軍隊において上官の命令は絶対だ。
「しかしよ、」
と、バーガーが釈然としない顔で言う。
「クライツェさんは上官じゃ無ぇぞ。同僚だ」
「とは言っても、経験年数は俺たちの倍だし幕僚になったのも先だ。逆らえん」
「ったくあんたはいつもいつも冷静でたいしたもんだよな、ライル」
大声を出したいバーガーだが、ここではそれは許されず彼は身振りだけは大きくした。
二人はクライツェの居室の一角で軍服を脱ぎ、別の衣服へと着替えている。
「別に、冷静じゃないけどな……」
そういうゲットーの口調はどこか無理をして感情を押し殺しているようにも聞こえた。
そうだ。ゲットーはそうなのだ。これが嫌いではないのだ。むしろ、ノリノリ。
「平静じゃないのは、確かだ」
「もういい」
二人は同じ服装に着替えていた。白いニーハイソックス。膝上15cmの長さで揃えられた黒のワンピース。
その上にフリルのついた白いエプロンをかける。
「ちゃんと下着も替えたか?」
「う、うん……でも、慣れねぇな、これ……おさまりが悪くて」
「しょうがない、女物だから……」
何かしらこそこそと話し合いながら、彼等は互いの頭にヘアバンドを装着するとゲットーはバーガーの、
下手くそに結ばれたエプロンのひもを結わえ直してやった。
ねじれた襟も、皺の寄りすぎたスカートもいちいち丁寧に直して全て完璧に仕上げてやると、ゲットーは
満足そうに頷き、「うむ。可愛いな、フォムト」と言う。
「止せよぉ、俺は男で、ガミラス軍人だ」
「いいじゃないか、男で軍人でも可愛いものは可愛い」
ゲットーの綺麗に手入れされた冷たい手に頬を撫でられ、バーガーは小さく身震いした。そのまま二人の
距離が一層縮まる。「ライルも……イカレてるぜ。似合ってる」と言うとニッと笑い、ほんの数センチまで
近づいていたゲットーの唇に食い付くかのように唇を合わせてきた。
狭い空間でしばしの間、二人は他のことなど忘れてしまったかのように互いを貪り合う。
「ん、ん……ライル、このままここでヤりたい……」
「駄目だろ、……そろそろ行かないと……」
「やばい、もう勃った」
「馬鹿」
「おい、早く出てこんか!」
クライツェの声が二人の愛撫の手をようやく止める。
「今、行きます」
ゲットーは至極冷静に答えると、既に頬を紅潮させたバーガーの手を取り「さあ、行こう」と促した。
「クライツェさん、すんません遅くなって」
小道具のつもりなのか箒を手にしたバーガーはひらひらとしたスカートが落ち着かないのかもぞもぞと
身体を揺すっている。
「ふん、どうせお前達のことだ、コソコソイチャついていたのだろう」
「……」
「ほら、そこに並んで立て」
バーガーの手から箒を取り上げ、それで追いやるように二人をベッドの脇へ並ばせると、既にガウン姿で
くつろいでいたクライツェは満足そうに奇妙なメイド姿のゲットーとバーガーをジロジロと足下から頭の先まで見回した。
身体の大きなクライツェのベッドは特注サイズだ。もちろん、クライツェの並外れた巨体を考慮したもので
あったが、今思うとこんなプレイの為にわざわざしつらえたのではないだろうかとバーガーは疑っている。
「何だ、バーガー。図星か?」
「え、あ……」
「ご主人様の前でスカートをめくって中を見せてみろ、確認してやる」
「……ハイ……」
頬を上気させたまま、ちら、とゲットーと目を合わせたのをクライツェは見過ごさない。
「おい、ゲットー。貴様もだ。やれ」
「…はい、……」
椅子にどっかりと腰掛けたクライツェの前に並び立ち、二人はそろそろとスカートを捲り上げた。
小さな白い、女性用の下着の奥で二人の股間は不自然に膨らんでいる。
「ふうむ」
