「だ・か・らっ・て!」
孫策の顔の前にスッと手を近づけたかと思うと……ビシッ!
「!!!!ってェ〜〜〜〜〜〜〜!!!! なにするんだよォッ!」
飛びのいて、鼻を手でおさえる。
呂範のデコピンが、もろに鼻に入った(鼻だからデコピンとは言わないかもしれないが…)。ちなみに彼のデコピンは江東でも五指に入るほど痛いという話だが…話の出所は定かではない。
ともあれ、そんな話のあるデコピンをくらい、あまりの痛さに涙目になっている。呂範はそんな孫策を見下ろしている。…怒れるオーラが、見える。色であらわすなら、きっと真紅だ。
「オマエは自分の腕を頼りにしすぎだ!」
「でもさ―――――……」
「言い訳するな」
ふたたびデコピン。今度はオデコにクリティカルヒット。
鼻に続き額もおさえて、涙目。
そして孫策による逆襲。
「いちいちデコピンすることないだろ! いてェんだよ、子衡のデコピン!!」
「痛くなきゃ仕置きにならんだろうが。叱られてる奴が逆ギレするな! オマエにはそんな権利はない!」
「〜〜〜〜………」
呂範の剣幕に、しゅん、とうなだれる。
うつむいて頬をふくらせるあたりは小さな子供と大差ない。いやむしろ犬と言うべきか。すごくかわいい表情だし(と、本気で呂範は思っている)、できることなら抱きしめて頭をがしがし撫でてやりたくなる衝動もたしかにあるのだが、ここで許すと今叱っている意味がない。シツケとはそういうものだ。
加えて、孫策が仕事放棄したのは、今月に入って五度目。まだ今月は十日も過ぎていないのに!
心をぐっと、鬼にする。しっっっかり釘を刺しておかないと、聞きゃしねぇんだ、このイノシシ君主は!
息を吸いこんで、低い声で。
「叱られたくなければ、もっと自重しろ。おまえは孫家の頭領という以外にも、俺たちの主君でもあるんだからな。いつも言われているだろう」
それはもう、辟易するくらいに張昭を初めとして先代から仕えている家臣団に言われまくっている。耳タコだ。
「俺はおまえが反発したくなる気持ちもわかるし、まだ若いから遊びたいという気持ちもわからんでもない。だが、ソレとコレは話がまったく別だ。
おまえは孫伯符という一青年である前に、君主なんだ。
君主を無くした家臣や兵がどうなるか、一番よく知っているのはおまえだろう」
「……………」
「あんな悔しい思いを、おまえはまた俺たちにさせるつもりか?」
「……………」
ぐ、っと拳をにぎりしめてうつむく。
袁術のもとで甘んじた日々。それは同時に屈辱にまみれた日々でもある。
いつか這い上がることだけを考えつづけた日々。
…ついてきてくれた連中にも、辛苦を舐めさせた。
自分一人なら耐えられる。
だけど。
……それだけは、嫌だ。
絶対に、嫌だ。
残された者の悲しみを、オレは知っている。だから、嫌だ。
孫策の内心を知ってか知らずか、察したのか察してないのか、呂範は声色をやわらげた。
「…そのへんをもう少し理解して自重しろと、俺は言っているんだ」
「…………」
無言のままの孫策の頭を、ここでようやくぐしゃぐしゃと乱暴になでる。
そうしてさらに低い声で、真顔で。
「…あんまり好き勝手してこっちの気持ちを考えないなら、俺は仕官先を変えるからな」
それだけ言って、室に孫策を残して出て行く。
「! あ…ッ、子衡…、…」
