たまにはこんなスリル


twitterで仲良くさせていただいてる、たねこさんが描いてくださったパイスーいちゃいちゃゲトバガに寄せて。
いちゃいちゃゲトバガ画像はこちらです^^ (2013.09.28)
              

 黒塗りのツヴァルケからすっと下り立つ黒いスーツ姿のパイロットを見つけ、バーガーは「おっ」と声を上げた。
「何ですか、……ああ、ゲットー少佐のご帰還か。今日も黒い悪魔の一人勝ちでしたね」
バーガーにつられ、発着庫管理モニターを覗き見た副長のフィッケルが囃す。
「ほんと、あいつの動体視力といい反射神経といい、人間業じゃねぇよな。さすがの俺様も奴を
敵に回したくはないぜ」
「さすが、って?ゲットー少佐と隊長では黒鷲とツバメくらい違うでしょ」
「おい、ツバメだって馬鹿にすんなよ」
「はいはい」
「ようし、たまには出迎えてやるかなァ、我等が撃墜王殿をな!」
「その『撃墜王どの』は止せ、って言われてるくせに、また言う気ですか」
「何が気にくわねぇのかなあ、戦闘機乗りなら言われたいだろ?撃墜王って」
「隊長の言い方が気に喰わないんでしょう」
「じゃあ今度お前言ってみろよ」
「嫌ですよ、ゲットー少佐に睨まれたく無いです。それに、きっと隊長の差し金だって直ぐばれます」

 航空隊の隊長を務める士官は皆それぞれ専用機と専用のパイロットスーツを支給されている。なかでも
第6空間機甲師団第4航空戦隊長ライル・ゲットー少佐は黒を基調とした戦闘機とスーツを愛用しており、
さらにはガミラス一のエースパイロットであることから「黒い悪魔」と尊敬と畏怖の念を込めて呼ばれていた。
第4航空隊の隊員たちが次々に帰投してくる。どうやら今日は一機も墜とされること無く皆無事に帰還したらしい。
ヘルメットを小脇に抱え、ツヴァルケから下り立つ部下を見渡すゲットーの表情は明るかった。

「よお、撃墜王。おつかれさん」

隊員たちが解散した後、独り格納庫にとどまったままのゲットーの前に、バーガーが顔を覗かせた。
よっ、と肘から上げた手に軽く手を当てる。
「ああ。今日はさほど派手な戦闘にはならなかった。新人の練習台には丁度良かったな」
「練習台って言いつつスコア伸ばしてるのはあんただけじゃないかよ」
笑いながらそう言うとバーガーは目の前のゲットーの全身を無遠慮に見回した。

 体型にぴったりとフィットしたスーツ姿は全裸よりもむしろなまめかしい。女性兵士のスーツ姿に目を奪われる
者も多いが、特にゲットーのような細身で均整のとれた肉体にはスーツは良く似合う上に、どこか性的だ。
漆黒のスーツは色素の薄いゲットーの肌を引き立てる。白い肌に少しくすんだ金色の髪、金色の瞳。
「何をジロジロ見てるんだ。じゃあな、俺は着替えてくる」
少し怪訝な顔をしたものの、ぼうっと立ちすくんでいるバーガーを置いてゲットーはロッカーに向かったが、
暫くすると後ろからバーガーが付いてきていることに気付いた。
「何だ?」
「え、…あー」
すらりとした背中のラインが美しいと思った。小さく締まった尻、細く伸びた四肢。
「なあ、ライル」
手首を掴んだ。
「何なんだ?」
「手伝ってやるよ」
「ええっ?」
もう片方の手で、背後からゲットーの細い腰をたぐり寄せる。
「あんたのスーツ、脱がせたい」
何を馬鹿なことを言っているのだ、と言おうとして振り向いた先のバーガーの青い瞳が本気なのを見てとると
ゲットーは真顔になり「離せ、止めろ」ときつい口調で言ったが、バーガーは手放す気配を見せない。
「いいじゃん、どうせ脱ぐんだろ」
バーガーの無遠慮な手が喉元に伸びる。
「止せったら!」
と制したもののバーガーには何の効力も示さず、スーツの構造を良く心得ているその手は容易く胸の中央の留め具を
外し、ファスナーを下ろしてゆく。開いた隙間に容赦なく手を突っ込んできたバーガーに、「いい加減にしないか!」と
さすがのゲットーも声を荒げた。
「着替えを手伝ってるだけだぜ、ライル。怒るなよ」
「俺は迷惑だ、と言ってるんだ」
「どうして。俺たち、深い仲だろ」
にやりと笑うバーガーの、童顔な割に低く太い声がゲットーの下腹に響く。
「……あんたのせいで、さ」

唇がうなじに触れ、吐息が耳を撫でた。
「……こんな所で……」
頬が上気するのを感じ、ばつが悪くなったゲットーはバーガーの唇から逃れようともがいた。
「ライル、つれねぇなあ。ったくよぉ」
意地の悪い含み笑いが余計にゲットーを煽る。

 二人はもつれ合いながら、それでもバーガーが巧みに誘導したのか人目に付かぬ壁際にまで追い込むと、
相変わらず「止せ」と言うばかりのゲットーの前を随分とはだけてしまった。機密性の高いスーツの下は素肌だ。
なだらかな起伏に掌を這わせ、小さな突起を捕まえる。ふ、と短く息を呑むゲットーの頬に軽く口づけ、
バーガーはわざと鼻を鳴らした。
耳元で鼻を鳴らされ、ゲットーは不快そうにバーガーへと向き、「いい加減、離れろ」と言い、肘でまとわりつく
男の身体を押しのけようと邪険にするが、バーガーは一層唇の端をつり上げた。
「……なあ、ライル」
「……」
「あんた、くせぇよ」