クライツェはニヤリと笑い、箒の柄の先でバーガーの股間をつついた。
「あっ、あっ」
びくんと身体を震わせ、バーガーは腰を退いた。硬く張った性器を、布越しとはいえ刺激されると辛い。
「貴様、ここに何を隠しているのだ?ゲットー、脱がせてみろ」
「はい、クライツェ…いえ、ご主人さま」
バーガーほどではないが同じように頬を染めたゲットーが跪き、バーガーの小さすぎる下着に手をのばす。
「ライルぅ……う、……っ…」
ひといきに下ろすと女性ものの小さな布面積しかない可愛らしい下着から、男性のシンボルが勢いよく飛び出した。
「どうします」
僅かばかり声を上ずらせながら、ゲットーはクライツェへと振り返った。
クライツェは無言のまま箒の柄でバーガーの勃起したペニスをなぞる。
「うっ、んっ、」
と、スカートの裾を掴んだままバーガーは唇を噛んだ。棒きれに弄られた性器は上を向いたままふるふると
震えているのが愛らしくゲットーの琥珀色の瞳に映る。
「何だ、物欲しそうな目をして」
はい、と小さく囁くような声で答え、うつむいたゲットーをクライツェは見下ろしふふん、と笑う。
「ならばお前も股間に何を隠しているのか見せんとな」
日頃はガミラスのトップエースとして、またその性格から親しみにくい、恐ろしい、などと噂されるゲットー少佐は
その場に立ち上がるとちら、とバーガーを見た。
「スカートを上げろ」
良く通るクライツェの声に促され、しばらく躊躇していた両手がスカートの裾を持ち上げる。
すらりと伸びた両脚の付け根の中央に、バーガーと同じ女性用の下着からやはり男性器が立派に上向いている
のが透けて見え、しかもどうあっても布面積が足りないのかその先端が顔を出していた。
「貴様も大概、こらえ性の無い奴だな」
箒の柄を下着の端にかけぐい、とずり下ろし意地悪くせせら笑うと、「ほら、そのままで突っ立ってないで、
お願いをしてみないか」とクライツェが言う。欲望のかたちを露わにさせられたゲットーはたまらなくなったように
「……ここで、……バーガーと…させてください……」
と、声を上ずらせた。
「何だって?」
「ご主人様の前で、…バーガーと、やりたいです」
躊躇いながらもそう言い切ったゲットーの性器が、より一層硬く張ったようにバーガーには見える。
「呆れた奴だ。なあ、バーガー?お前はどうだ?」
立派に勃起したゲットーのペニスを箒の柄で小突きながら、この場では二人の主人であるクライツェはバーガーへ問うた。
「えっ、…あ、お、俺も、……ゲットーと、やりたいです」
「具体的に」
「……あー。ま、まずは、舐めたい、です……ゲットーのを……」
そう言っただけで自分のペニスも怒張を増す。こんな格好で、男同士で絡み合う様を見られるのをはじめこそ
屈辱にさえ思ったものだが今はどうだ、興奮の度合いが増すばかりで早くやりたくてたまらない。
「ふーむ」
日頃温厚なクライツェだが、このときばかりは非常に意地が悪い。それがまた興奮の種になるので不快では
ないのだが、こうして局所をさらけ出したまま指示を待つ時間は非常に長く感じられるのだった。
「ね、ねぇ、ご主人様、……早く、やらせてくださいよぉ……」
いつの間にかゲットーとバーガーは身体の側面を擦り合わさんばかりに寄せている。互いの熱い吐息が聞こえ、
早く触れあいたくて我慢が出来なくなる。
「ご主人様……お願いです……っ…あ…」
執拗に棒で刺激を受け続け、さすがの撃墜王も腰を退き身を震わせた。
「貴様等、碌に働きもせずはしたないメイドだな、全く。…よかろう、そこでいちゃついて見せろ」
あるじの言葉に二人は顔を見合わせ、バーガーはあからさまにその表情を明るくした。
「……ただし、手は使うなよ」