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もっと、奥

 漏れそうになる声を必死に、歯を食いしばって男のシャツにしがみついて堪える。
 背骨から下りて尾骨のあたりを、直に撫でられるのは駄目だ。どうしても膝の力が抜けそうになる。
 それでも堪えていたのに、首筋まで舌と唇で柔らかく暖かく舐められてしまった所で負けてしまった。
「…ッあ、も…」
 立ってらんねェよと一本きりの腕で相手のシャツにしがみついたままずるずると崩れる身体を支えたのは、海賊団の舵を預かる太い腕。そこここに残っている傷痕は、歴戦をくぐり抜けた強者の証。
 いささか力が抜けてくったりとなった身体を抱き上げ大股でベッドまで運び、どさりと下ろして彼の上に覆いかぶさる。赤髪は男の夜色の髪をそっと指に絡めた。
 服やズボンの上から同じ所を触られても、こんな風になったりはしない。男の肌を、手を、直に感じるからこそこんなに翻弄されるのだ。
 煽られているのは自分だけだろうかと少し悔しくなって絡めた髪を引っ張ると、胸の尖った所を舌先で弄びながら目線だけ上げてきた。その目は昼に仲間達と過ごしている時の冷静で穏やかなものとは明らかに違う。自分だけを映した瞳は、背筋どころか身体の芯までが粟立ちそうなほど欲が見える。
 目は口ほどに語るというが、この眼差しと同じことを言葉で言われたら…考えただけで体が熱くなりそうだ。ただでさえ欲しくてたまらないというのに、更に…
 欲しくなる。
「…もっと…」
 頭を引き寄せ、唇を合わせてすぐに舌を滑り込ませると甘噛みされて吸われる。
 脛のあたりで履いている意味を成さないズボンを剥ぎ取られる。無意識に閉じかけた膝を宥めるように優しく撫でられたがそれは逆効果で、くすぐったさに身をすくめてしまう。初めてでもあるまいにとキスをしながら男が喉の奥で笑った気配を感じて、抗議しようとしたら大きな手で強引に膝を割られて脚の間に男が割り入ってきた。
 内股を膝のあたりから脚の付け根まで撫でられ、体が小さく震える。そうして半ば勃ちかかっているモノの熱の温度を確めるように、指先でなぞり上げていく。
 シャンクスはゆるゆると与えられるぬるま湯のような刺激では足りないのだろう、ベンの舌を舐めながら腰を彼に擦り付かせるようにわずかに浮かせていた。
 ベンは小さく笑って掌全体で包むように熱を握り込んでやる。腰が跳ね、くぐもった声が喉の奥から漏れる。それでも物欲しげな視線を寄越すのは、求める刺激に達していないからだろう。
 随分淫らなカラダになったもんだなと男は笑うが、誰のせいだと思っているんだろう。
 だが睨もうと思ってもままならず、かえって男の中のある意味屈折した欲を煽るだけになる。
 先ほどより強く握られ、やや乱暴にしごかれる。嫌いではない。じりじりと貯えられていた熱が急激な刺激に追い詰められていくのはむしろ望むところ。
 先走った蜜が擦りあげる動きを滑らかにし、男の灼熱を待つ狭い入口をも浸す。またその音の淫猥さが耳を犯し、シャンクスを昂ぶらせていった。
 頭の中が真白になりそうになると、新たな刺激が追い詰められかけた身体を悦ばせた。
「ッあ…、ァアッ」
 反射的に逃げをうつのを許さず、とっくに力の抜け切った腰を引き寄せ、自身を沈めるための穴を長い指とシャンクスが溢れさせた体液で広げ、慣らす。
 追い詰められた所で解放されもせずに放置されたにもかかわらず、熱は冷めない。
 与えられ過ぎた快楽は裏を返して苦痛になり、眦から零れた涙はシーツを濡らした。
「も、ォ…ッ」
 耐え切れなくなって、自身に手をのばす。内部を押し広げ刺激する指に合わせて擦りあげると、数度であっけなく白濁を吐き出した。
 汗の流れるこめかみに口付けられる。男の指は中に入ったまま、なお淫猥な動きを止めようとしない。
 続けざまに与えられる快楽は苦痛だと、男の手を払うが逆に捕まれ、シーツに押しつけられる。だが要求は受け入れられ、男の指がゆっくり抜かれた。その時にも下半身は震え、甘い声が漏れた。まるで引き止めてるみたいだなと笑われて、殴ろうと思ったが力の入らないこの状態ではたいしたダメージを与えることは無理だろうから、これは終わってからにしておく。
 抜かれたはいいが、後に残る空虚感は拭えず、まるで焦らされているみたいだ。
 思っていると膝を思い切り開かせられ、抵抗する間もなく狭い中に男の熱が押し入ってきた。たまらず、背が跳ね悲鳴に似た声が口をつく。
「あ…アアアッ」
 前触れのない侵入に身体が反射的に逃げようとするのを、ベンは腰を掴むことで阻害した。そのまま引き寄せ、一層深く自身をシャンクスに埋め込む。
 指とは比較にならない熱と質量に奥まで犯されて、堪えられず背を弓形にのけぞらせる。一度達したはずのシャンクス自身も、身体同様熱を持ちはじめていた。
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