 言葉を発せずとも全身の戦慄きで、バーガーは己の言葉一つでゲットーを動揺させたことを知り有頂天になった。
ゲットーはバーガーと違い几帳面で、ことに身だしなみについては煩い男だ。どんなに多忙な朝だって、彼の頭髪に
寝癖が付いていることはないし、身支度の仕上げには常に愛用のコロンを一振りすることを忘れたことがない。
そして通常はグローブを装備している両手の爪もいつも丁寧に磨いている。

バーガーがゲットーから「くさい」だの「汚い」だのと言われることがあっても、その逆はあり得なかった。

「汗くせぇなぁ、ライル」
そう言いながらバーガーはますますゲットーの首筋に顔を埋め、素肌に口づける。
本当は汗くさいとは思っていない。元々ゲットーからはほとんど体臭を感じないので、彼の付けているコロンが
彼のにおいだと錯覚するほどで、今にしたって戦場から帰投したばかりで汗ばんでいるとはいえ、臭い、
と言うほどの匂いなどしていない。
ただ、いつも余裕を見せつけ自分を好きなように弄ぶ几帳面な恋人を狼狽えさせたかった。

「ならば止めろ。離れろ…っ……くそっ…」
「嫌だ」

嫌がっているのを知りつつ、股までファスナーを下ろし強引に手を突っ込んだ。
直ぐに勃起した性器に触れる。

「嫌なのに、勃ってる」
ゲットーの耳の穴にべろりと舌を挿し込んだ。
「うっ、う」
「嫌なんだろ?」
「あ………」
「なのに、ビンビンじゃねぇか」
身体にぴったりとフィットするスーツの中で、下着からはみ出し窮屈そうにおさまっていた性器をぐい、と外界に
つかみ出す。
「見ろよ、ライル、あんたの肉棒」
ねっとりとした声で耳元に囁き、ぎゅ、と握るとわざとらしくゆっくりとペニスを扱いた。
「ここも臭えのかなア?」
ゲットーは耐えかねたように顔を背け唇を噛んだ。普段とは真逆の状況に、バーガーはほくそ笑み背けた頬に
軽く口づける。

これほどまでにこの男を愛おしいと感じたことはなかった。
ライルは女じゃない。しかも本気で殴り合えばもしかしたら自分が負けてしまうかもしれない。この状況が
本当に嫌なのならば、自分の腕から逃れることは容易なはず。
なのにこいつは俺を振り解こうとはしない。
何故?

何故だ、ライル?

「なあ、ライル……ライル……あんたの匂いがするよ……」
扱く手を止めず、バーガーはゲットーの首筋を舐め、肩口に歯を立てた。白い肌が汗ばむのは、俺に愛撫されて
興奮しているからだと思うと一層抱きしめる腕に力が入る。
淡い汗の匂い、男の肌の匂い。遙か遠くに感じる、いつものコロンの香り。押し殺す甘い吐息。
何もかも、誰にも渡したくない。

露出した肌に口づけながらバーガーはその匂いに酔いしれた。

 足が震える。自分の力で身体を支えることが出来ず、壁にもたれかかる。
こんな、誰が来るとも知れぬ場所で。

 切なげに浅い呼吸を繰り返しているゲットーの足下に、バーガーは跪いていた。
「だってさ、こんなんじゃ、もうスーツには収まらねぇだろ?」
逞しくした性器を握り、先端に舌を押しつけバーガーは嗤う。
「俺が始末してやるよ」
「……臭いんだろう、…っ……止めろよ」
ゲットーの言葉を聞き、バーガーはふと真顔になった。
「誰もお前なんかに頼んでいないのに……、…クソッ、…」
悔しげに言い捨てる割に、やはりゲットーはバーガーを離そうとはしない。
「ああ、臭え臭え」
バーガーが笑いながらゲットーを見上げる。
そして視線を外さぬまま、かたく張り詰めたゲットーの自身を扱きながら、
「舐めて欲しい?」
と聞いてきた。
「何を企んで…っ、…お前……」
「失敬だな、企んでなんかいるもんか」

見上げるバーガーの青い瞳が楽しげに光る。
「判れよ。俺は今、臭いあんたが欲しくてたまんないんだ。……って実際ちっとも臭く無ぇんだけどさ」
視線の先で、頬を赤らめ眉間に皺を寄せたゲットーが、表情を変えないもののどこか安堵しているように見えた。
「あんたは男のくせに気にし過ぎだぜ」
よく喋る舌先が肉棒をからかうようにつつく。

「……ならば他人を不快にするようなことを言うな」
「へいへい。で、どうなの?舐められるの、嫌?シャワールームは遠いぞ?」

挑戦的な青い瞳。
「それとも、もう俺のこと、嫌いになった?」
「いや」

生意気な唇。
「だっていつもあんた、俺のこと怒るじゃんよ」
「それは、お前が悪いからだ」

好色な舌。
「俺さ、こう見えてもあんたには一目置いてんだぜ?」
「嘘を言え」

 待ちかねるように下腹に口づけ、淡い茂みに鼻を埋め催促を繰り返すバーガー。
「まあどうでもいいけど早く言ってよ。俺にして欲しい、ってさ」
疼きを隠しきれぬ甘く掠れた声が己の胸をかき乱す。

 ああ、フォムト。今日は俺の負けだ。焦らす余裕なんか無い。

「…咥えろ」
「咥えるだけ?」
「舐めろ」
「こう?」
淫らな水音が響く。
「……ふ…っ……。フォムト、貴様……後で、…覚えておけよ……っ…」
「期待しているぜ、ライル」

温かな口腔に迎えられ包まれると、ゲットーは大きく背を反らせ「ああ」と目を閉じ、天を仰いだ。







────────終────────