小鳥のさえずりが鼓膜を揺らす朝。
自然と政宗が意識を覚醒させると、腕の中には温もりがある。
いつも自分は寝ている時は相手に包まれるだけ。
それが今日は知らずの内に己からも抱きついていたのか。
少々の照れを覚えながら、腰を摩る。
常ならば腰に纏わりついている倦怠感が、無い。



「Ah〜……何か今日は腰が軽ィな。……って、………俺…?」













ダテとサナダの7日間 前編















政宗が瞼を上げれば、すぐ眼前に在ったは見慣れた己の顔。
夢でもみているのだろうか、とその己の顔へ手を伸ばす。
そして頬を指で挟み、思い切り引っ張ってやる。
すると。



「いだっ…いだだだだ!!!」

「…痛くねぇ……やっぱ夢か」

「うぅ……何事ですか、政宗ど………の?」



己の頬へ痛みが走らない故に勝手に自己完結を決め込み目を閉じるのと入れ替わりに、今度は目の前の己が目を覚ます。
何やら煩いが、どうせ夢ならば放っておこうと再度まどろみ始める。



「……何故某が?あれ?某は、政宗殿と…」



しかし目の前の自分は恋人の口調で喋っている。
何かがおかしい。しかしまぁ、偶にはこういう変な夢もあるだろう。
頬を触られ、自分がしたのと同じように抓られる。



「いっ……てぇな!!離しやがれ!!!」



強い力で抓られればこちらも目を覚まさざるを得ず、政宗は怒り露わに眼を見開き目の前の己の腕を掴み上げた。
すればその己は腕を掴まれたままぽかんと口を開き、こちらを見ている。
そしてもう片手で自分の右目の近辺や頬をぺたぺたと触っている。



「政宗殿…なのですか?」

「Ah?」

「某が政宗殿で、政宗殿が某で…」



ぶつぶつと呟きながらその目の前の己は、こちらの腕から抜け出しベッドの傍らのチェストを開き何かを探している。
政宗はぼうっとしたまま起き上がりベッドの上へ腰掛け、後頭部をがしがしと掻きながらその様子を見守る。
裸の背中に髪の毛がかかりやけに鬱陶しい。
視界が広い。
己のものではない紅色のトランクスを穿いている。
自分の声が幸村のものに聞こえる。

政宗は段々と違和感を覚え始めた。
そしてもう一人の己が鏡を持って来て隣に座り、自分達の前へ鏡を翳した時それは確信に変わった。



二人の中身は、入れ替わってしまっていた。




「なっ………冗談だろオイイィイイイ!!!?」





















政宗の容貌をした幸村と、幸村の容貌をした政宗は向かい合ってベッドへ座り、双方眉を寄せ腕を組んでいる。
そして神妙な顔つきで見つめ合う。



「何故、某が政宗殿に……」

「参ったな。これじゃ学校行くどころじゃねぇ」

「……某の声で政宗殿の言葉遣いだと変な感じがしますな」

「…そりゃあこっちの台詞だぜ。某とか言うな」

「はは、そちらこそ言葉の乱れを直して下され」



通常の思考でいけば深刻な事態のはずではあるもバカップルである二人にかかれば次第に雰囲気には甘さが滲んでいく。
目の前に在るのが自分の顔であろうと、その中身が想い人と考えれば好きだという気持ちに変わりは無い。
寧ろ己と相手が溶け合っているような状況に一種の幸福感さえ覚える。

どちらからともなく顔を寄せ、瞼を下げて唇を重ねる。



「……は、…ッ…」

「ん、…っンン……!」



己の身体と口付けていると思えば妙な気分ではあるが、舌の動きはやはり相手のもの。
幸村は政宗の舌へ己のそれを絡ませ唇裏を擽る。
しかしどうやら幸村の体の性感帯は政宗のものとは違うらしく、政宗はいつものような快感を得られない。
代わりに己がいつもされるように幸村の同じ箇所を舌で辿ってやると甘い鼻声が漏れる。
幸村は予想外の悦感に驚いたよう目を見開き唇を離そうと相手の肩を押し遣るも、いつもやられてばかりの政宗は仕返しと言わんばかりに身体を力強く抱き締めて咥内を貪る。

くちゅくちゅと唾液を絡めながら政宗が一層舌の動きを細やかに彼の唇を蹂躙してやれば、段々と隻眼はとろけ押し返そうとした手の力も抜けていく。
その掌が政宗の肩を軽く掴むだけに変わったところで、ゆっくりと唇の間に距離を持たせる。



「随分気持ち良さそうじゃねぇか、幸村。kissだけで目ぇ虚ろだぜ?」

「……はぁ…政宗殿の体が、破廉恥だからだ……」



いつもの幸村とは全く違う反応に、政宗の胸は高鳴る。
目許は薄く赤らんでいて、もう吐息が上がっている。
体を見ると早くも胸元では乳首がツンと勃っているではないか。
身体は己であっても、中身が違えば何だかそれさえも可愛い。
もしかしたらこれはいつも女役に回らされている己にとってまたとないチャンスなのかもしれない。

