その手で口で

 指で支えた哲雄の性器に、そっと舌を這わせる。根幹から、先端へと。
 いつも自分はどのようにされていただろうかと思い出しながら、口付け、思い切って先端を唇で挟むように銜える。
「……無理、するなよ」
 優しい声とともに頭を撫でられる。
 その仕草に、自分の方が年上なのにという気概が湧いてくる。

 いつもされてばかりいるのは、なんだか流されてばかりいるような気がした。
 哲雄ばかりが自分を求めてくれているような錯覚を抱いた。

 そうではない。

 自分も哲雄を求めているのだと――口に出すのは恥ずかしいが、決して流されているわけではないと哲雄に伝えたくて、自分なりに考えた末の結論だった。
 少しでも哲雄に伝わればいい。
 思って、深く銜えれば嘔吐きそうになるが、堪えて口一杯に頬張ったものへ舌を這わす。
 男性器の愛撫の仕方など蓉司にわかるはずがない。だから今の愛撫も哲雄にしてみれば拙いものかもしれない。
 頬を撫でられ、視線を上へと上げる。目を細めた哲雄が自分を見ているのに気付くと、急に羞恥心が湧いてきた。
 含んでいたものから口を離すと、哲雄をじっと見つめ返す。
「……なん、だよ」
「別に」
「そんな顔じゃなかっただろ。なんだよ」
「…………」
 わずかに眉が寄ったが、これは不機嫌なのではなく少し困っているのだと蓉司にはわかる。
 我慢強く待っていると、口許に手を宛て、
「……やらしいな、と思って」
 ぼそりと漏らす。
「お、おまえだっていつもしてるだろ。……俺に」
「してるけど」
「それはやらしくないのかよ」
「したいからしてるんだけど。……嫌だったか?」
「っ……そんなこと、ないけど……」
 気が付くと、今度は蓉司がベッドへ押し倒されていた。
 これではいつもと変わりないではないか。
 思っていると、額とこめかみに口付けが落とされる。
 蓉司を見下ろす整った顔へ両手を伸ばし、頭を抱えるように抱きしめる。
「……俺だって、したいからしたんだからな……」
 口調が拗ねたものになってしまったのは仕方がない。自分に言い訳するより早く、哲雄の両手が蓉司の体に回り、強く抱きしめられる。
「……今日、あんまり優しくできねぇかも」
「えっ?」
「おまえが、そんなこと言うから」
「おまえと同じことしか言ってないだろ」
 それでも、と哲雄は蓉司の首許へ顔を埋め、唇で首筋を辿りながら答える。
「そんなこと言われて、我慢できるわけねぇだろ」
 哲雄と同じことしか言っていない。
 けれど、もしかしたら。
 思っていたことが伝わったのだろうかと嬉しくなって、哲雄の体を抱きしめた。
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