恐怖の理由は


ハイニちゃん可愛い!ので、キャプテェンとのお初を妄想してみました。タイトルは恐ろしげですが、
ホラーではありません。ハイニちゃんもフラーケン艦長も、黙ってると怖いお顔ではありますけどね(*´∀`*)! 
直接の表現はありませんが、拙作「飼育」などの身勝手設定を含んでいます。 (2013.07.03)
              

 彼、ゴル・ハイニ大尉が恐れるもの、というものはこの世には無いに等しかった。
貧しい家に生まれ育ち、食うのに困ったから軍隊に入った。しかし厳しい規律と理不尽で傲慢な上官に耐えかね、
幾度も諍いを起こした為に決して無能ではないはずの彼の昇進には随分と長い期間を要したにも関わらず、結局は
貧乏くじを引かされ軍法会議にかけられもした。
それでも彼はそんな境遇を恨みこそすれ、毛の先ほども恐れることはなかったのだった。

そんなハイニを拾い上げたのが総統直轄特務艦UX-01艦長、ヴォルフ・フラーケン中佐だ。
『棺桶に乗ってみないか。貴様のようなはみ出し者はうってつけだ』
と、彼はいきなり初対面のハイニに言いつけたのだった。
さすがのハイニも面食らい、魚のように口をぱくぱくさせることしか出来ず、気づいた時には身柄をフラーケンの
預かりとされた。結果的にはハイニはフラーケンに命を救われたことになる。

総統の直轄艦の艦長だ、さぞいけすかないエリート様かと思いきや不思議なくらい自分に似通った
ものを持つ男で、風の噂にフラーケンもまた上官に逆らい処刑されかけた経験があると聞く。

ハイニはようやく理想郷を見つけた気分になっていた。フラーケンとは非常にウマが合う。試作段階では
「棺桶」の名にふさわしかった危険極まりない次元潜航艦UX-01も、日々の改良と癖はあるが優秀な
クルーの尽力により今ではガミラス帝国軍の切り札とまで恐れられる特務艦となり、それでいて
ハイニたちにとっては心地よい住処と化している。
更に言えばフラーケン以外の上官はもう、デスラー総統ただ一人。これほど誇らしいことは無い。




 しかし時折、フラーケンが何を考えているのかわからなくなる。
その鋭い「猟犬」と呼ばれるにふさわしい切れ長の瞳はいったいどこを見据えているのだろうと。

何か腹の底に冷たいものを宿しているように思えた。
いくらフラーケンと差し向かいで語り合おうが、戦闘中の危機を仲間達と乗り越えようが、彼の心の底に
潜むものを探り当てるにはほど遠い。
知れば知るほどに不可解なのだ。


 そして今。

 スーツを脱ぐよう命じられ、わけもわからないまま命令に従った。
はじめは、下着一枚で気楽に酒でも飲むつもりなのだろうと思ったのだ。
それなのにフラーケンは酒を持ってくるでもなく、下着姿で立たせたハイニのまわりをぐるりと一周し、
「お前は男を抱けるか」と聞いてき、ハイニを仰天させた。

「い、いや、俺は……すんません、経験は無いっス、……どうしたんスか、キャプテン」
「やり方くらいは、知っているな?」
「…は、あ……」
フラーケンは顎先を上げ、ハイニをジロリと見据えると目を細めた。
「ふん、まあいい」
「え……キャプテン?」
「黙れ」

 ああ、この目は獲物を狩る目だ、とハイニが茫洋とフラーケンを見つめていると、彼はすうっとにじり寄って来、
慌てて後ずさったハイニを壁際に追い詰めた。逃げ場は無い。
両脇をフラーケンの両腕に遮られる。
「お、俺、尻はあの、処女なんで…!」
ハイニは必死だった。上官の慰み者になる奴は顔の小ぎれいな奴か、逆に糞生意気な鼻つまみ野郎と
相場が決まっている。自分は三流以下のご面相だしフラーケンにとって自分が不愉快な存在であるとは
思えない。

 しかしそんな間の抜けたハイニの言葉を聞いたフラーケンは一瞬険しい表情を緩めたものの、ハイニを解放
してやる気は全くなさそうだ。
「ハイニ」
「へ、へえ」
見上げたフラーケンの顔は嗜虐に満ちたもので、ハイニは尻を押さえ震え上がる。
「馬鹿野郎。お前の尻に興味は無い」
「……」
「尻の処女は他にとっておけ」
「い、いや、あの、…あ……」

唐突にフラーケンの顔が近づき、「もう、黙っていろ」と、じっとりと湿ったフラーケンの呼び声が頬に
吸い付いきハイニは全身をこわばらせる。
「貴様の身体を寄越せ」
「……キャプテン……」