政宗は幸村の所有の証が幾つも刻まれている首筋へ手を這わせ、胸へと指を伸ばす。
突起を軽く弾いてやればビクリと肩が震える。



「…なぁ幸村。ヤッた後に入れ替わっちまったんだ。もう一回ヤりゃ元に戻るかもしれねぇぜ?」

「ぬ……、まぁ…そうかもしれぬが…」

「アンタは突っ込むのと突っ込まれんのどっちがいいんだ?」

「ほ、本当に致すのですか!?」

「ったりめーだろ。オラ、どうなんだ」

「…………、……自分の体相手に勃つ気がしませぬ」

「Yeah!じゃあ決まりだな、今日はアンタが下だ!!」

「……………」



幸村はとても活き活きとしている政宗を止める気になれなかった。
少しでも元に戻れる可能性があることはしておかねばならぬ気がする上、自分の身体の処女を自分で奪うのは相当気が進まなかったのだ。
それに加えて、もう一つの密かな思惑も存在した。
寧ろそれが主要な理由であった。


それも知らぬ政宗は幸村を正面から押し倒し、頬や首筋へ唇を這わせる。
くすぐったい感覚に幸村は薄く笑む。
政宗の身体は本当に感度が磨かれていて、熱い手や唇に肌を触られればそこから快感が広がった。
そういう身体にしたのが己だと思うと幸村はそれだけで興奮を覚えた。

幸村は己の、というか見かけは政宗の身体の両の乳首へそれぞれの手を伸ばしきゅっと突起を摘む。
そして親指と中指でそれを挟んだまま、人差し指で先端を細やかに弾く。



「んあっ……あ、は………気持ち良い…」

「…………おい、幸村?」

「あぁ、政宗殿の鳴き声はやはりとても愛らしい…。あ、あ、っ…ん……ゆき…おっぱい気持ち良い…。…早く、いつもみたく吸ってくれよ……?」

「………!!!!!」



政宗は突然始まった己の身体と声と口調を使ってのおねだりに、顔をぼん、と音がしそうな勢いで真っ赤に染める。
己はそんなことは絶対に言わない。
しかも嬌声は出来る限り噛み殺す。

しかし今幸村は、これ見よがしに乳首を捏ね繰り回し甘い声を漏らしながら卑猥な言葉を吐いている。
己の体で行われる半ば自慰のような行為に耐えられず、政宗はその両手首を掴みベッドへ押し付けた。
そして顔を上げて噛み付かんばかりにその愉しげな面を睨みつける。



「オイ!!アンタ人の体で何してんだよ!?」

「何をするも何も……、政宗殿が言い出したのでしょう?今の某を抱く、と」



手を押さえられれば今度は幸村は大きく開脚し、黒いボクサーパンツは穿いているものの性器の形がくっきりとわかる股間を相手へ晒すだけでなく筋肉ばかりで硬い両脚を政宗の腰へ絡めた。
そのまま腰を持ち上げ、二枚の布越しながら股間同士を密着させがくがくと腰を揺らす。



「あ、あ!ンぅっ…堪んねぇ…!!早く、このデケェので俺を可愛がりやがれ…」

「っ……テメッ!!そういう魂胆か!!」

「はは、何のことです?」

「やめだやめだ!こっちに回った時までアンタの思い通りんなって堪るか!」

「……では、某は風呂場で鏡を見ながら後ろを使ってたっぷりと自慰をするか…」

「…っ……!!!」



政宗は結局想い人の意のままになってしまいそうなこの状況にぎゅっと唇を噛む。
自分の居ないところで好き勝手に自慰をされるよりは、まだ自分が抱いた方がマシである。
気が、する。





「……………わかったから、まず腰を揺らすのをやめろ。脚を解け」

「……最後まで責任を持って抱いて下さるか?」

「わかった!マジでわかったからその顔で唇尖らせんのやめろ気持ち悪ィ!!」



幸村は嬉しげに笑むと漸く脚を絡ませるのをやめた。
その笑みも中身が幸村であるからか政宗自身浮かべたことのないような邪気のないもので、思わず溜息を零す。



しかし考えてもきりがなさそうなこの状況に、政宗は諦めて再度その肌を貪り始めた。














後編へ













ダテサナ…サナダテ?サナダテサナ?
何と定義して良いやら迷いますが、リバ大好きなので思いついたら書かずには居られませんでした!

題はタイムリーな入れ替わりネタということで一応七日間とかついてますが、七日間ってのあんまり関係ないです。多分。
ほんとは一日目、二日目、三日目…って七日間分書けたらなー…。


本格的破廉恥な後編に続きます。






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