宣戦布告


普段は温厚で、真面目なのにバーガー少佐のこととなるとたがが外れちゃうフィッケルさん
……というキャラに勝手にしちゃってごめんなさい……しかしゲットー少佐もたいがいおかしい。
そんなドSキャラ二人に好かれてひたすらバーガー少佐が可哀想なお話になっちゃった気がします……
たまに、「何故この話を作ろうと思ったのか」を全然覚えていないことがあるんですが、これもそうです。(2015.08.13)

              

 妙だな、とは思っていたのだ。
気密服に着替える際、普段は人前で素っ裸になろうとちっとも気にしないはずのバーガー隊長が、
何故かコソコソ隠れるように着替え、「おい、こっち見んな!」と手負いの獣よろしく吠えるものだから
「別に見られて減るようなものなんて無いでしょう。女性なんかいませんよ、ここには」
と、呆れつつ返答したのだがよもやこんな事になっていようとは。


そのときはとても気にしていたくせに、作業を終えて戻り再び着替える時にはすっかり忘れていたらしい。
仕方無いかもしれない、船外作業中に敵襲を受け、あわやのところで死にかけたのだから。
とは言っても。

「……何なんです、その格好」

「ど、どうだっていいだろ!下着くらい……俺のプライベートなんだからよ、……」

初めこそ怒鳴ったものの、語尾は消え入るような心許なさだ。
それもそうだろう、こんな格好ならば。

フィッケルはまじまじと己の上官の姿を凝視した。
ほどよい肉付きの均整のとれた身体にこれといった特徴は無いが、いかにも軍人らしいその身体が
ベッドの中ではどう蠢くかを想像すると辛い。
「……だから、見るなよ、……」
泣き出しそうな情けない口調でバーガーは呟くと、もじもじと己の前を隠した。
その腰回りで薄いピンク色の布がひらひらと舞っている。
片鱗を見てもあきらかにそれは女性の着けるような下着だった。

「いいじゃないですか、たかが下着でしょう?恥ずかしがる方が不自然ですよ」
「……だけど、よぉ……」
気まずげに俯くバーガーの上気した頬を無遠慮に見つめながら、フィッケルは足音も立てず近寄って行く。
「見せてください、バーガー隊長」
垂れ気味の両眼が特徴的なフィッケルはその外見からの印象そのままに穏やかに、そしていつも通りの
調子で語りかけ、バーガーを油断させる。
「ちぇっ、……しつこいぜ、お前」
だからといって積極的にその下着を見せてくるわけではないが、バーガーは先刻までの警戒心を解き、
フィッケルに対し照れくさそうな笑顔を向けた。


「……そんなものを隊長にはかせたのは、……あの人ですか」
口調はあくまでも普段と変わらない。
「ん?あの人、って?……あぁ、……しょうがねぇだろ、ちょっとした罰でさ、…」

部下だと思ってバーガーは油断していた。気付いたときには間合いを詰められ、あっという間に壁に
押しつけられ、そして腕を取られた。
「フィッケル!」
「大声を出しますか?いいですよ、誰が来るかもしれませんね。……こんな姿を見られてもいいならどうぞ」
「……」
かろうじて局所を覆い隠してあるだけで他の部分はほぼ、紐に近い細さの、素肌が透けて見えるほど薄い
生地でもって下着の体を為している。その脇に金魚の尾ひれのようなひらひらがついており、妙齢の
女性が身に付けているならば美しくも見えようが今、これを穿いているのは己の上官だ。
「私は、構いませんがね」
「フィッケル……」
フィッケルの銀色の長い前髪がバーガーの鼻先に触れる。

「そんな巫山戯た格好をして」
暗い囁き声がバーガーの首筋をぞわりと撫でた。
「……何言いやが、……」
「いかがなんです、こんな格好で皆に指示を出すご気分は?」
「それとこれとは別だ」
強がるバーガーの耳元で、くん、と小さく鼻を鳴らし「男のくせに」と嘲笑を忍ばせる。
シャワールームの脱衣所で、二人は下着一枚の姿のままだ。素肌が触れあう。フィッケルの手が
優しくバーガーの頬を撫で、そして唇を指先で辿る。
「このままで、『たいらげろ!』って言ってください。ほら、いつもみたいに」
「……」
「隊長を平らげてさしあげますから」
「ふざけんな……っ」