 ざわり、と揃えられた髭に鼻の下を撫でられ、ハイニは思わず目を閉じる。その次の瞬間には、己の唇が
温かく濡れた唇に塞がれていた。

口づけをしている。
しかも、キャプテンと。

 その事実を冷静に受け止めるものの、どうしてよいかわからずハイニは棒立ちのままフラーケンに
身をゆだねるしかない。
女の唇とは全く異なるその薄く固い唇の感触、そしてフラーケンの特徴とも言える髭の感触はどうあっても
ハイニを欲情させる代物ではなかった。
髭が無いにしろ、剃り跡がごりごりと自分の口周りを刺激するに違いないと思うとますます萎えてしまう。
唇が離れると、大きくため息をつき表現しかねる奇妙な感覚にぶるり、と身を震わせるハイニを、フラーケンは
微塵も表情を和ませる事無く、険しい視線で見つめた。


「……俺が怖いのか、ハイニ」
「……そんな、ことは……ねェっすけど……っ…」
「嫌なら、そう言っていい」
「……」

食われるのかもしれない。
そう感じた。フラーケンは決して狂人ではない。反骨精神が旺盛なのを除けば非常に優秀な軍人だ。
だが今の彼はどこか狂っている。

「まあお前が泣き叫ぼうが、俺の知ったことじゃないからな」

そう言い放つと、フラーケンはニィッと嗤った。




 そのまま腕をつかまれ、寝室に放り込まれベッドに投げ込まれたハイニは声にする言葉を思い浮かべること
すらできないまま、フラーケンがベッドの脇に片膝をつき軍服を荒々しく脱ぎ捨てる様に見入っていた。

「脱げ」
ぽかんと口を開けて動作を止めているハイニに苛立ちを隠すこと無くフラーケンは命じる。
「……何でいきなり、こんなことをするんスか、キャプテン」
ハイニは首を横に振った。自分の敬愛する唯一の上官、フラーケンがどれほど理不尽な命令を下したとしても
ハイニは決して逆らわないと心に誓っていたが、こればかりは馬鹿の一つ覚えのように「ザー・ベルク!」とは
返せない。

「俺だって溜まる、それだけだ」
困惑しつつも露わになってゆく上官の肌に目を奪われる。
「………あ……っ……キャプテン、それ……」

 全裸になったフラーケンを見たのは初めてで、ハイニはその細く引き締まった身体の要所要所に妙な
傷跡があるのを奇妙に感じた。
まるで、身体に絡みついた蔦のような痕跡は、自分の知らぬ世界がこの上官にはあることを思わせる。

 フラーケンはハイニの言葉が指すものを理解したがそれに答えなかった。
「お前は黙って俺を抱けばいいんだ、ハイニ」
「だってキャプテン、俺…無理っスよ、勃たねぇ」
尻を掘られるのもたまらないが、興奮しないのに抱けと言われても困る。抱くことが出来なかったら、自分の
せいでフラーケンが恥をかくことになる。
「あのう、メッツェとかキールに」
「ふざけるな」
低い声で恫喝すると、フラーケンはハイニに顔を寄せた。猟犬というよりも狼が獲物を品定めするかのような
顔の真ん中で、茶色い二つの瞳が異様な光を宿している。

「俺はお前に命じたんだ」


 もう、逆らっても無駄だとハイニは決めた。フラーケンに逆らい逃げることは容易かったが、尊敬するフラーケンに
対しそれは出来ない相談だった。
それに、妙に心が惹かれた。

 フラーケンの首、胸、両の太腿の縛られた痕のようなもの、何者にも縛られずただ従うはデスラー総統一人のみ、
そんな誇り高い猟犬、フラーケン中佐の身体の傷が一体何を意味するものなのか。


「ただ、俺に身を任せていればいい。……余計な詮索はするな」

 そう言うとフラーケンは寝室の明かりを消した。暗闇がハイニの視覚を奪う。
どうしようもなくハイニはただフラーケンのベッドに居心地悪げに腰掛けていたが、その手にすう、と他人の手が
触れハイニは驚き手を引っ込めた。しかし触れてきた手はハイニの手を捕らえ放さない。

 そうだった、これはキャプテンの手なのだ、とハイニはそれ以上の抵抗は止め肌を這う手のひらの自由にさせる。
暫くは触れてくる手を美女のものと妄想してもみたが、視覚を遮られれば他の感覚が鋭敏になってくる。
ふと相手の身体が動くたびにその身体の匂いがハイニの嗅覚を刺激する。押し殺したような息づかいが鼓膜を
震わせる。

 それはフラーケンの肌の匂いであり、フラーケンの息づかいそのものだ。

 闇の中でその全身は黒く、異名そのままにどう猛な大型犬が自分にのしかかっているように見えた。
手のひらがハイニの胸板を幾度も撫でた。盲いた者がよくするように、その手に目の役割をさせているかのように
念入りに、事細かに肌を撫でる。
そして、そのやりようはとても優しかった。普段のフラーケンからは想像も出来ないような優しい手の動きだった。

「キャプテン……きもち、いいっスね……」

ハイニが感じた気持ちよさはみだらなものではなく、純粋に心地よいものだったし、男に肌を撫でられることに
対し、思い描いていたようなおぞましさは意外にも感じられなかった。だからこその言葉だった。