呂範の後を追うことだけは、出来なかった。
室を出てすぐに、周瑜が待っていた。
呂範と目が合うと、すぐに拱手して一礼する。江東一の美丈夫は、そんなさりげない姿すら舞の一手のように優雅にこなす。
招かれて、空いた室に入る。扉はもちろん閉める。
「ありがとうございました、子衡どの」
微笑する周瑜に手をぱたぱたと振る。
「なんの。礼には及ばんさ。皆が困っているのは事実だしな」
お互い苦笑し合う。
周瑜はハクが強めの美形だが、無表情以外の時はとても優しい表情をする。とはいえ、こんな表情を見られるのは少数の人間だが。
「結構キツめのことを言ったのですか? 伯符がすぐに追いかけてこなかったところを見ると」
「まァね。…あんまり無茶やってると俺はここを出て行くぞ、って言ってやった」
「それは……」
周瑜、絶句。……めずらしい表情だ。美周郎のそのレアな表情に見惚れるでもなく、呂範は悪びれた風もなく笑う。
「それくらい言わないと、しばらくも大人しくしないだろう? ま、俺は当分の間は’怒ってる‘姿勢を崩さないつもりでいるから、フォローの方は任せるぞ」
簡単に言うが、フォローするのも大変な気がする。いや、絶対大変だ。何しろ、
「……伯符、しばらく立ち直れないんじゃないですか? あいつ…好きな人に嫌われるの、すごいダメなヤツですから…」
「一番効くセリフだったか? まァ、わかってて言ったんだけどな」
「わかってて言ったんですか…すごいですね、子衡どの」
ため息ひとつついて、感心。
普通は言えない。伯符のことを好きならなおさらだろう。
とはいえ、感心されたほうはあっさりしている。
「伯海どのもこんなもんだろう?」
「ああ…あの方も、締めるところは締める方ですね…」
ちょっと遠い目で、伯海という人の姿を思い出す。
伯海とは愈河のことで(孫河ともいうが、本人はどちらで呼ばれても気にしないらしい)、孫策の父方の叔父だ。
きっぱり・さっぱり・すっきりの権化のような人で、曲がったことが大嫌いな、曲がれない…というよりは曲がらない人だ。そのわりに清廉潔白じゃないあたりが、孫策がなついている所以だろうか。
「でもあの方は伯符の身内だから、伯符の元を離れるようなことはないじゃないですか。厳しくてもやっぱり伯符のことかわいがってらっしゃいますし」
「そうだな。まーでも小言は子布どの・仲翔どのの専門だし、甘やかすのは他の連中がやってくれてるだろ? ひとりくらいこーゆーやつがいてもいいんじゃないか? 公瑾はわりと上手に、アメとムチを使い分けてるみたいだけどな。
それでも伯符は俺たちのこと好きだから傍においてるんだろ」
最期の一言に苦笑。呂範は本当に、まわりをよく見ている。伯符を良く掴んでいる。
にやり、と呂範が笑う。その笑いに、今考えていたことを見透かされたような気がしてちょっとあせったが、別に呂範にはヒトの思考を読む能力があったわけではなかったらしい。
「あいつの一番大好きなおまえがいるから、大丈夫だろ」
「そうでもないと思いますけど…でも、安心しました」
「は? 何が?」
「子衡どのも伯符のことが大好きなんだなぁ、って。だから伯符の元を去ることは絶対無いなと確信しました」
今度は呂範が苦笑した。
「当たり前だ」
言いきるあたりが呂範だ。張昭が小言の権化なら、彼は自信の権化か?
