俺が彼を見つめる時に少し目を眇めるのは、彼がいつも笑っているから。
太陽のような笑顔で、俺の心の昏いところまでも照らして白日の下に晒すような錯覚を覚える。
嫌なわけじゃない。癒される事の方が多いから。
じっと彼の顔を見ていたら、不意にキスをされた。
刹那、師走の街の喧騒が遠ざかる。
ごくごく短い時間だったが、彼の伊達眼鏡のフレームが頬にひやりと冷たかった。
2歩離れた彼は、冬の陽よりも眩しく笑って、小さな声で言った。
「あんまり見てんじゃねェよ。オマエの顔見てるとキスしたくなるんだよ!」
イタズラっぽく笑う体を引き寄せて、お返しとばかりにキスを返す。
そうして耳元へ、彼にだけ聞こえる声で。彼しか聞いたことのない声で。
「…したくなるのは、キスだけ?」
囁いたら、真っ赤な顔で殴られた。