「お頭ァ、いくら正月だからって、飲み過ぎだァッ」
「うっせェぞヤソップ! 正月だから飲んでいいんだよッ」
「ンなこと言って、昨日も飲みまくってたじゃねェか!」
「昨日は去年最後だっただろうが! いいんだよ!」
「なんのかんの理由をつけて、結局飲んでんじゃねーか」
「楽しけりゃいいんだよ! なァ、副ッ!!」
がっはっはっはっはと大笑いしながら副の肩をバシバシたたく。叩かれた方は顔をしかめながら、
「……そこで俺に振られても困るんだが…」
煙草をフカす。相方の迷惑顔にも気にもとめず、右手でジョッキを高く掲げて、
「楽しかったら飲む! これはこの世の真理だァッ!!」
「いいぞォ、お頭ァっ!!!」
「おう!! いっちょ脱ぐかァ?!」
「脱げ脱げェ!! いいぞォ〜〜〜ッ!!」
「………」
溜息をついて、一緒に明後日の方角に煙を吐き出す。
(……これだから酔っ払いは………って、ちょっと待て)
マッハでプレイバック昨晩。
(…覚えてる………わけ、ねぇな……)
また溜息をつき、すでにシャツを脱ごうとしているシャンクスの首根っこをひっつかまえる。上機嫌だったシャンクスはすぐに抗議の声をあげた。
「なァにすんだよォ!」
「脱ぐな!」
「はァ? なに言ってんの?」
やっぱり覚えてなかったか、と、後頭部に頭痛を感じながら、低く囁く。
「あんたな…痕ついた体、晒すつもりか?」
「あとォ…?」
案の定、頭にクエスチョンマークを飛ばすシャンクスに、答えを教えてやる。
「脇、腰、背中」
「………って、テメエがつけたんじゃねェかッ!!」
「つけろって言ったのはあんただろうが。…で? 脱ぐのか?」
「脱ぐなってゆったのはてめえだろッ!!」
脱ぎかけたシャツを直すシャンクスに、船員からのヤジが飛ぶ。
「なんだよ〜、お頭、脱がねェのかよ〜〜〜!」
「オレのハダカは綺麗すぎっから、海の女神に惚れられて海にひきずりこまれたら困ンだろーが!」
「とかなんとかいっちゃって〜、脱げないワケでもあるんじゃないっすか〜〜??」
「実はな、脱ぐと副が妬くんだよ…って、殴るなァッ!!」
殴られた後ろ頭を押さえて涙目をこする。
ベンはといえば、冷たい目をして煙草を吸う。
「誰が妬くか、誰が」
「オマエしかいねェっちゅーの!」
「おおお? 初夫婦喧嘩かァ?」
「見せつけてくれるねェ♪」
「なんにせよ、平和でいいこった!」
「夫婦円満がイチバンだからなァ」
「……なんの話だ、なんの…」
ベンはぼやくが、シャンクスはニヤリと笑い、
「じゃ、また今年1年、夫婦円満でやっていけるよーに、乾杯するぞ〜〜!」
「お〜〜〜〜ッ!!」
円満だけじゃあ終わらないだろうな、とは、船員全員の心のツッコミである。
「オラッ、オマエも飲むんだよ!」
無理矢理ベンのジョッキにもなみなみとビールを注ぎ、全員がジョッキにビールを注いだのを確認して、
「てめえら、今年もヨロシク頼むぜ!」
「お頭にカンパ〜〜〜〜イ!!!」
高々とジョッキを掲げる。
飲んだくれてつぶれている船員を見渡しながら呟く。
「……今年も飽きなさそうだな」
「ったりめぇだろ♪ オレが飽きさせねェよ」
「今年はどんなことが起きるやら…」
「なんか起きたら、ヨロシクなv」
「やれやれ…今年もあんたは変わりそうにねェな…」
「今まで変わらなかったんだから、そうそう変わるわけねェっての。…ヨロシクな?」
「はいはい…」
クスクスと笑いながら、その年初めてのキスをした。