St.Valentine's day

―――――at the ketchen♪

 調べ物に区切りをつけ部屋から出ると、小腹が空いているのに気付いてキッチンへ足を向けた。
 そういえば昼食を食べてなかったな、と思いながら向かうと…なんだかやけに甘い匂いがただよってくる。
 あまり得意ではない匂いに顔をしかめながら、食堂に群がる船員の一人に声をかけた。
「…なんの騒ぎだ、これは…」
「あ、副船長! 毎年恒例のアレっすよ。お頭からの…」
「……もうそんな時期か…」
「やっぱ匂いもダメなんスか?」
「ああ…どうも、この甘ったるい匂いはな…」
「じゃ、毎年この日は辛いっすね〜!」
「まぁな…。すまん、俺は部屋に戻る」
「お頭にもそう伝えておきますね〜!」


―――――in Beckman's room♪

「…誰だ?」
「誰って、オレしかいねーだろ」
「あんたか…どうした?」
「せっかくのオレの手料理を食わない副のために、わーざわーざオレが手ずから持ってきてやったんだよ!」
「…………」
「なんだ、そのイヤそうなツラは」
「イヤそう、なんじゃなくてイヤなんだ」
「…ったく、可愛くねぇヤツだなァ…毎年の恒例行事だろうが。ちったァ慣れろよ」
「だからって、あんたがわざわざチョコレートケーキ作るこたァねェだろう」
「いいじゃねぇかよ。皆喜んでくれてんだしさ。…ま、オマエみたいに甘いものは匂いも嫌いってヤツには我慢してもらうしかねぇけどよ」
「………」
「オマエにはちゃ〜んと別に作ってあるんだぜ♪ もちろん、食べてくれるよな?」
「……………………」
「だァいじょォぶだって! 甘いの嫌いなヤツにわざわざ甘い菓子なんか作るかよ! オレ様特製のブラウニーだぜ♪ たぶん、オマエ好みにできてると思うんだけど…あ、あとキッチンからかっぱらってきた酒な」
「…………あんたが飯を作るよりはコッチの方が上手いってのは知ってるがな…」
「ホラ〜、遠慮せずに食えって! 大丈夫だから!」
「………………甘くないな」
「だから言っただろ? オレ様特製だって♪」
「…ブランデーか?」
「おう♪ 生地に砂糖、ほんのちょろっとしか入ってねぇんだぜ?」
「……結構いけるな」
「素直にウマイって言えよ」
「…うまい」
「へへv♪ 酒のつまみにゃもってこいだろv」
「ああ…ありがとう」
「どういたしまして! へっへ〜〜〜vお返し、期待してるからな♪」
「……………………………」
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