「お頭…もっと自重してくれ」
「ん? なんで?」
前を歩く赤髪が振り返る。
「フォローするこっちの身にもなれ。だいたい、フォロー自体が失敗するかもしれないってことをあんたは考えてないのか」
「ああ、考えないね」
間髪入れずにスッキリ・ハッキリ・キッパリ。
長身の黒髪の目の前に来て、胸を張って見上げる。
「オレはオマエのこと信用してるからな。今までだってなんとかしてきてくれただろ? これからだって絶対なんとかなるさ。
それに、オマエのことだからフォローが失敗した所で、次のフォローを考えてくれてるだろ?」
「…………つまり、」
自信満々の言い方に呆れて溜息。
「あんたはな―――んにも考えてないんだな……」
「何をゥ?! オマエのことを信用してると言え!」
「後始末のことを考えてないなら同じことだ」
「うっさいな〜。いいんだよ! オレはとりあえず出された選択肢からやりたいことを選ぶだけなんだから。後はぜ―――んぶ、オマエらがやってくれる。そうだろ?」
トップがやらないのだから必然的に他の者が代わるしかない。そしてこの船に関するあらゆる雑務などをソツなくこなせるのは、この船にはとりあえず―――この黒髪しかいないのだ。
そのへんをわかっていてやっているようにも見えるが…しょせんは馬耳東風。何を言っても変わらない気がする。
「…何笑ってるんだよ副ッ!」
「ああもう…あんたはずっとそのままでいてくれ…」
「笑いながら言うことかァ?!」
「変わってくれとは言ってないんだからいいだろうが」
「……もっと深い意味を感じた」
じっとり睨む視線を軽くかわして、
「気のせいだろ」
「おいッ待てってば! こんな人ごみン中、ザカザカ歩いて行くなっての! 迷子になるぞ!」
「…あんたが、か」
「他に誰がいるよ」
「自信満々に言うことじゃねェなァ…」