いきなりむきだしの乳首をつままれ、バーガーの悪態は途絶えた。
「ああっ……」
「大好きでしょう?」
「な、にが、……」
「エッチなことをするのが、ですよ。だから任務中だってこんな下着を身につけて平気なんだ」
フィッケルは口づけをしようとバーガーに顔を寄せるが、彼は顔をぐい、と逸らし拒む。
「駄目ですよ、好きもののくせに嫌がっちゃ。そうだ、私が大声を出してもいいんですよねえ。
ハイデルンの親爺さんを呼びますか?」
「や、止めろ」
「それとも、……ゲットー少佐?」
その名を口にした途端、バーガーの頬が紅潮するのをフィッケルは悔しげに見、
「…嫌なら大人しくなさいよ」
と吐き捨てるように言った。
「勃たせてるくせに」

そっと、股間に手を重ねた。そこは既に熱く昂ぶっている。
「隊長、……こんな下着をつけて、部下に見つかって、それなのに興奮しちゃって……情けないですね」
じわりと握り、小さく揺らす。
「うっ……」
フィッケルはもうバーガーが逆らわないであろうと察するとその場に膝をついた。目の前には
バーガーの股間がある。
「濡れてますよ」
下着の上からきゅ、とペニスの形を握ると、その先端部分が濡れた染みになっている。
フィッケルはわざとその先を指の腹でぐりぐりと擦り、バーガーがびくびくと体を痙攣させる様を笑った。
「こんな薄い布だから直ぐに濡れたのがバレちゃいますねえ、隊長?」
下着の染みは次第に広がってゆく。
「それに……あれ?」
フィッケルは断りも無しにバーガーの下着を押し下げた。
「あーあ」
逞しく勃起したペニスが顔を出し、そしてその根元には本来有るべき茂みが無い。
「剃られちゃったんですか」
あけすけに言われたバーガーは赤面し、顔を逸らしたまま目を閉じているのだがそれに反してペニスは
相変わらず隆々と上を向いている。
「やれやれ、こんな淫乱な隊長に従わなければならないなんてね」
剃毛されてすべすべになっている下腹部に口づけ、フィッケルはそのまま舌を出しべろりと舐めた。
「あぁ、うっ!」
バーガーが身を捩って悶える様を上目遣いに見やりながら、フィッケルはわざと物欲しそうなペニスには
何もくれてやらず、すっかり無力になったバーガーを後ろ向きにさせ女物の下着が全く似合わない
締まった尻をぐい、と掴み、広げた。
「あ、あ……」
「隊長は女の子なんだからこっちの方がお好きでしょう」
そう言って、己の唾液を指にまぶしつけ、まだきゅっと口を閉ざしている肛門をもみほぐしてゆく。
「ひ、、、あ、、、」
普段とはうってかわって弱々しく間の抜けた声をあげ、バーガーは尻を揺らした。
「欲張りですね、隊長。もう咥え込んで」
さして濡らしていないにも関わらず、指は容易くバーガーの体内に侵入してゆく。
「止せ、っ、…く……う……」
「いつもあなたはそう言うけど」
ふと、フィッケルは寂しそうに呟いた。
「でも、私を受け入れてくれる」
右手で腸壁をいたぶり、左手で剃り跡の感触の生々しい箇所を撫でる。
「んっ……」
「ここ、ですね」
指先の刺激にバーガーの体が跳ねた。両脚がもどかしげにくねくねと蠢く。
「女の子だから、穴が感じるんだ」
「違……っ……おれ、は、……おと……」
「嘘でしょう、こんな下着をつけてるんだから」
フィッケルはバーガーの尻たぶを平手で打つ。
「あぁ!」
上官をどのように攻めれば良いかはわかっている。最近はとみに後ろの感覚が鋭敏になってきた。
自分ではなく、恋人に日々開発されているのだろうと思うとやるせなくなる。

