もう一つの七色星団


暫く前にピクシブに投稿した作品です。19話を元に、ヤマトが七色星団に来なかったらいいのになと
いう話を考えました。総員ホモで、捧げ銃してます。(2014.08.23)
              

 ドメル将軍麾下の精鋭、第六空間機甲師団は大半をバラン鎮守府に残し、主立った幕僚と
その部下の一部は今、バレラスに駐留していた。とは言え数日前までドメル将軍に総統暗殺の
嫌疑がかかり、幕僚達も勾留され、身に覚えの無い罪状まで読み上げられる始末で、それが
ようやく解かれたと思いきや即、ガミラスへと向かい来るヤマトを討てとの命令が下り、幕僚達は
総統府や中央作戦司令部の身勝手さに不信すら抱いている。


「ケッ、忌々しいにもほどがあるぜ。しかもようやく解放したと思ったら直ぐに戦争に行って来いだと。
俺たちを戦争ロボットと勘違いしてんじゃねぇか、総統閣下はよぉ、」
年若いエリート士官と見なされ、またその性格も災いして獄中では手ひどい扱いを受けたらしい
バーガー少佐は不満を露わにした。尻が痛むのか椅子があるのに座ろうとしない。

「俺たちは国家の兵隊だ。国家元首である総統の命令であれば仕方あるまい」
やれやれ、とクライツェが肩をすくめながら言う。

「不満ならバーガー、お前は牢屋に繋いでもらっておけ」
ゲットーから冷ややかに言われ、「んな、冗談じゃねぇや!」とバーガーはむくれ顔だ。
「しかし急な話だ、師団の艦隊はあのもみあげ元帥閣下のせいで壊滅状態だし、残存艦艇もゲートが
破壊されたためヤマトがバレラスに迫るまでに帰ってこられない」
「バレラスの守備艦隊が使えればなー!」
「親衛隊長官の息のかかった艦隊なんて当てに出来るものか」
「だが親衛隊の奴等はなかなか可愛いぞ」
「止せよー、クライツェ!噂じゃギムレーのクローンらしいぜ、あいつら」
「ほう……」
「えっ、クライツェまさかお前」

「一体どこから戦艦や兵士を調達してくるんだろうな。若い兵士が集まればいいが。出来れば可愛い子が」
「おい、ゲットー!?何考えてるんだよ!」


 それぞれの思いを胸に、総司令官であるドメル将軍の指示を仰ぐ。
結局、幕僚らが恐れていた通り総統府がドメル将軍に与えたのは二線級以下の旧型艦や試作艦、
そして急遽呼び集められたらしい退役軍人、老兵、そしてまだ訓練半ばの少年兵たちだった。
「ケッ、空母が三杯だけかよ」
「ぼやくな、バーガー。見ろ、可愛い少年兵が」
「俺にその趣味は無ぇよ」
「本土防衛艦隊の可愛い兵士たちは親衛隊が牛耳っている。こちらにはまわって来ない」
「まだ言ってんのかよ、ゲットー」


※※※  ※※※  ※※※


 それから数日。工廠ではドメルの指揮下に置かれた空母の整備や艦載機の積み込み等が急ピッチで
行われている。試作艦であったダロルドには重爆撃機、ガルントが積載されるがそれには奇妙な事に
特殊削岩弾が爆装されていた。そしてドメルの座乗艦、ドメラーズⅢの艦橋には見たことも無い不思議な
装置が取り付けられている。

管理室からそれを眺め、ヴェルテ・タラン軍需相はため息をついた。
「全く……、兵器開発局を説き伏せるのは一苦労だったぞ」
「感謝しています」
隣に立つドメルの素っ気ない言いように、タランは苦笑いし肩をすくめた。
「まあいいさ、君のわがままには慣れている。だから……」
タランの手がそっとドメルの逞しい尻に触れる。ああ、とドメルは小さく息を吐いた。
「これで帳消しとは、軽く見られたものだよ、エルク。だが情けないことに私は君の言いなりだ」
さしものドメルも唇を噛み、頬を赤らめ俯いた。タランは工廠を見つめたまま大胆にドメルの尻を撫で回す。

「ああ、君の尻は触り心地が好い。…さて、前はどうなっているかね?」
そんなタランの声も、手の動きも淫靡なものになってゆく。
「……ご配慮、…感謝しま…す……」



 その頃、ライル・ゲットー少佐はドメル司令の命を受け、ヤマトがガミラス本星へと向かう航路を計算し
続けていた。もちろん面倒かつ緻密な計算は部下に任せ、彼自身は愛用の爪やすりで爪の手入れを
しつつ報告があがるのを待つだけだ。
やがて、まだ少年らしさを残した童顔の可愛らしい兵士が彼の元に結果を携えてやってきた。
神経質で気難しいゲットーは優秀な指揮官であり戦闘機パイロットだが敬遠される向きもあり、こんな
報告には決まって素直そうな、美形の若い兵士が任ぜられることが多い。今日もそうだ。
ゲットーは兵士を手の届く位置に立たせたまま、報告をチェックした。
「七色星団……これはまず無いだろう。ここを通ってくるなんて無茶だ」
「で、ですが最短コースである、と……」
「ふざけるな、戦うのは俺たちだけじゃない。旧式の空母と艦載機、そして前線を退いた老兵と未熟な兵士たち。
こんな手札であんな難所で戦うなんて狂気の沙汰だと思わないのか」

