7&4

「ルフィ。ル――フィ―――ッ」
 前をちょこまか歩く小さな弟の後ろ頭に声をかける。弟は振り返りもせず、ブロックの上をバランスをとりながら危うげに歩いている。右手には、鶏肉屋の買い物袋。
「なに?」
「お前、ちゃんと下りて歩けよ。転ぶぞ」
「だ〜いじょ〜ぶだよ〜〜っだ」
「そーゆーコト言ってるとそのうち転ぶってマキノが…ああ、ホラ見ろ。言った通りじゃねェか」
 小さな段差に足をとられ、けつまづいた上に膝を擦ったらしい。赤く大きくすりむけた膝が痛々しい。
「う…うわああああああああんッ!!!!」
 一瞬の忘我の後に、大音響での泣き。やや大げさに溜息ついて、転んだ格好のまま泣いている弟の体を、荷物を横に置いてから起こしてやる。
「ったく…泣くなって。ああ、肉は無事だな。よく守った。えらいぞルフィ」
「う…ッ、ぅ…」
「えらいえらい」
 にこりと笑顔で泣きじゃくる弟の頭を撫でてやる。手や服の砂を払ってやる。
「……ほんと?」
「ホント。菓子の箱はつぶれてるけど、まァ中が食べられればいいし。強い男になるんなら、いつまでも泣いてんなよ?」
「ウン」
 目を袖でゴシゴシこすって涙を拭う。鼻水は兄がポケットから出したハンカチで拭ってやっている。
「よし。じゃあ、兄ちゃんがそっちの荷物も持ってやっから。今度はコケないように手ェつないで帰るぞ」
「ウンッ」
 差し出された小さな手を、さらに小さな手が握り返した。
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