「あなたは可愛い女の子だ」
うっすらと赤く色づいた尻へ執拗にキスを繰り返し、甘い言葉を囁き続けると彼は観念するのか、
それとも箍を外してしまうのか、とたんに従順になる。
「お、……お願い、……さわってく、…れ……」
「何処をです?」
腸壁を介して前立腺を攻めることをフィッケルは止めない。肛門は指を受け入れることにすっかり
馴染んで、締め付けることをしなくなっている。
「おれ、の……」
「はい?」
「ぺ…ニ……」
いつもよく通る低い声が、消え入りそうなか細さで欲望を告げる。フィッケルが見上げる上官の頬は
真っ赤に染まって痛々しい程だがそれもまた彼を欲情させるだけだった。
「止めてください、隊長ったら」
わざとフィッケルは朗らかに告げた。
「女の子には、おちんちんなんて無いんですよ」
小さな声で、しかしはっきりと言い、フィッケルはちらりとバーガーを見上げる。女性扱いされて悔しそうに
唇を噛み、それでも欲望には抗えない情けない上官の表情にフィッケルは心を躍らせた。
「あなたはいやらしい女の子だ」
ずりおろされた下着の上に、怒張したペニスがふるふると震えている。その先端から露を零して
いるのをまじまじと見つめ、
「無いものには、触れませんから」
と素っ気なく言い、下ろしていた下着を引き上げ、ペニスにもすっかりかぶせて隠してしまう。
正気のバーガーなら部下のこんな横暴を赦しはしないだろうが彼は今あまりにも無力だった。
「あっ……あっ……」
と、ただ部下の手淫に喘ぎ身体をくねらせる。
捩れる背筋や脇の筋肉が美しい。ドメル司令のようにこれ見よがしでもなく、ゲットー少佐ほど
細く薄い、刃のような体でも無いが、バーガーの体も十二分な鍛錬の成果のある立派な肉体だ。
思わずフィッケルは薄く汗の浮いたその背に唇を寄せ口づけた後、汗をすくい取るようにべろりと舐めた。
「うっ」
筋肉の流れにそって舌を滑らせる。指を咥え込んでいる肛門はひくひくと収縮と弛緩を繰り返す。

「フィ……っ」
陰嚢を揉むくせにペニスには一切触れようとしないフィッケルを恨めしく思いつつも、体内に与えられる
刺激がバーガーを狂わせてゆく。

「あ……」

バーガーの全身が激しく痙攣した。
「達したのですね」
「……」
「答えなくったってわかりますよ。ほら、ここ」
腸内に置いた指をくい、と曲げ刺激すると「うああっ!」と全身が跳ねる。
「こうして中でイっちゃうと……大変ですよね、隊長」
もう一方の手で乳首を摘まみ、くりくりと擦るだけでバーガーは掠れた悲鳴を上げ悶えた。
ペニスは下着の中で勃起したまま愛撫を待っている。
バーガーの両脚は震え、自立していられなくなりぐずぐずと腰を落としていく。フィッケルは指を抜かず
腸壁越しに前立腺を刺激し続けた。
「あンッ、あぁん、ああぁ」
床に膝を付き、上半身もべったりとおとして尻を上げ喘ぎ続ける。そんな上官の背にのしかかり、
尚もバーガーの乳首をこね、全身が弛緩すれば叱咤するようにその小さな突起をぎゅっと抓った。
そうすると緩く開きすっかり性器と変貌してしまった肛門がきゅっと締まり、挿入している指を心地良く
締め付けるのが嬉しくて、フィッケルは度々バーガーの乳首を抓ったり、肩に噛み付くのだった。

