甘え上手には敵わない


              







俺たちの寝ているベッドは元々俺だけのものだ、当然ながら一人用で二人眠るには狭い。
よくも遠慮無くぐいぐいと体を押し込んでくるものだ、と俺は嘆息した。

「でも……」
「あン?何だ?」
「悪い気はしないな。いつも何もしないお前がしおらしく食事を作ったり洗濯をして、あげく軍服まで
吊してくれるのはな」
昨晩この男にやられて腰を抜かしたあげく貴重な休日をふいにしたのは不覚だった。
俺としたことが、バーガーをみくびっていたとしか言いようが無い。

「だって……俺だって、それなりに気遣いって奴も出来るってことだ」
直ぐ隣で苦笑いしている年下の恋人。
「俺を抱くときもそんな気遣いを頼む」
「んっ」
昨晩の暴れようを思い出したのか、バーガーは頬を上気させ「あ、ああ、もう中出しなんかしねぇから」
なんて慌てた。
「当然だ。だが、この次は仕返しをさせてもらわないとな。バーガー、お前の休みは次はいつだ?」
「じょ、冗談は止せよ!仕返しって、俺だって今まで随分あんたにしてやられて……」
「おい、狭いから暴れるな……」
それでもまだ何か言いたげなバーガーを抱きしめる。自分よりも平熱が高めなのか、彼の体は温かい。
至近距離でいっとき互いを見つめ合い、くす、と笑うとどちらからともなく唇を寄せた。
「今日は休戦?」
「ああ、休戦だ」
「つまんねぇな」
「お前は元気だな、バーガー」
唇を合わせながら会話を交わす、こんな時間も悪くない。
「……ところで、なあ、ライル」
「何だ?」




「……いい加減、フォムト、って呼べよ。ヤってる最中だけじゃなくってさ」
クラルのような、よく動く明るい青い瞳が俺を見上げる。



全くもって、甘え上手には敵わない。



────終────