ガミラス帝国軍のお昼ご飯は、いつもカレーライスと決まっています。
ある日、ライル君とフォムト君は一緒にカレーライスを食べていました。
「あれ?どうしてにんじんを残しているんだ、フォムト」
フォムト君のお皿には、にんじんだけが残っています。
「俺はにんじんは嫌いなの」
別ににんじんなんか食べなくたって平気だろ、とフォムト君は悪びれもせず言いました。
「ふうん」
ライル君は意味ありげに口の端を歪めましたが、フォムト君は気付きません。
「よし、午後の出撃だ!」
カレーライスを食べ終わると、二人は再び元気に出撃して行きました。
その夜のことです。
すやすや眠っていたフォムト君はいきなり複数の男達に捕らえられ、後手に縛られてしまいました。
「誰だ!俺に一体何の用だ!」
「我々は『にんじん嫌い撲滅委員会』なのだよ、バーガー少佐」
「その声は、ライル!」
暗闇のなか、ライル君の顔が浮かび上がります。
「にんじん嫌いは矯正対象だ」
その手には、長い、ピンク色の耳のついたヘアバンドが握られていました。
「なっ、何を…!」
動けないフォムト君の頭にその、奇妙なヘアバンドがつけられました。つけるとまるでうさぎのようです。
「よく似合うよ、フォムト。これでにんじんが嫌いなんて、言えないよな」
「嫌いだ!にんじんなんか嫌いだ!こんなもの!」
フォムト君は頭を振り回しますが、うさぎの耳は外れません。
「反省するどころか、反抗するとは呆れた奴だ」
自分を押さえ付けている大柄な男の声にも聞き覚えがあります。
「ちくしょう、みんななんでにんじんなんか好きなんだよ!俺は嫌いだからな!」
口元ににんじんをつきつけられても、フォムト君は唇をきゅっと閉じ、顔をそらします。
「ふん、強情な奴だ。泣きを見るぞ」
「だまれ、お前達こそこんなこと……あっ」
フォムト君は後ろから小突かれ、前のめりに倒れました。大男が上からのしかかり、動きを封じます。
「や、止めろー!」
「いかんな、好き嫌いは。お前も立派なガミラス軍人だろう」
「ク、クライツェさん」
温厚なクライツェさんまでライル君の仲間とは、と半ば絶望的な気分になりながらフォムト君は
身動き出来ないまま、身体を丸めさせられ、両手を膝の裏で縛られてしまいました。
「ゲットーにしっかりにんじん嫌いを治してもらうんだぞ」
クライツェさんはそこまでやると、じゃあなと言って出ていってしまいました。
「ああっ、待って!待って!クライツェさん、置いてかないで!」
フォムト君は、ライル君と二人きりになってしまったのがむしろ恐ろしく感じました。
クライツェさんなら、もしものときは助け船を出してくれそうだったのです。
「さあ、尻に尻尾もつけてやらないとウサギになれないな」
ライル君は楽しそうに笑ってフォムト君のズボンを引き下ろします。
「止めろよ!」
テープか何か着けているのでしょうか、ライル君はふわふわしたうさぎの尻尾を取り出すと、
フォムト君のつるつるのお尻にぺたん、と尻尾を貼り着けました。