すると、ごそりと音がしたかと思うと濡れた生温かいものが胸にふれ「うっ」とハイニは声を殺した。
唇が肌に押し当てられ、そしてその奥に潜んでいるはずの舌が己の胸を舐めてきたのだ。
平らな胸を唇が滑ってゆき、乳首をとらえる。
「……ああ…っ…」
敏感な箇所を啄まれ、たまらず声が出る。
執拗に愛撫されハイニは身をよじって逃れようとしたが、フラーケンの両腕はハイニの身体を逃してやりはしない。

まるで猟犬が獲物を捕らえ、逃さんとするかのようだ。
「ひっ…ひ……っ、きゃ、キャプテェン……っ」
フラーケンの舌に攻められ、次第にハイニの中のこだわりがどこかに押しやられ、かわりに欲望の種火が
身体の中心に点る。

煽る舌はハイニの胸から正中線をたどり臍をくすぐると、股間へと降りていった。

「キャ、キャプテ……!俺、まだシャワーも」

慌てて起き上がろうとしたがフラーケンは邪険にハイニの胸を右手で突き、己の上半身で腰を押さえ込む。
「汚ねぇッスよぉ…あ、ああ、駄目、キャ……」

 フラーケンはまるで獲物を喰らう狼のようにハイニを貪った。
それでも、女のように優しくたおやかではないが、その愛撫は乱暴ではなかった。
隠すものをすべて剥ぎとられ、ハイニの胸中はともかくとして刺激に反応したくましくなったものを己の上官が
せっせと扱いている光景が闇に慣れた目の前にある。
 全身でせわしなく呼吸をしながらハイニははじめは遠慮がちにだったが、フラーケンのむき出しの肩に手を
あてがった。
その感触に、ちら、とフラーケンがハイニの顔を仰ぐ。暗闇の中、彫りの深いフラーケンの容貌は禍々しい。
ハイニを瞬きをすることなく見上げる猟犬の瞳は興奮に輝き、舌をべろりとハイニの性器に押し当てて見せる。
短く整えられた髭が薄く敏感な皮膚を、まるで微細な、無数の針で刺すように刺激する。
下腹が甘く痺れ、ハイニはたまらずフラーケンの頭を自分の股間に押しつけた。

相手が男であることも、上官であることもどうでもよくなっていた。
フラーケンの頭をつかみ、荒々しく揺さぶる。
「ああ、ああ、ああ」
ぬるりとした口腔の中でうねる舌、ちゅぷちゅぷという卑猥な水音。

「キャプテン……キャプテ、ン……」

なりふりかまわず上官の口に股間を突き上げ始めたハイニだったが、フラーケンは咥えていた口を離した。

「キャプテェン……止めないでくださいよぉ……」
すっかり理性でとどまることを止めたハイニにほくそ笑み、フラーケンは立ち上がるとハイニの身体へと跨がった。

「もっと好くしてやる」
「……」

 自分が生唾を飲み込む音が部屋に響いた。
そして、身体の一部が相手の身体に侵入する音をハイニは聞いた。薄い筋肉の締め付けが想像よりも強くない
のは、この男が慣れているからか。それでもはじめの抵抗は女のそれとは全く異質のものだ。

「キャプテン……」
「あ、…ああ……」
聞き慣れたはずの声は艶を帯びしっとりとハイニの耳へ忍び込む。

「どうだ……俺の身体は……」
つながっている身体の真ん中に見えるのはまごうことなき男のしるしだ。
「……キャプテンの……でかいッスね……っ……」
「……」
まだぎこちないハイニの動きに顔をゆがめながらも、フラーケンは小刻みに震え、官能を享受しているように
見えた。そして、彼はハイニの手を取ると自分の前へと導く。
「ハイニ、……お前の手で、……してくれ……」
抵抗がないわけではなかったが、ハイニは命じられた通りに、腹の上で揺れているフラーケンのものを握った。
それは熱く、硬い。尻を他人に掘らせるような奴は女の腐ったような軟弱者だろうと思っていたハイニにとって
フラーケンの行動もその身体も、想定外の一言に尽きる。

ほとんど表情を変えることの無い上官が、快感を覚えていることをその昂ぶりに感じ取りハイニは胸を熱くした。
「好いんスか……好いっスかね……」
問いかけながら、こちらの心臓が爆発してしまいそうなほど興奮し、ハイニは堪えきれず腰を揺らし始める。
「う……っ、…ふ……」
身体の内壁を部下に擦られ、前をつかまれ官能に震えるフラーケンは呻く。
次第に乗り気になってきたのか、体内のハイニ自身が容積を増したように感じた。
「好い、ぞ……ああ……ハイニ……」
部下の目の前にすべてを晒す恥辱など、今のフラーケンは覚えなかった。むしろ秘密を暴露したことに、
そして何より信頼する男がすべてではなくとも自分を受け入れたことに喜びすら感じていた。

「ハイニ、……ハイニ、」
次第に突き上げるハイニの動きが激しくなる。
「キャプテン、俺、おれ……っ……キャプテン、キャプテン、あっあ、あ」
腰をつかむ両手に一層力が入り、フラーケンは腰に食い込みそうなほどのハイニの指の力に顔をゆがめた。
「気持ち、いい……、好いっ、キャプテン、好い……も、もう、駄目、駄目駄目…っ!」

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