「だいたい、そんなのは俺だけじゃなくてみんなそうだろ。伯符に愛されまくってる連中ばっかりなんだから」
微笑して、答える。
「ええ、そうですね。
あぁ、わたしも子衡どののことは好きですよ。なんていうか…兄のように思っています。伯符もきっと同じだと思いますよ」
「ありがとよ。俺もおまえらのこと弟みたいに思ってるさ。
……じゃ、そのおにーちゃんからお願いだ。伯符のフォロー、よろしくな。俺はまだ予算作成の仕事が残ってるから、行くよ」
手をひらひらさせて去って行く。
周瑜はその背を微笑して見送った後、伯符がまだいるはずの室へ向かった。
呂範の言葉どおり、静かな日が続いた。
あの説教以来、二週間あまりの日が流れている。その間にも、孫策はまじめに政務や兵錬・雑務をこなしていた。……一度も脱走することなく、である。
「おかげで最近は静かなお茶の時間を過ごせていますよ」
穏やかに微笑して人数分の茶を入れているのは張紘。
普段のティータイムには、張昭と虞翻の怒りながらの愚痴を聞かされまくっているらしい。もっとも、穏やかな彼はそれをただ聞き流して微笑しているだけらしいのだが。
茶を受け取った周瑜が一息つく。
「たまっていた仕事も大分、片付いたみたいですね」
「おかげで子布も上機嫌でしたよ」
「いつもなら三日ともたんところだが…今回に限ってえらい大人しいな、伯符さまは」
受け取ったジャスミンティーに口をつけたのは魯粛。
彼は孫策が「さま付け呼ばわりはヤメロ」というのも聞かず、「君臣の礼を尽くすのに公私混同はいかんでしょう。公瑾とて公の場ではさまづけしているんですから」と、通している。
「それが君主としては普通なんだと思いますけどね」
周瑜が苦笑する。
本日のお茶会参加者は周瑜・呂範・呂蒙・魯粛の四人。主催は張紘。
張紘がいれる茶は格別おいしいと評判で、彼主催のお茶会はいつも人気が高く人が多い。今日はたまたま時間の空いたメンツがこの周瑜以下の四人だったのだ。
「ま、あんなこと言われれば、いくら伯符でも大人しくならざるをえないと思いますよ。ねぇ子衡どの」
「お、今回は子衡の功績か」
「一体どんなことをおっしゃったのですか? おかげで狩にも行けなくてつまらん、って子義どのも愚痴ってらしたのですが」
興味津々な視線をよこしているのは呂蒙。彼自身も狩に連れて行かれるメンツの一人なので、きっと暇を持て余している(?)ひとりに違いないのだが。
呂範は手短にあの時言ったことを説明する。
周瑜以外、全員感心したような、驚いたような変な表情をした。
「は〜〜〜〜〜…そりゃあたしかに、大人しくもなるわいなぁ…」
「よく言えましたね…子衡どの…」
「たしかに、主公にはいちばん効く言葉かもしれませんね…子布にはとても言えないでしょうねぇ、それは…」
呂範が胸を張る。
「付け加えるなら、俺はあれからまだ一度もまともに伯符と顔を合わせてないし、仕事以外でしゃべってもないぞ」
その言葉に二度目の驚き。
「一回も?!」
「マジか、そりゃ?! そこまでやるかフツー?!」
「てゆーか、よく耐えられますね子衡どの!!」
「わかった! おぬし実はサドじゃな!」
「……あんたら、好き放題言ってますね…。…でも、」
手をひらひらさせて、お茶を飲み、あっけらかんと答える。
「そこまでしなきゃ、効かないでしょ」
「そらまぁそのとおりじゃが…」
「……俺には耐えられません」
「どっちの立場が? 主公の? 子衡どのの?」
「両方ですよ」
「武官連中は百%そうじゃろうて。主公のファンクラブみたいなもんじゃからな。
か―――ッ、ある意味、公瑾よりすごいなおぬし!」
「子敬、それはどういう意味かな?」
「美形が凄むな。恐いわい。そして細かいことは気にするな。胃に穴があくからな」
魯粛の言葉に、溜息を小さくついてあえてノーコメント。
「……。ま、子衡どののおかげで、伯符の愚痴がすべてわたしのところにくるんですけどね…」
「主公の愚痴の原因を知っているのに知らないフリをして愚痴を聞いていらっしゃるのですか?」
「ぁあ…そうじゃなきゃ、効果がないから」
「そーゆーとこが公瑾のすごいとこじゃのう」
腕を組んで何度もうなずき、感心してみせる。
