虚の愛


ドメルとデスラー、同軸リバです。私はこの二人、一言で「ラブラブ」とは言えない関係にあるのが
たいへん好きなようで、どうしても普通にラブラブに出来ません。(2014.07.01)


              

この作品には「ドメル×デスラー」と「デスラー×ドメル」の性描写があります。リバ嫌いな方はご注意ください。



 今回はいささか疲れました、と力なく告げたドメルを、デスラー総統は主君のつとめとして一応は鷹揚に「ご苦労」とだけ応えた。
「さしもの第6空間機甲師団もあの星系の制圧には難儀したようだね」
「面目ありません」
「いや。ドメル、君は実に良くやってくれている」
「恐縮です」

 それまでは他人行儀だったデスラーの表情がふと緩み、その唇には柔らかな笑みが浮かんだ。
玉座から立ち上がったデスラーはそのまま神妙に控えているドメルへと歩み寄る。
「君たちの活躍があればこその我がガミラスの隆盛。暫くは休養するがいい、君の代わりはつとまらぬかも
しれないがディッツに他を派遣するよう命じておいた」
「総統、しかし」
ドメルはバレラスにいるよりも遙か宇宙の彼方を巡っていたいといつも言う。
今だってあからさまに口にしないものの、地面に足を繋ごうと先手を打ってきたデスラーに対し、非難がましい視線を向けてきた。主君に忠実なれど正直な男だ。
「ああ、そんな目を向けないでおくれ、エルク」
デスラーはそう言って親しげに呼びかけ微笑むとドメルの頬を両の掌に包み込んだ。
「愛しい私の狼。今ひとたびはその牙を収め身体を休めたまえ。……この私の元で」
「貴方の狼は宇宙を駆けるのが役目です」
そう言い返すものの、既にドメルの口調は軟化し逞しい腕はデスラーの身体を抱き寄せる準備をはじめている。
少し困った顔をしている優しい狼の顔を引き寄せたデスラーは、紫水晶の瞳を見開いたまま優しく唇を重ねていった。軽やかな口づけは幾度も繰り返す度に次第に熱を帯び、物欲しげな水音を立てる。

「貴方の傍にいたところで、休養など取れぬように思えます」
穏やかな深緑の瞳の奥に欲望の光を垣間見せつつ、片手で器用にデスラーの衣服を剥ぎ取りながらドメルは苦笑した。
「君は先ほど休暇など要らない、と言ったはずだが?」
不敵な笑み、挑戦的な眼差し。
デスラーに誘われるまま、途中幾度も立ち止まっては飽きもせず口づけを交わし、ベッドのある寝室へと向かう。
「欲しくはなかったのか」
かちり、と肩口の留め金が外れ、マントが床に拡がり朱い海を作り出す。
「……欲しくない、と言えば嘘になります」
その武骨な指はデスラーの上着を脱がしにかかっている。落ち着き、平静を装いつつ指先は微かに震えていた。
「どうして君は素直に『欲しい』と言わないのだろうね」
ドメルをベッドに腰掛けさせ、その頭を愛おしげに両腕に抱き、デスラーは濃茶の硬い髪の毛に唇を落とす。
もどかしげにデスラーの上着を剥ぎ取ったドメルは下に着ていたシャツをたくしあげ、ようやくあらわれたデスラーの素肌を両の掌に楽しませる。頭上でデスラーが「エルク」と掠れた声で囁いた。

「さあ、……」
やがてデスラーはドメルをそのままベッドへ押し倒し、馬乗りに跨がった。
ドメルの喉元のジッパーをつまみ、ゆっくりと引き下ろす。
「アベルト様、」
ドメルの掌はデスラーの、既に素肌を晒した胸や腹を優しく撫で、ベルトを外しズボンをそろそろと下ろした。
そしてデスラーを見上げその反応を窺いつつ、手を下腹部へと下ろしてゆく。

下着の上から昂ぶりをそっと握る。
微かに強張る、しなやかな肉体。
どこか金属にも似た瞳が妖しく光り、ちいさく開いた唇からは甘い吐息が漏れる。

────貴方は何よりも、誰よりも美しい

ドメルは自分に跨がるデスラーを眩しそうに見上げた。その視線を嬉しそうに受け止め、デスラーもまたやんわりと、腰に当たるドメルの熱い肉棒を握るのだった。




 どう抗っても、デスラーは容易くドメルを虜にする。火を付けられた肉体は先ほどとは打って変わって、荒々しく
デスラーを組み伏せ、喰らうかのように唇を押しつけ、歯を立てる。
「ああ、」
先刻まで従順で奥ゆかしかった狼は何処に行ったのだ、と顔中に口づけを施すドメルにデスラーは笑いながら問う。
「ここにおります」
にこりともせずドメルが答える。腹に跨がったままのデスラーの尻たぶを掴み、その奥へと這うドメルの太い指は勝手を知ったように秘所へと潜り込んで行く。ああ、と悩ましげに悶えるデスラーの額に浮かぶ汗の玉を優しく吸い取りながらも、ドメルは更に入れる指を増やし、下半身への責めを一層激しくするのだった。
「エルク、早く……早く、お前のものを……」
首に絡みつく両手。苦しげに開いた唇。乱れ絡まる金糸の髪。

 ただ欲望だけに忠実に、ドメルは己をデスラーのなかに沈めゆく。
「エルク、……あぁ……あつ、い……」
温かくぬめった肉の襞が絡みつき、ドメルはしばし下半身に意識を集中させ、その性感を貪ろうと腰を揺らし始める。ドメルの太く逞しいペニスの抽送に時折顔を歪めつつも、デスラーは貫かれる快楽にのけぞり、うっとりと目を閉じた。

 デスラーの美しい容貌に、淫らな欲望に汗ばむ滑らかな肌に、そして己に穿たれている直ぐその上で揺れている彼の男性自身に目を奪われ息をすることすら忘れそうになる。

 だがいつも、心の何処かで思っていることがある。
出会わなければ、このような誰にも言えぬ罪を犯すことはなかったはずだと。
このように苦しい想いをすることなく、穏やかに過ごせるだろうにと。

「貴方に巡り会わなければ良かった」

 荒々しく突き上げながらドメルは吐き捨てるように呟いた。 
容易く身体を繋いでも、その心は決して与えられることは無い。昔からわかりきったことだったのに、どうしてもこの男から離れることは出来ない。

「エルク……」

デスラーは僅かに瞳を曇らせドメルの名を呼びその手を取り、己の喉へとあてがった。

「ならば殺してご覧」

ドメルはさして逆らいもせず、喉に添えた手にじわじわと力を込めてゆく。
くっ、とデスラーの喉が圧迫される小さな音が聞こえ、ドメルは僅かに眉を歪ませたが手を離しはしなかった。
「……もっと、締めて……もっと、……突いて……」
次第にうつろになってゆくデスラーの声はまだドメルを誘惑することを止めない。
ドメルは身体を起こすとデスラーの身体へ折れんばかりにのしかかり、激しく己を打ち付けた。デスラーは苦しげに
口をあけ空気を求めているがその瞳は恍惚とし、ドメルから離れない。
「エ、……ル、………」
デスラーはドメルの狼藉に対し何の抵抗もせず、意識を失いかけているのかその紫水晶の瞳を閉じた。
「……ク………」
デスラーの整った、薄い唇が己の名を呼び終えた瞬間、ドメルは急激な昂ぶりのままに「ああ!」と
大声をあげ、力を無くした身体の中に放ち、果てた。




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