元ネタCM→ttp://www.lovedistance.jp/
love distance
ある夜のこと。
政宗と、政宗の家へ泊まりに来た恋人の幸村は、ソファに掛けて夕飯を食べていた。
二人の手元には、政宗の手作りオムライス。
中のご飯は軽く炒めたバターライス、ソースは一晩かけてコトコト煮込んだ、政宗の愛情が密かに、しかしたっぷりと籠められたデミグラスソースである。
「政宗殿のオムライスは、やはり絶品にござる!」
「Humn…そりゃよかった。味わって食えよ」
「無論!はあぁ幸せだ…!」
とろけそうな笑顔でスプーンを動かす幸村を目にして、政宗の機嫌も上々のようだ。
やはり丹精こめて作った料理を恋人に、しかも至極美味そうに食べられるのは心地良い。
あまりに幸福感に満ちた幸村の顔に政宗の頬まで緩みそうになるが、それも何だか気恥ずかしく、政宗はふいとテレビの方へ視線を向けた。
何とはなしにつけていた画面には、様々なところを辛そうに走る若い女性と男性が交互に映っていた。
ドラマか、などとぼんやり考えながら、展開を見守る。
中央には、段々と減っていく数値。
右端に「mm」とついているところから、どうやら二人の間の距離か何からしい。
ちらりと横を見遣れば、幸村も口の中でもごもごとオムライスを味わいながら、視線はテレビへと向けている。
己が画面に目を戻すと、名古屋城らしき城の前で出会った二人が居た。
少し距離のある場所で足を止め、言葉なくはにかむ。
照れの混じる笑顔はそのままに、やがて二人は走り寄って、強く抱き合った。
中央の距離は0に、そして背景の城の後ろには、祝福の花火があがる。
とても幸せそうな光景だ。
政宗の心も多少のむず痒さを含みながらも、少しばかり温かくなる。
しかし、その後が悪かった。
今までのピアノの素朴な伴奏に、ナレーションが重なる。
『それでも、愛に距離を。――――世界最薄コンドーム』
予想外の展開に、政宗は思わずぴしりと口端を持ち上げて固まった。
夕飯時に流すのはどうなんだとか、せめてナレーションを入れるなとか、それでも中々悪くないコマーシャルだとか、言いたいことは色々ある。
あるにはあるが、取り敢えずそろりそろりと隣の恋人へ視線を遣ってみる。
すると―――。
→赤幸村「は……破廉恥であるぅうううああああああああ!!」
→白幸村「政宗殿、こんどーむとは何でござろう?」
→桃幸村「………」
「は……破廉恥であるぅうううああああああああ!!」
「………ククッ」
幸村はやはり、予想通りの反応を示していた。
耳まで真っ赤に染め上げ、両手で顔を覆っている。
しかしその指の間からは、しっかりとテレビ画面を覗いているようだ。
「Ha!とんだムッツリ助平だなァ」
「す、すすす助平などと…!某は……っ某はぁあ…!」
ぶんぶんと頭を左右に振って、必死に煩悩と闘っているらしい。
揺れる尻尾髪が、また政宗の加虐心を煽る。
政宗はスプーンを置いて己のスラックスのポケットを漁り、記憶の通りそこに入っていたものに口許へ人の悪そうな円弧を浮かべた。
「幸村、手ぇ出せ」
「ぬ!?」
「いいから、気を落ち着ける薬だ」
「な、何と…」
動転している幸村は、言われるがままに食器をテーブルへ置き政宗の方へ両手を差し出す。
政宗はにんまりと笑みを深め、正体が知れぬようにある物体を手の内に握りポケットから持ち出し、幸村の掌の上でぱっと手を開きそれを落とした。
ロゴの描かれた白っぽいプラスチック容器の中に何か入っているらしいが、不透明なうえ、外装に明記されていないので一見何かはわからない。
しかし、幸村の顔にはぼん、と音がしそうな勢いで血が上った。
「こっ、こここここっここここ…!!」
「Ah?ニワトリの真似か?」
政宗は揶揄を口にしながら喉をクツリと鳴らし、両手を差し出した状態で小さく震えている幸村の顔を覗き込む。
幸村は丸い目を更に丸く開き、やや鼻息を荒くしていた。
その様子に満足気に目を細めた政宗は、幸村の手の上のケースに手をかけペリ、と蓋を剥がす。
中には、ローションに濡れた透明のコンドームが一枚。
幸村の顔はいよいよどす黒い程の濃赤に変わってきていたが、政宗は構わずコンドームを手に取り、爪を立てぬよう気をつけながら少し
引っ張ってみる。
「おっと、薬と間違えてゴム出しちまったな」
「ななななな…っ!?」
「…ついでだ、一発ヤっとくか」
「ぬおああぁっ!」
政宗はコンドームの中へ浅く指を挿入し、精液だめの部分を舌先でちろりと掠めた。
口淫を彷彿とさせる淫猥な光景に、幸村はとうとう腰元を両腕で覆って背を丸める。
若い雄が、早くも反応を示してしまったらしい。
余りに予想通りの展開に、政宗は肩を揺らして笑う。
そして涙ぐんだ眼で下方を見遣り情欲を落ち着かせようと堪える幸村の顎を指先で軽く持ち上げ、唇の表面だけを僅かに触れ合わせた。
柔らかな口づけは、秀逸なデミグラスソースの風味。
「―――さあ、partyの始まりだぜ」
完
「政宗殿、こんどーむとは何でござろう?」