その時、茶を飲んでいた呂範が小さく「あ」と言った。
「どうしたのですか、子衡どの」
「…仕事、残ってたの思い出した」
「え? 来月分の予算編成は終わったんじゃなかったんじゃないのか?」
「別の仕事ですよ。水路工事するでしょ? あれの予算捻出! スッカリ忘れてた!」
あわてて残りの茶も飲み干し(残すなんてもったいない真似はできない)、あわただしく仕事部屋に戻ってゆく。
残りの四人は仕事人間の呂範に感心しながらも、先ほどの話題に花を咲かせつづけた。
その日のお茶会は、夕暮れ時まで続いたという。
日も暮れきった深夜12時頃。
呂範はこの時、帰宅途中にあった。
(は――――、…疲れたァ…)
月に向かって背伸び。背中の筋がのびて気持ちいい。
お茶会から仕事に戻ってから今まで、呂範は水路工事の予算をどこから持ってくるかに心血を注いでいた。
最近降った大雨で、水路の一部が切れたのだ。それを修復する工事。もっとも、予定外の工事に予算などつけていたはずもなく、知恵を総動員して部下らとともに満足がいくまで考え合った。
結局は決まらなかったのだが…あまり遅くなっても明日の仕事に支障をきたす。自分一人ならともかくも、部下にまで影響が出てはいけない。そう考えて、部下たちより先に帰ってきたのだった。上司が帰らねば、部下も帰りにくかろうと考えてのことである。
帰宅すると、家人がすぐにやってきた。
「孫将軍がお待ちです」
「なに?」
「奥の客間にお通ししています」
「わかった。すぐに行く」
10分で着替えて、孫策の待つ客室に向かった。
(……何の用だ?)
いや、なんとなくならわかっているのだが…(文句を言いに来たとか、しびれがきれたか?とか)。
窓格子からちらっとのぞけば、孫策の前にはすでにいくつかの料理が出されていたが、ハシが進んだ様子は見られない。料理がマズかったのだろうか。だとしたら料理人を厳しく注意しなければならないな、と思いながら室内に入る。
口調は相変わらず、君臣の間柄とは思えないほどの砕けたもの。
「ずいぶん待たせてしまったみたいだな。来るとわかっていればもっと早く帰ってきたんだが…。
料理、まずかったか?」
「………………」
答えず、ハシを置く。
うつむいたまま、膝に置いた手をにぎりしめる。
(うん?)
いつもと様子が違う。
(……そんなに料理、まずかったかな…?)
なんだかものすご――――く、切羽詰ったような雰囲気が伝わってくる。
「なんだ? どっか体の具合でも」
悪いのか、と聞こうとした言葉は遮られた。
「子衡」
「ん?」
「…、あのさ…聞きたいこと……あるんだけど…」
思いきって話を切り出してきた割には煮え切らない態度。
孫策の正面に座る。うつむいてはいるが、やっぱり深刻な顔をしている。
沈黙が少し、続いた。
「……………」
「………おまえな、そこまで言ったら言いなさい。言わなきゃ俺にはわからんぞ?」
呂範のモットーは「以心伝心なんか嘘っぱちだ! 思ってることは表現しなけりゃ伝わるもんか!」だ。
いつだったかそのことを魯粛に話したら、大爆笑しながら同意してくれた。もちろん、言葉にしなくてもわかる気持ちもある、というのはわかっているし、否定するつもりもない。
「…あのさ」
「なんだよ?」
「……俺のこと………」
振り絞るように、ひとことひとこと吐き出す。苦しそうに、ハズカシそうに。
(…なんか、告白されてるみたいだ…)
不謹慎ながらも頭の片隅でそんなことを考える。
「…ほんとうに……、…嫌いになった…?」
「……はァ?」
ここに魯粛がいたら、間違いなく酒を吹いていたに違いない。それは孫策の言葉に、ではなく。
孫策の表情もだが…呂範の表情。
……画像でお見せできないのが、非常に残念である。
とはいえ、孫策にとってはそれどころではない。
「だって…子衡、アレから仕事の時以外は顔見せないし…ッ、目ェ合ってもすぐにそらすしッ…一緒に飲んでくれないし…しゃべってくれないし……!」
「…………」
だってそれ、ワザとだし。
内心の爆笑を、必死にこらえる。
(やっぱ…伯符、かわいいよ!!! なんて可愛いんだコイツ!!!! も、サイコー!!! だから止められねーんだっつーの!!!!!)
