※アルプスの少女を汚したくない方は読まない方がいいかもしれませぬ。
日本アルプスの青年政宗
あるところに、政宗という隻眼の男の子が住んでおりました。
政宗は幼い頃病気で片目を失いましたが、それにもめげず鍛錬に励んで町でも有名な腕っぷしの青年に育ちました。
しかし彼はその片目を理由に母親に疎まれたりなどの家庭の事情が色々と複雑で、十九歳の時山に居るおじいさんの小十郎のところへ預けられる事になりました。
簡素な蒼の着物を身に纏い少しの荷物を携え、政宗は独り見知らぬ土地へ降り立ちました。
「Hey小十郎、これから世話になるぜ」
「政宗様……喜んで」
山の麓の町まで迎えに来た小十郎は、今まで多くの苦労をしてきた政宗を快く受け入れました。
そして山小屋への道を登りながら、地理や近くの住人を紹介します。
「あの川では魚がとれます。あの林では猪が。……あと、あそこに見える輩には関わってはなりません」
「?」
小十郎は山羊の群れを目線で示し、忌々しげに舌打ちをします。
山羊の群れの中心に居るのは橙色の髪の青年です。
どうやら山羊飼いのようです。
青年は小十郎に気付くと、にっこりと微笑んで投げキッスをしました。
すると小十郎の顔は見る見るうちに真っ赤に染まり、青年へ背を向けすたすたと早歩きで小屋へ向かい始めました。
政宗はおじいさんの遅咲きの春を感じながら、敢えて何も言わずその後に続きました。
「ここが我が家です。狭苦しいところだが…どうぞお寛ぎ下さい」
「Thank
you……っと。ありゃ何だ?」
政宗が奥の畳の上で丸くなって寝ている、簡素な紅の着物を身に纏い茶の髪から耳を、尻の上から尻尾を生やしている物体を指差します。
その耳と尻尾はふさふさの茶の毛に覆われており、非常に政宗の接触欲をそそりました。
「あぁ、あれは犬の幸村です。脚が速いので狩猟をさせており…しかしどうも無愛想でしてな。生意気な野郎です」
「Humn……」
政宗は幸村へひたひたと歩み寄り、そのふさふさの毛の生えた耳をそっと撫でました。
すると幸村はカッと目を開き、一瞬睨みつけるように政宗を見遣りますが───。
「………わう…」
「…な、何だよ文句あんのかよ…」
「わんわん!」
「うわっ!…はは、くすぐってぇ」
幸村はすぐにぱあっと満面の笑みを浮かべて政宗に飛びかかり、その頬をぺろぺろと舐め始めました。
いつもは無愛想な幸村が政宗に懐いたことに、小十郎は驚きを隠せません。
飼い主の己に懐かない幸村が初対面の相手に懐いたことが多少面白くはないものの、大切な政宗の心の癒やしになるのならと溜め息を吐いて頬を緩めました。
「おっと……小十郎はそろそろ畑の世話をしてきます。政宗様は長旅の疲れもありましょう、ゆるりと休んでいて下さい。布団は敷いてあります」
「あぁ、ワリィな」
幸村と戯れる政宗を背に、小十郎は鍬を手にして小屋を後にしました。
残された政宗は長旅の疲れを癒やすため、幸村から離れ小十郎の言葉通り布団へ足を向けます。
しかし。
「さてと、一眠りす……What!?」
政宗の体がふわりと宙へ浮かんだではありませんか。
政宗の体をいわゆるお姫様抱っこをしている主は、何と犬の幸村です。
政宗が混乱している間に幸村は布団へと歩み寄り、そっと政宗の体を横たえました。
「困惑なさっているお顔も、大変お可愛らしい……」
「ちょっ……アンタ、……っん…!!?」
幸村は先程浮かべた満面の笑みではなく、雄を感じさせる柔らかな笑顔で政宗の上へ覆い被さります。
そして怯んだ政宗の唇をすかさず奪いました。
ちゅっ…ちゅく…と暫し執拗な口付けが繰り広げられ、漸く唇が解放された時には政宗の隻眼はとろりととろけておりました。
「政宗殿……貴殿のことを好いてしまいました」
「………What?」
「斯様に美しくも凛々しい御仁に出逢うたのは初めてだ。内面の美しさが滲み出るのは、誠止められぬものなのだな」
「な、にを…」
「…政宗殿。どうか、某のものに……」
「…んなの、いきなり言われても……っあ!?」
「しからば、体ごと某の虜にしてみせようぞ」
「ちょ、ゆきむ……stop!!ン、っあ……!」
幸村は笑みを浮かべたまま尻尾をゆっくりと揺らしながら、政宗の首筋へ顔を埋めました。
そして数時間後。
「政宗様、ただいま戻り…………政宗様?」
「あ、え、よ、よう小十郎!幸村と遊んでたら眠気飛んじまってよ!」
「?左様ですか…」
そこには慌てて着物の襟を合わせる政宗と、その膝枕で悠々と眠る幸村の姿があったといいます。
めでたしめでたし。
おしまい。
タイトルから察するアニメに加えスマスマのPちゃんもちょっと混じっているトリプルパロです。
パロ大好きだ…!!
幸村は小十郎の前ではわんわんしか言いません。
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