「フィ、ッケ、……なぁ、……」

たまらなくなりフィッケルは指を抜き、空いた箇所に舌を這わせた。そして、薄い、形ばかりの下着を
押し下げ、相変わらず勃起しているペニスを露出させるもそれを扱こうとはしなかったが、自らが零す
粘液に濡れた亀頭をくりくりと指の腹で撫で始めた。
「あああ!」
ぬめる粘膜と粘膜が淫靡な音を立て、敏感になった肌を部下の銀色の髪の毛がさらさらと撫でる
感触にバーガーは背を反らす。
「本当に女の子なんですね、隊長。可愛いな、もっと舐めてあげますよ」
言葉で虐めるたびにペニスは震え、その先からトロトロと透明な液体が糸を引きながら床に垂れる。

「や、あ……」
耐えかねたように揺れる尻を容赦無く打つ。
「あああ」
とてもドメル軍団の切り込み隊長とは思えぬ痴態にフィッケルは一層興奮し、また、こんな姿を
ゲットーの前に晒しているのかと思うと悔しくもなる。
ゲットーに対しては何でも彼の思うままに身を任せるのだろうに。

恋人の前であなたは。

どんな甘い声でねだるのだろう。
どんな痴態を見せつけるのだろう。
そして。

どんなに嬉しそうに微笑むのだろう。

「い、好い……」
「痛くないのですか?」
訊ねながらべたべたに濡れた亀頭の中心にぐい、と指を押し込もうとする。
「あぁっ」
「どうなんです」
「好いっ、い、好い、好い」



フィッケルはひたすら待っていた。
我を忘れたバーガーが、自分を求めてくれるのを。


「あ、あ、…あ、……いく……っ…!」
全身がひくひくと痙攣し、ペニスからダラダラと白い精液が零れていく。

こんなに恥ずかしい格好をして、幾度も気を遣っているのに、それなのに。

何故あなたは私を求めてはくれないのです。

精液に濡れた指を自分の口に運ぶ。僅かな苦みと塩気がフィッケルを悲しくさせる。

ふと、求められなくとも繋がってしまいたい、と思った。
別にバーガーはそれを拒みはしないだろう。
でも、そうしたところで一体自分は何を得られるのだろう?


「……ライル……」

しかし、自失寸前のバーガーが弱々しく呟いたその言葉にフィッケルは我を忘れた。
抵抗する力の無い下半身を掴み、いきりたった己のものを押し当てる。
慣れているのか、本来性行為を行う箇所ではないはずの器官は易々とフィッケルを呑み込んでゆく。
「くそ…っ…」
望まない挿入にバーガーは僅かに身体を緊張させるが部下から逃れることは不可能だ。
「ひ、あ…ああ………っ、あ、ああ、」

幾度も想像していた。彼と繋がることを欲していた。
なのに何故こんなに辛い?何故どんどん心が渇いてゆく?
憧れの男のなかはこんなに優しく、こんなに強靱に自分に絡みつき、締め付ける。
想像していたよりずっと。

気持ち好い。
息が出来なくなるくらい気持ち好い。


「……い、……く……っ…!」



それが許されない恋だと分かって居ても。


バーガーの体内から己を引き抜くと、そこから精液がダラリと零れ落ちてきた。
「…いけない、零しては」
ぐったりと床に俯せているバーガーをフィッケルは背後から抱き留め、再びペニスを挿入し、
「私の子を産んでください」
とバーガーの耳を噛みながら囁く。
「何、言ってやが……」
そっと腰を揺らすとぐちゅ、ぐちゅ、と生々しい音がしフィッケルを煽る。
「あ………」
バーガーの体内で再び勃起したペニスが二人を狂わせてゆく。
フィッケルはバーガーの下着で身体に散った体液を拭い、そしてこれまで愛撫をもらえないまま力無く
垂れているペニスを掴んだ。
「ひ、」



 握る手の中で、幾度目になるのだろう、精を零した感触が熱く伝わってくる。
「熱いですよ、隊長」
汗に濡れた頬に何度も口づけながら私はようやく彼の唇に己の唇を重ねた。
隊長は拒まなかった。
密着した唇と唇の間を互いの舌が行き交う。


恋人が穿かせた下着を、私の精液で、そして私に射精させられたあなたの精液で汚して。
そんな薄汚れた下着姿を恋人に見せたらいい。




なんて汚い宣戦布告。






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