その手も、その心も


ツイッターやピクシブのおかげでいろいろな方と交流させていただいております。今回は、
飛沫ラオさま(http://www.pixiv.net/member.php?id=1608073)が格好いいゲトバガの1シーンを描いておられたのを見て、
図々しくもSS付けさせてください、とお願いしてこのSSを書きました。ラオさまの格好いいゲトバガ画像は こちらです。
(R18画像の為、ピクシブメンバー登録してないと閲覧できません)
ソフトではありますが、拘束シーンがあります。でも甘いですw  (2013.09.16)
              

 怒らせてみたい、と思ったわけじゃない。



「何するんだよ!」
口論の末にいきなり拳をたたき込まれ、情けなく倒れたバーガーは拳の主を見上げた。
驚いた。
この、いつでも冷静沈着で感情の起伏を見せることの無い、時に<機械>と揶揄されるゲットーが険しい表情で
こちらを見据え、唇を震わせている。
「貴様、……」
怒りが頂点を越えてしまったのか、ゲットーは言葉を詰まらせた。
「何だよ、言いたいことがあンだろ、言えよ!はん、どうしたよ撃墜王!」
「黙れ」
「俺ぁ命令されるのはゴメンだね、あんたは俺の上官じゃねぇ」
しばし睨み合うものの、こちらを睨み据えたまま何も言おうとしないゲットーに痺れを切らしたバーガーは顎を
あげると、ふん、と鼻で笑う仕草をし「俺、もう帰るぜ」と踵を返した。
「ふざけるな」
ゲットーの声が追いかけてくる。
「ふざけてなんかいない。馬鹿馬鹿しいだけだ」
バーガーは背を向けたまま嘲笑うように手をひらひらさせ、部屋を立ち去ってゆく。
自分の要望を単なる我が儘な口答えと断定してきたゲットーを笑って許してやる気にはどうしてもなれない。
格下扱いには我慢出来ない。
しかも先ほどは殴られた。冗談じゃ無い。

「待て」
つかつかと響く足音と共にゲットーの低い声が小さく聞こえたかと思うや否や、手首を思い切り捕まれた。
「ァんだよ」
同様に声を低くし切り返し、手を振り解こうとしたがゲットーはそれよりも早くバーガーを思い切り壁に
突き飛ばし、上半身を押さえつける。
「離せよ!」
「……駄目だ」
「はぁ?馬鹿野郎、離……」
両手でゲットーの肩を押しやり、離れようともがくがびくともしない。
細身に見えてその実、異様なまでに筋力がある。不本意ながらさすがはトップエース、と内心毒づいていると
唇を塞がれた。
舌が入ってくる。
噛み切られる、なんて心配をしないのだろうか。
噛んでやろうか。
食いちぎってやったら奴は狼狽えるのだろうか?口から血の泡を吹きながら、俺が悪かった、許してくれ、
なんて土下座して不自由な口で情けなく謝罪するのだろうか?

底意地の悪い想像に反して、バーガーもまたゲットーの舌に応え己を絡ませる。

───いや、この男は絶対に他人に頭を下げやしない。
それ以前にこの男には恐れるものは何一つありやしねえ。
常に薄い壁一枚を挟んで死と隣り合わせに空を飛ぶこの戦闘機パイロットは以前俺にこう言った。
俺には失うものも恐れるものも何もないのだ、と──



 舌が絡み合い、唾液の混じり合う瞬間は堪らなく好きだ。なんというセックスの前哨戦。
普段は澄ました顔しやがって、ベッドの中ではとんだ撃墜王のくせによ。
ああ、たまんないな、ライルとのキス。男とキスするなんて気持ち悪ぃと思ってたけど、やってみるもんだ。
このおすまし野郎がハァハァと息を荒げて、ガッチガチに勃起したアレを押しつけてきて。こんなだから
俺も直ぐに反応しちまう。
まるで獣だ。

高圧的に押しつけていた手が力を失い、逆に身体に絡みついてくる。唇を介して注がれる吐息は甘い。
二人は先ほどの口論が嘘だったかのように両手で肌を探し蠢かせながら口づけに没頭した。

「ライル」
唇から唾液の糸を引き舌なめずりしながら、バーガーは囁く。
「ヤりたくなった?」
表情が強張ったままなのは仕方無い。それでもあれだけ喧嘩をし、俺は一発殴られた上でのこの展開だ、
大目にみろよな。
「……どうだっていい」
「へっ、素直に言えよ」
股間を押しつけた。そこは何より正直に欲望を訴える。硬く腫れた肉欲の塊が布地を介して触れ合い、
ゲットーの頬に朱が走った。
「…解っているんだろう」
「俺、ライルのここは大好きなんだ。持ち主と違って素直で可愛いからな」

 不敵に輝く青く大きな瞳、ふてぶてしくにやりと歪む唇と、それにつられた曲線を描く傷跡をゲットーは凝視した。
一体こいつの何が好くて俺は興奮しているのだろう、と疑問符がとめどなく溢れ出る。
そう考えてしまうと実に己が腹立たしくなってくる。
全てが整然と、順序正しく居並ぶ世界が好きだ。整えられた世界は美しい。
剪定された庭木、食器棚の中の整頓されたカトラリー、櫛目の通った髪、滑らかな曲線を描く、凹の無い爪。

それを全てめちゃくちゃに乱していくようなこの嵐のような男。
そしてこんなバーガーを欲してしまう理由を未だに巧く説明出来ない自分。

目の前では薄ら笑いを浮かべた男が自分の上着を剥ぎ取りにかかっている。
「…自分で脱ぐ。止めろ」
バーガーは服を脱ぐとそのまま散らかしてしまう。大切な軍服に皺をつけて平気な男に、自分の服を任せたくは無い。
「へいへい」
生意気な言いぐさを聞き流しつつ上着を脱ぎ、シャツに手をかけたゲットーはふとその手を止めた。
ばさばさと服を脱いでいる暢気なバーガーをしばし見つめる。

「ん?どうしたよ、ライル。どう?俺、セクシー?」
にっ、と歯を剥いて笑い妙なポーズを付けて見せてくるバーガーに、
「そうだな。……来い」
と、ゲットーはにこりともせず低く呟き、ふざけている手を取り寝室に誘った。






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