今すぐ孫策を抱きしめて床を転がりまわりたい衝動にかられるが、無理矢理押し留める。‘厳しいオニイチャン’的には、それはまずいから。
「だから…ッ、ホントに、俺ンとこから…いなくなるんじゃないかって…思って……どうしようって…俺、そんなんイヤだし…! でも子衡、本気で怒ってたから………」
うつむいた孫策は、今にも泣きそうな顔。
それでも呂範はあえて冷静に。
「…で? なんでウチに来た?」
「だから…、行かないで欲しいんだ! 子衡が他のヤツに仕えて…俺じゃないヤツが子衡の君主で、なんて…絶対イヤなんだよ! 子衡にいて欲しいんだ…!」
「…………」
「子衡がよくても…俺がヤなんだよ…」
握りしめられた拳は、よほど強い力で握られているのだろう、呂範が見てわかるほど震えている。
この時点においても呂範は冷静な表情を決して崩さなかったが、内心の崩れようは素晴らしかった。
(オイオイオイオイ、これはゼッタイ告白だろ告白!!!! オマエ、そんな顔してそーゆー情けなさげなしゃべり方でそーゆーこと言うなっつーの!!! 聞いてるのが俺だけでよかったなオイ!!
ちゅーか、めちゃめちゃカワイイんだけどコイツ!!! どうにかしてくれよ!! いや、どうもしなくていいか? どうしてやろう?!)
どうにかしてほしいのはアンタだ呂範。
…でもこの男のすごいところは、こんな本性を誰にも悟られていないところかもしれない。ある意味、周瑜より完璧なポーカーフェイス。
小さく咳払いして、腕を組む。
孫策は眼の端をこすっている。…本当に、自分が好きな人から嫌われるのがダメらしい。呂範の作戦は大成功だったわけである。
(……10日以上過ぎたし? そろそろ許してやるかな…これ以上いぢめると、コイツ本気で泣くだろうしな…)
とはいえ、甘く許してやる気などサラサラないけれど。
「…いてやるよ」
「え…ッ?」
がば、っと顔をあげた孫策と目が合う。不敵な笑いで見返した。
「おまえの傍にいてやる。おまえに仕えてやる」
「子衡…ホントに?!」
「ただし!」
嬉しそうな顔をした孫策の前にビシッ、っと人差し指を突き出す。
「今度無断脱走したら、その時こそ俺は辞職させてもらうからな! 言うまでもないが、本気だ。俺の本気は、わかってるな?」
コクコクコクコクと、小さな子供のように何度もうなずく。そして、
「よかった…! 子衡、ありがとう!!」
最高の笑顔で呂範に抱きつくのだった。
この時の呂範の内心は……彼の名誉ために書くのは控えさせていただこう。
孫策の背に手を回し、子供をあやすように抱き返してやると、
「話しは終わったな? すっかり料理は冷え切ってしまったが…新しくもってこさせるとして、食べよう。どうせオマエのことだ、腹減ってるだろ? さっき食べてなかったみたいだしな」
「…よくわかるな、子衡」
「おまえのことだったら大体なんでもわかるんだよ、俺様は」
余裕で笑う呂範を、孫策は「オトナだなぁ…」と思って感心したが、この時の彼の内心を知っていたならそんなことはゼッタイに思わなかっただろう。
その夜のふたりきりの宴会は暁時になってもなお続き…みごとに二人して朝議に遅れ、張昭の久々の雷を仲良く食らったのである。