〜去年までのあらすじ〜

幼少の頃読まれた西洋の本で、政宗様は三太苦労すの存在を知った。
三太苦労すとは、何でも師走の二十四日の夜、良い子供の枕元へ貢ぎ物を置いて回っている野郎のことらしい。
確かに名前の通り、苦労の多そうな野郎だ。
しかし政宗様の元へ貢ぎ物がされたことはなく、ご自身に三太が来ないのは自分が良い子ではないからだと、政宗様は大変落ち込まれた。
三太の野郎……政宗様に貢ぎ物をしねぇとはどういうことだ! 前出ろ、前だ!! ……と知らない野郎に怒ってみても仕方がないので、この小十郎が密かに三太の代わりをすることにした。
政宗様は「Ha!coolじゃねぇモン置いていきやがって!」と言いながらも、毎年届く貢ぎ物に大変お喜びになられた(小十郎にはわかります)。
特に、苦労して手に入れた西洋の葡萄酒を貢いだ時は大変満足げだった(小十郎は嬉しゅうございます)。
今年で政宗様も十九になられたが、小十郎にとって政宗様はいつまでも可愛い子供なことに違いはねぇ。
ということで、今年は上等の反物を手に入れ、抜き足差し足忍び足で政宗様のお部屋の近くまでやって来た。
襖のすぐ向こうは政宗様の部屋だ。
薄く開いた隙間から、中を覗き見る。
だが、そこには………。





「政宗殿…、欲しいものを言うて下され」

「んっ!へ、んた……死ねっ…!」

「如何したのです?くりすますとは、贈り物を贈り合う日だと聞いたのだが…要らぬのですか?」

「んなの……いつも通り、に…ッ…」

「いつも通りに、何でござろう?」



褥の上、大きく脚を開かされ、股の内を宿敵であるはずの真田幸村の手にまさぐられる政宗様が、居た。
妙に粘着質なくちゅくちゅという音が俺の耳に届く。
真田の手が前後に動く度、長着が纏わりつくのみの政宗様の肢体は跳ね、唇からはもどかしげな声が漏れていた。
切なげに、そして悔しげに眉を寄せながらも、その表情に浮かんだ快感の色は濃かった。
目と口の端からは透明の液体が零れている。



「うぐっ……も、ゆき…むら……」

「…既に三度も放たれたのに、また斯様にはしたなく勃起をさせて」

「なっ……それはアンタ、が……うあっ!」



真田の手の傍らでは、中を突かれる動きに合わせ政宗様の魔羅がぶるぶると揺れている。
そこから少し視線を横へ移動させれば、政宗様の腹には白い液体が多量に散らされていた。
それを指先で掬い、真田はふと口許を笑ませる。



「……政宗殿の放たれるものは、見た目は雪のようにお美しいのに…触れればとても熱く濃く、とろとろとしていて…淫猥だ」

「馬鹿……んな、ワケ…!」




美しいのは当たり前だろうがぁああああ!
それに淫猥なんて安い言葉で片付けるんじゃねぇええええええええ!!
…と怒鳴りながら出て行きたいのだが、どうも体が動かない。
おかしい、何故か声も出ない。



「さあ、この可愛らしいおまんこで…何を食べたいので?」

「う……ン、…クソッ…!」



早くあの野郎を止めなければ。



「言うて下され……某の、可愛い政宗殿」



政宗様に黒歴史がぁああ……!



「後で、覚えてろよ…っ……」

「はい!忘れませぬ!」

「…Shit………アンタの、ちんちんを…俺の、…ま「はいはーい右目の旦那、……なーに出歯亀してんのかな?」



丁度そこで聞こえたのは、武田の忍の声だった。
気配もなく傍らへ現れ、政宗様の部屋から漏れる明かりだけが頼りの薄暗い中、気付けば俺の顔を覗き込んでにこにこと笑ってやがる。
そうか、動くに動けないのは―――この忍の所為だったのか。
俺は辛うじて自由になる眼球を動かして、そちらを睨み付けた。



「あぁ、ちょっとしたお薬使ったから暫く動けないし喋れないと思いますよ」

「いや〜……右目の旦那に、主君の性生活覗き見する趣味があったとはね」

「真面目そうな面して、意外に変態なんですね」



違ぇええええええ!
たたっ斬るぞクソがぁああああああ!!



「……でも、あの二人のえっちって……えろいよね」

「真田の旦那も可愛い顔してあんなことこんなこと言ってるし」

「竜の旦那も……、虐められて何だかんだ気持ち良さそうだし」



んなワケあるかぁあああああ!!!
…と思いつつ襖の隙間へ視線を戻せば、そこには真田を脚の間に迎え、絶え間なく揺さぶられながら甘い声を漏らす政宗様。
その表情は羞恥に歪んでいるが幸せそうでもあって、腕は真田の首に回されていた。



「はぁ、っ……く…幸村……!」

「っ政宗殿…中、気持ち良う、ござりますか…?」



真田にそう問われれば、政宗様は躊躇を交えながらも、こくりと一つ頷いた。
………政宗様ぁあああああ…!
くっ……今宵、小十郎の出る幕はないということですか……。
耐え切れず俺がそこから視線を逸らすと、また目線の先には武田の忍の顔があった。



「俺様も、あれ見てたら微妙に興奮してきちまって。
……だから…ね?右目の旦那……」



首筋をねっとりとした何かが這う感触。
それが忍の野郎の舌だと気付くのには、時間はかからなかった。
ぞわりと妙な悪寒が俺の背筋を走る。
まさか、まさかこれは。



「……前々から俺様、旦那のこと…気になってたんだよね」

「……っ…ッ……!」

「え?何なに旦那も?嬉しいな〜」

「………!?」



着物の中をまさぐりながら、忍は再度俺の耳へ唇を近づけた。



「…じゃああっちで…俺様達も盛り上がっちまおうぜ?」

「………!?!?!?」



…っざけんなぁああああああああああ!!!
という叫びも結局声になることはなく俺は忍に抱えられ、人気の無い奥の間の方へと連れて行かれる。
転がった反物の向こうから一層甲高い嬌声が聞こえた気がしたが、その時の俺には、それどころではなかった。






おわり






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