ひそやかなささやき

「気持ちよさそうですねーゲオルグ殿」
 にやにやと笑いながら言うのはわざとだ。少しでも余裕があるように見せたい。
 先走りに濡れた性器を握りこみ、親指を押し付けるように先端を撫でる。途端にゲオルグの広い肩がびくりとゆれるのが心地よかった。
「……どっちが、だ……っ」
「オレがやらしーのはとっくに知ってるでしょー?」
 だから今はゲオルグ殿ですよと囁けば、それ以上返す言葉もないらしく、不機嫌に横を向かれた。それでも目許を薄ら染めて刺激を耐えているのは、煽情的でしかない。
 手を根元へと滑らし、屈みこんで先端を口に含む。指先で皮を撫でれば、熱がいっそう集まるのがわかる。
 気持ちや態度、言葉と違い、偽らざる身体の反応は信じることが出来る。だからカイルはゲオルグと身体を重ねることが好きだった。彼を追い詰め、誰も知らない表情を見られる悦びは歪んでいるとわかっていても、誘惑には敵わない。
「ゲオルグ殿、気持ちいーですか?」
 答えは返ってこないとわかっていて問う。だが予想は思いがけず、裏切られる。
「ゲオルグ殿……?」
 上体を起こしたゲオルグに、頭を抱え込まれる。そうして耳元に囁かれた。
「……、……」
 思わず身を起こしてゲオルグを見下ろした。こういう状況下にあって、どうしてカイルのほうが赤面するようなことになるのか。
 この野郎と内心で毒づく。
 そうやって余裕ぶって見せるから、崩したくなって躍起になってしまうのだ。
「……いーですよ。後悔しないでくださいね?」
「出来るのか?」
「可愛くないこと言わないでください」
 こんな素敵な格好で説得力ないですよと開かせた膝を持ち上げると、内側に口付けた。
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