「あ、……申し訳ありません……」
起伏に乏しい口調は本人にその気が無くとも冷徹に聞こえてしまう。若い兵士は叱責されたものと思い怯えた。
「……君に言った所でどうにもならないが……何を怯えている?」
「い、いえ、そんなこと」
色素の薄い虹彩に小さな黒い瞳孔のコントラスト。ゲットーの瞳はまるで猛禽のようだ。

「そんなにびくつくな」
「……」
ゲットーは立ち上がると顔色を無くしている兵士の正面に立った。そしておもむろにその身体を抱き寄せ、
宥めるように頬を撫でる。滑らかに磨かれた冷たい爪の感触に兵士はひくりと身体を震わせた。
「俺は怒っちゃいない」
彼はトップエースの撃墜王だが、それは空戦だけにとどまらなかった。
「……少佐どの、……」
手がそっと股間に触れ、蠢き、兵士は「ん、」と小さく呻く。
「……俺は操縦桿の扱いには自信があるんだ。どんな機体だって巧く飛ばせる」
「しょ、う、さ……」
「君という可愛い機を操ってみたい。……いいだろう?」
耳元に官能的な声で囁かれたかと思うと唐突に頬を掴まれ口づけられた。抱きしめる腕は心地良い束縛。
「……ザー・ベルク、……」
先ほどまで恐ろしい、と思っていた琥珀色の瞳をうっとりと見つめ返し、兵士はあっけなく陥落した。


 ゲットーが若い兵士とよろしくやっている間、フォムト・バーガー少佐は直近の部下二人のうまい棒を
食べていた。
「バーガー隊長、どうです?私のうまい棒」
「い、いいぜ……ああっ……」
「隊長、俺のも」
「……来いよ、……んっ、ふぅっ、畜生、旨いじゃねぇかよ……」
「ほんと、隊長は欲張りだなぁ、上からも下からもうまい棒食べたいって。どんだけ好きなんですか」
「うっ…るせ、……はぁ、はぁ、」
「隊長のうまい棒も後で食べてあげますからね」
「ん、ん、…たのむ、ぜ……」
「ミルクも飲んであげますからね」
「あ、あ、……先に、…お前等のを……寄越せ、よ…ぉ……」
ドメル軍団の中でも特に血の気の多い第七駆逐戦隊はこうして戦争前の昂揚を仲間内で処理することが多い。
先ほどからずっとハイデルン大佐からの通信を知らせる電子音が鳴っているのだが、彼等はお構いなしだ。


 そして出撃のとき。
この戦いの為に編成されたガイペロン級航宙母艦バルグレイ、ランベア、シュデルグ、そしてゲルバデス級
戦闘空母ダロルドが順に出動し、司令部をいただくドメラーズⅢがそれにつづきバレラスの空を抜けてゆく。
やがて、宙に浮かぶ第二バレラスを通過したとき、ドメル司令はおもむろにマイクを取り、全艦隊へと通信を
つなげた。

『これより全艦に針路を通達する。コース728。目標、七色星団』

「七色星団!」
バルグレイに乗艦、第一次攻撃隊の隊長を務めるゲットーは驚いた。あれほど七色星団は無理だと上申
したのに。しかし、と言うドメルに対し口を酸っぱくして七色星団での戦闘は有り得ないとしつこく説得した。
そのはずだった。

最悪の事態しか想像出来なくなったのはランベアに乗艦するバーガーも一緒で、
「マジかよ」
と歯がみをし、武者震いする。『こんな難所を通るなんて、自殺行為だ』ってあんなに言ったのに。



 出撃前、彼等は同じ幕僚のクライツェ、そして今回ガルントに乗艦するハイデルン大佐と仲の良い爺さんと
ある賭けをした。男の誇りを賭け、ドメル司令の采配を待ったのだ。
それがこの結末とは。

バーガーはこっそりとゲットーに通信を繋ぐ。
「おい、七色星団だとよ。俺たち負けたぞ」
通信機の向こうのゲットーの表情も暗い。
『あれほど司令には念を押したのに……』
「あの爺さんはともかく、クライツェなんか相手にした日にゃ、またケツが裂けちまう」
『お前、頼んだぞ』
「冗談じゃねぇ、俺は爺さんの相手するからよ、今度はお前がクライツェな!」
『俺だって御免被る』

