待っているのに。君は全く、酷い男だ」


 ドメルの喉がごくりと鳴った。


 デスラーの微笑みにいつも魅了されていた。
幼い頃から群を抜いて美しかった貴方の眼差しが自分に向いていると気付いたとき、そして貴方が私に
微笑みかけたとき。


「アベルトさま」
震える手でデスラーの軍服を開いてゆきながらドメルはその場に跪き、あらわれた素肌に顔を押し当てた。
欲望が理性を凌駕する。

どれほどに反発を覚えようと、この方には逆らえない。

「ああ……アベルトさま…」
唇を身体の中心線に滑らせながら固い腹筋を舐め、その下の金色の叢に鼻を埋める。
「エルク、…エルク、早く愛してくれ、…」
ドメルはデスラーのズボンを下ろしながら焦らすように愛撫を待ちわびて首をもたげている性器には触れず、
その周囲の柔らかな皮膚を強く吸い、また甘噛みしデスラーをのけぞらせた。
「エルク」
肉欲にうわずった声がドメルの耳を舐り脳へと沁みてゆく。頭髪を掻き乱す手がデスラーの興奮をドメルに
伝える。
「ベッドへ……」
「いや、今日はここで……。わかるだろう、移動する時間すら惜しい」
「こんなにして、…いけない人だ」
「君が……君が、悪い」

デスラーはドメルの腕を引き、近くのソファへと誘った。
互いの衣服を剥ぎ取りながらソファへ倒れ込み舌を絡ませ合う。

半年ぶりの逢瀬に二人は激しく互いを求め合った。
絡み合う姿は、壁に填め込まれた大鏡に映っている。

デスラーは時折そちらを冷ややかに見つめ、そして薄い唇を小さく吊り上げた。

「アベルトさま、どこを見ているのです」

熱い吐息がデスラーの首筋を撫でる。やわく歯を立てられデスラーの背がしなやかに反った。
「エルク」
「私を見るのです、……閣下」


「ああ、エルク。わたしのエルク」

先程フラーケンを見下ろした冷ややかな瞳は今、熱に潤み、氷の言葉を吐いた唇は情欲に濡れドメルを求めて蠢く。


「私は君しか見ていないよ」








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