「ッゲホ!ゲホっ…!!」
突如飛んできた問いに、政宗は思わず噎せ返った。
その拍子に一粒二粒、口の中に入っていた米を飛ばしてしまった気もする。
まったくクールではない。
政宗は恋人の余りの無知っぷり怪訝そうに眉を寄せながら、口許を拭う。
付き合って大体三ヶ月。
未だ幸村とセックスしたことはなかったが、まさかここまで無垢だとは。
その無垢さが幸村の魅力ではありつつも、そろそろ一発致したいというのが健康な男子高校生としての心情である。
口づけだけでは、もう物足りない。
先に進むためにも、恋人である己が教育してやらねば。
政宗はやや悩みながらも、口を開く。
「Ahー……恋人同士なんかがkissの先のことに、使う物だな」
「きっ…ききききすの、先に…!?」
キスの話題を出しただけでも、もう幸村は頬を赤くしてあわあわと挙動不審に周囲を見回している。
この先を言って大丈夫なものか、という心配が政宗の胸を過ぎるが、いつかは通る道であろう。
「…kissの先はな、sexってのをするんだ」
「……せっくす…?」
「女なら股の穴に…男なら尻の穴に、ちんこを突っ込んで擦る。気持ち良くて、やがてちんこから精子が出る。だがそのまま出すと子供が出来ちまったり腹下しちまったりするから、前もってコンドームをちんこにつけておいて、それを防ぐ……みてぇな」
「……、………」
政宗は、少々目許を赤く染め視線を逸らしながら恋人のための説明を口にした。
言葉を終えたところで、己でも何をやっているのだ…と自己嫌悪と羞恥に頭を抱える。
しかし、隣からの反応はない。
数秒、数十秒、と待ってみてもないものはない。
痺れを切らした政宗が、そろりそろりと幸村を見遣れば。
「………、……?」
笑顔で口を半開き、首を傾げたままの幸村が居た。
動揺を示していないところから、どうやら説明が無垢な幸村のキャパを超え、結局何もわからなかったらしい。
「…………はああぁ……」
「政宗殿?」
政宗は、脱力露わに大きく息を吐き出す。
恥を押して説明をしてみたところで、幸村には言葉では理解させられないことを知ったに留まった。
やはり、実践で教え込むしかないようだ。
政宗はスプーンを置いて、ソファから腰を上げた。
「どこへ行かれるので?」
「…あぁ、ちいとコンドーム取ってくる。見せてやるよ」
「誠にござるか!かたじけない…!」
キラキラと目を輝かせる幸村を尻目に、寝室へと足を向ける。
期待と不安を胸に、政宗は暫く使っていないそれのある場所を思い起こした。
完
「………」
「………」
「あれは以前使ったことがありましたな!」
「……あぁ、そうだったか」
幸村の切り出しに、政宗の胸には嫌な予感がひしひしと込み上げる。
夕飯時にピンク一色の会話など、ましてや行為に雪崩れ込むことなど、御免被りたいのであるが。
そんな政宗の胸中を知ってか知らずか、幸村はオムライスを口に運びながら政宗をチラチラと見遣る。
「確かに他のものよりも薄くて、政宗殿の中の感触がより鮮明に味わえ申した」
「…いや、もうその話題は」
「政宗殿の感度も、いつもより良うござりましたなぁ…きゅうきゅうと某の魔羅を締め付けて」
「わかったからそろそろやめろ、夕飯中だぜ?」
「何でしょう…温かみが違い申した!細かな襞が、魔羅に吸い付くように狭まっていた」
「だーからやめろって!人の話を聞けよ!」
制止も聞かずうっとりと頬を緩めながら話を夜の方向へ進める幸村に、政宗は少しばかり目許を染めてその後頭部を思い切り殴りつけた。
ぎゃっ!と何処か抜けた感じの悲鳴を漏らした幸村であったが、幸村の頭を殴打した側の政宗の手首をすかさずはっしと掴む。
そして憎らしい程に明るい笑みを政宗へ向けた。
政宗は敢えて視線を向けることはしないように努めているが、幸村の腰元あたりから何やらカチャカチャという音が聞こえる気もする。
「しかし、政宗殿が一等お好きなのはやはり生にござりますな!」
「は……あぁ!?ざけんな、つーか放せって…!」
「生の時は、そなた挿れられただけで果ててしまうではござらんか」
「うわっ!?な、何汚ぇモン出してんだ!食事中だっつってんだろ仕舞いやがれえぇえええ!」
「そういうのを、ところてん…と言うのだそうですな。…政宗殿、今宵も美味いところてんを振舞って下され!」
「な、ちょっ…やめろ!触らせんっ…ぎゃああああああああ!!」
若い二人の夜は、今日も長くなりそうである。
完
上記のCMを見て考えたものです。
宣伝してるモノとオチはアレですが、何だかロマンのあるCMだと思います。
どんな風に持っていこう…あれもこれもそれもいいな……そうだマルチエンドだ!
ということで初めて分岐させてみました。
別の時間軸として読んでやって下さい。
一気に色んなサナダテ(サナ?)を書けて楽しかったです!
桃ルートの描写が少ないのは仕様です(笑)
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