 読みの外れた者は、当てた者に奉仕する、というのがドメル軍団内での賭けの鉄則だ。
はじめのうちは食事や酒を奢る、とか、掃除当番を押しつけられる、といったものだったのだが次第にエスカレート
していき、今では男色行為が賭けの報賞に成り代わっていた。


ダロルドではガルントに搭乗するヴァンス・バーレンが高笑いしハイデルンと雑談に興じている。
「うわっはっは、気分がいいわい。あの鼻っ柱の強そうな生意気な若造、今頃地団駄踏んで悔しがっておるだろうて」
『バーガーか?あまり苛めてやらんでくれよ、バーレン』
「お前は若いのを甘やかし過ぎだぞ、ハイデルン」

気勢をあげるバーレンの物言いにハイデルンも苦笑するしかない。
「意外でしたな、ゲットーとバーガーが回避案を支持していたとは」
バーレンとの雑談を止めたハイデルンは後ろのドメルへと振り向いた。
「奴等はヤマトの艦長を知らない。あの大胆極まりない優れた采配、彼ならばどうあっても七色星団を目指すはずだ」
ドメルは静かに語った。まだ尻が痛い。タランと最後に過ごした夜、いろいろとやり過ぎてしまったようだ。
穏健そうに見えその実サディスティックな性癖を持つタランは「借りは返していただくよ、エルク」とさらりと
告げると容赦なくドメルを攻め立てたのだった。

切ない尻の痛みに甘い記憶が甦る。ドメルはしばし目を閉じ、今は遠きにある朋友を想った。

「司令。これから暫くは自動モードで巡航いたします。今のうちにお休みださい」
「うむ」
ハイデルンの言葉に鷹揚に頷くドメルだったが、「これから、一戦交えましょう」というハイデルンのサイン
には力なく首を振った。今日はとても受けきれない。あからさまに残念そうなハイデルンに一言「すまない」と
告げ、ドメルは一旦私室で暫しの休息を得るのだった。

艦隊の夜時間、航宙母艦バルグレイからシュデルグへ、ランベアから戦闘空母ダロルドへそれぞれ連絡艇が
飛び、三時間後にはまた戻っていった。搭乗していたのはそれぞれ指揮官であるゲットーとバーガーだったようだ。

幾度かのゲシュタム・ジャンプを繰り返し、やがて艦隊は七色星団へと突入した。


※※※  ※※※  ※※※


 ドメル艦隊とは別に、次元潜航艦UX-01が密かに異次元空間に待機し、ヤマトが七色星団に侵入してくるのを
待ち構えている。通常のレーダーはこの荒れた宙域では役に立たないが異次元からの索敵には何の問題も無い。

 しかし待てども待てども、ヤマトがやってくる気配が無い。
暇を持て余したゴル・ハイニは潜望鏡を覗いているフラーケンへとそっと歩み寄り、背後から抱きついた。
「ねェ、キャプテェン。ちょっと休憩しやせんかねぇ」
固く隆起した股間をフラーケンの尻に擦り付ける仕草は動物の交尾の催促そのままだ。
「こら、ハイニ……あっ……」
「キャプテェン、ね?いいでしょ?」
顔をすり寄せ、はぁはぁと荒い息をわざとフラーケンの耳に吹きかけるように囁く。
「に、…任務、中、だ……」
ハイニはきつくたしなめられないことをいいことに、フラーケンの腰をまさぐりズボンを下着ごとぐい、と引き
下ろした。意固地になっているのか、フラーケンはまだ潜望鏡のハンドルを握って離さない。それをいいことに、
ハイニはさっさと軍服の前を開きシャツの裾から素肌へと手を伸ばし、「キャプテン、キャプテン……」と
譫言のように囁きながら彼の性感帯である乳首を摘まみ、くりくりと捏ねる。
「だ、駄目、……駄目、だ、ハイニ、あ、あぁ、……」
快感にのけぞるフラーケンを背後からしっかり抱きかかえ、ハイニはいきり立ったペニスを一気に突き入れた。
「ぐっ……!」
「俺のイチモツは迷いもせずにキャプテンの大事なトコに入りやしたよ、っと」




 フラーケンから謎の暗号文『イチモツは迷いの森に入った』は届いたものの、ヤマト発見の報は来ない。
次第にドメラーズの艦橋には焦りと苛立ちの空気が充満してきた。

「本当に来るのでしょうか?」
怪訝そうに問うハイデルンに対し、
「ヤマトは必ず来る。指揮官が私の思った通りの男ならば必ず来る」
そう答えたドメルには確信があったが同時に危機感をも身に感じていた。

そうだ。ヤマトが七色星団に来なければどうなる。
私の尻が危ないのだ。司令官である私のミスを幕僚たちはここぞと責め立て、そして攻めるのだ。
ゲットーやバーガーはまだ若造だ、イクのも早い。しかしクライツェやハイデルンという老練の男たちは
非常に厄介で、幾度となく泣かされてきた経緯がある。

 ドメルは己の矜持と誇りにかけて、必死にヤマトを待ち続けるのだった。







────────終────────