百合が舞う先まで











「Ah……何か眠ィな」

「長旅でお疲れなのでしょう。某は下がります故、どうぞお休み下さい」

「あぁ、sorry…」



そう言ってそ知らぬふりをして立ち上がる。
最後に軽く挨拶を投げ掛けるともう返事はなく、振り返れば褥も延べず眠りに落ちた竜が在った。
月の光が項の白さを際立たせて大層美しい。

俺は彼の傍らへ歩み寄り腰を屈め、その髪を撫でる。



「政宗殿……どうか、卑怯な俺をお許し下さい」



そうして俺は政宗殿へ覆い被さり、軽く唇を吸った。











竜が欲しかった。
心の奥から慕っている。
だからこそ気持ちを伝え拒絶されるのが怖くて、言えずに居た。
男から好きだ何だと言われて嬉しがる御仁ではないことぐらい知っている。
折角武田と伊達で同盟を結び、笑って酒を飲み交わせる仲になったというのに。



「言えるわけがない…。俺が頭の中で、ひいては現実でまで…何度も貴方を汚しているかなんて」

「…んっ……」



彼が戦略を話し合いに甲斐へやって来たある日、俺は二種の薬を使った。
体には無害、だが強力な睡眠薬を杯へ塗り。
潤滑作用と少しの催淫作用のある薬を、俺を迎え入れる箇所に。
初めて入る竜の中は熱くて眩暈がした。
眠っていてもその唇からは苦痛の声や艶声が奏でられ、夢中で体を貪った。

綺麗に処理をし、翌日には何事も無かったかのように笑顔を向けた。


それから彼が甲斐へ来る度回数を重ね、今夜はもう何度目かの行為だった。
下だけを寛げ自身の先端へ懐紙を被せてやり、中へ薬を塗り込む。
指先が前立腺を掠める度に眉尻が下がり体が跳ね、無防備な声があがる。



「あ!あ、う、…っんああぁ―――ッ…!!」

「…段々達するのが早うなっているようだ」



精液を受け止めた懐紙を開き、彼の味を確かめるようそれをぴちゃりと舐める。
苦い。
けれども何処か甘い。
俺が抱える想いのように。


充分に入り口を解した後、己の前を寛げて雄を取り出す。
脚の間へ腰を割り入れ彼の痴態を見ただけで限界まで膨張したそれを尻穴へ宛がう。
貴方の中を探りながら淫らな声を聞いただけで俺はこんなになる、と知って欲しい。
本当は全てを伝えたい。
やはり侮蔑の眼を向けるのだろう。
夢の中の貴方は恥らうように頬へ朱を上らせるのだが。

雄を内部へねじ込むと彼の四肢が強張った。
それと同時にきゅう、とそれを締め付けられる。



「あ、あぁ…っ……!」

「…ッく……、…」

「……う…あ、ァ…」

「苦しいですか…?俺も苦しゅうございます、このような想いを抱え…罪を重ねて」

「っ、…っあ…ぅ……」



薄らと目尻へ浮かんだ涙を舐めとり、悩ましげに表情を歪める彼を正面から抱き締めて静かに揺さぶる。
小さな水音と、互いに衣を纏ったままが故の衣擦れの音が響く。
細かな襞に包まれてとても気持ちがいい。



「は…ン、…ぁ……」

「お可愛らしい…、政宗殿」

「あっ、ァ、ん…は……!」

「心より…お慕いしています、……政宗殿…政宗殿ッ………!」



達する寸前で雄を抜き出し起き上がって、先程の懐紙の内へ精を放つ。



「は……ッ…、………」



息を落ち着けながら彼の面を見れば、生理的なものであろうが頬へ涙が伝っていた。
上体を屈めてそれを舐めとる。














俺は明日にはまた知らぬふりをするのだろう。

いつかは気付かれてしまうかもしれない。




けれどいつかが訪れるその時まで夢を、貴方が俺の物だという夢を―――――みさせて下さい。






























クロサナ(黒真田)になる予定だったのですが、あれ?
久々の戦国モノな気もします。



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