ある春の日。
大学生の政宗の一人暮らしの部屋には、年下(高校生)の恋人である幸村が招かれていた。
若い二人が部屋でデートをしようとなれば、流れは大体決まっている。
それがどのような流れかは、言わずもがな。
「うっ……あぁ!」
今日も今日とて、政宗の嬌声が部屋へと響いている。
しかし、今繰り広げられている状況は、いつものそれと少し違っていた。
政宗はベッドの傍らのフローリングの上、上半身には黒のTシャツを纏いつつ、下半身を露わにして独り腰を上下へ揺らしている。
幸村はといえば、ベッドへ腰掛けその様子を満足げに眺めていた。
「っ…ぁ……」
「政宗殿…気持ち良さそうですな?」
「よくなんざ、ねぇ……っ馬鹿野郎!」
後ろへ手をつき上体を仰け反らせ、幸村へ局部をさらけ出す姿勢で体を揺らす政宗の下には、吸盤で床へ吸い付いている何かが見える。
政宗が腰を浮かす度にくちゅ、と水っぽい音をたてながらその股の向こうへ見え隠れするのは、男性器のような形をした無機質な淫棒。
所謂、ディルドだ。
「しかし、気持ち良くなどないのなら…何故政宗殿のおちんちんは勃起している
のですか?あぁ、それとも某に見られているのが好いのか」
「うっせ…、っ……こんな…!」
「こんな、何でござろう。政宗殿が自ら、某の成績が上がったお祝いをして下さ
ると仰ったのだ。……寧ろ、こういった破廉恥なことを期待されていたのでは?」
「ッ…!?んな、ワケ……」
幸村の指摘に、政宗の体が大きく揺れると同時、勃起しきった陰茎から、少量の精子が飛んだ。
男の味を知る淫口への快楽に耐えきれずか、それとも図星を指されたか。
性感に震える己の男根と漏れ出た精液を見に、政宗の頬へは更なる濃紅へと染まった。
「ほら、祝って下さるのならば腰を止めてはなりませぬ」
「ッ〜……覚えてろよアンタ!」
政宗は薄らと涙を浮かべた眼を幸村へ向け悪態を吐いては、再度腰を上下させ始める。
冷たい無機物とはいえ、それが常日頃から胎内へ迎え入れている男性器と同様の形をしていれば、感じもする。
「く、あぁっ…!」
「ぐちゅぐちゅと…凄い音だ。本当に、おなごのおまんこのようですな」
濡れぬはずの孔と性具が粘液を巻き込み擦り合わさっているのは、挿入の際たっぷりとローションを纏わせた故。
政宗が腰を上下させる速度を速めると、間からは僅かずつ泡が溢れてきている。
泡はペニスを模した肌色の性具を辿り、ディルドを床へ固定する吸盤の傍らへと
垂れた。
「はあ、はっ……」
卑猥な性具。
ただでさえ男の象徴のみを象るという異様な様相を呈しているそれに、何故か吸盤がついている。
政宗は、その存在は知ってはいたが、そんな馬鹿らしいもの誰が使うのだ、どこ
に需要があるのだと思っていた。
しかし、今はその馬鹿らしい玩具に跨り、粘膜を擦り付けて性感を貪っている。
しかも、それを恋人である幸村にじっくりと観察されているのだ。
「あ、っ、も……イっちまう…!」
「おまんこでイくところ、幸村に見せて下され」
ぐるぐると考え始めれば、政宗は自らの思考を止めることも出来なくなり、その
余りの羞恥と不本意な快感に、鈴口から濁った種を勢いよく吐き出した。
隻眼を瞑ってはいるが、政宗の耳にはフローリングへぱたぱたと精子の落ちる音が届き、その卑猥な響きに性具を咥えた政宗の孔は収縮した。
何度かに分けて精液を吐き出すと、政宗は足を曲げ正座に近しい姿勢でディルドとの間へ距離をとった上で、肩を上下させて息を整える。
「は、ぁ……はッ…」
「如何でしたか、ディルドは美味しかったですか?」
幸村は立ち上がり政宗の目の前へ屈んで、揶揄するような問いを投げかけた。
すれば、眉間へ皺を寄せた政宗の隻眼が、幸村を捕らえる。
「――Ha!アンタのなんかより百倍美味かったぜ!」
完
春コミ無料配布ペーパーでした。
吸盤付なのがミソです。
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