5、押し車








それはある夜のこと。
政宗と幸村の二人は、高校生という年齢にも関わらず政宗のマンションで酒盛りをしていた。
心地よい酔い具合に、二人してほんのりと頬を染めて上機嫌に缶ビールを煽る。
床には、既に空になった缶がいくつも転がっている。



「アンタ、意外とイケるクチだなぁ!未成年の飲酒は〜とか言いそうで今まで酒なんざ出さなかったんだが、まさかアンタから持って来るたぁな」

「これしき男の嗜み!ささ、政宗殿もどうぞ」

「Oh、thank you」

「うむ、お美しい政宗殿と飲む酒は最高だ」

「Han……美しい、ね。褒めても何も出ねぇぜ?」

「うっ……………さ、左様か」



言葉に詰まり少々気落ちしたような幸村の様子に政宗はぴくりと眉を動かすも、気付かないふりをする。
欠伸と共に両腕を天井へ向け伸びをして、手に持つ缶をローテーブルの上へ置く。



「じゃ、そろそろ寝るか」

「……承知した。………あの!今宵は同じ床で「布団、敷いておいてやったぜ」

「…うぅ………そうですか…かたじけない」



明らかに意図的なタイミングで政宗に言葉を遮られ、幸村はとうとう肩まで落とす。
しかし、政宗はそれをも無視してさっさと自分の部屋へ向かう。
仕方なしに幸村もその後に続き、しょんぼりと頭を垂れたまま部屋のドアを閉めた。






















それから小一時間後。



ごくり。

幸村の視線は政宗の、未だ雄を知らない蕾へ一心に注がれていた。
先程政宗が電源を切ったはずの部屋の照明は再度灯され、皺一本までが鮮明に幸村の網膜へと焼きつく。
そこを唾液で濡らした指でそっと解し、うつ伏せで眠る政宗の腰だけを高く持ち上げ、己の雄を取り出し夢にまで見た彼の穴へ宛がって―――。



「はぁ、は……政宗殿……」

「んー………」

「漸く、繋がれますな……ッ…!」

「………んんんっ!!?」



ずぶり、といきり立った怒張の先端が入ると同時、政宗は漸く目を覚ました。
余りの痛みにその身体はカタカタと震えている。
何が起こっているのかわからない、といった風に涙の滲んだ目を見開いた。
そして凄まじい異物感を宿した背後を振り返る。
すれば結合部までは見えぬものの、己の尻と幸村の股間が酷く至近距離にある。
着ていたはずのTシャツとズボン、下着はいつの間にか全て剥ぎ取られていたので全裸、当然に尻も剥き出し。
幸村も引き締まった上半身を外気へ晒し、下は下着とズボンを膝上までずり下げた格好である。



「あ………あ?…なっ……んだよこれ…!!」

「政宗殿!目を覚まして下さったか」

「テメ、ッ…何してやがる!!」

「何と仰られても……政宗殿のおまんこに、某のものを食べさせて…」

「っせぇ!!!オイ、俺は許可出した覚えはねぇぞ…!アンタまだ酔ってんのか!?つか、さっきより酒臭ぇ……一人酒で悪酔いでもしやがったな!!?」

「酔ってなどおらぬ!政宗殿の許可を待っていたら高校生活は終わってしまう。某ら、付き合い始めてどれだけ経ったとお思いで…?」



幸村の目の座り様と頬の赤味からして、酔っ払っているのは明白であった。
だが切実さを滲ませたトーンの呟きを聞けば、政宗は決まりが悪そうに視線を逸らす。
ガシガシと己の頭を掻き、しかし確実に己の体を蝕む痛みに舌打ちをする。

政宗と幸村は高校で出会うなり自然と惹かれ合い想いを囁き合う仲になったのだが、中々そちらの許可が出ることはなかった。
最早、付き合い始めて一年半ほどであろうか。
あらぬ器官で男を受け入れることに対する恐怖で、政宗は時折迫る幸村を張り倒しては事に及ぶのを避けていた。
幸村に悪いとは思っていても、どれだけ想う気持ちがあっても中々踏み切れなかったのだ。
二人の関係は何時まで経っても口づけ止まり、今時の高校生カップルにはあるまじき健全さであったのである。



「う………だからって、寝てる間に突っ込むヤツが居るかふざけんな!抜け!!」

「嫌だ!政宗、殿……」

「ひっ、…痛ぇ!待て、痛ぇって…!!」



額に脂汗を浮かべる政宗に、幸村はその腿を双方の腕へ抱えより奥を目指して腰を突き出す。
政宗は居てもたってもいられず、首を思い切り振り身悶えながら制止の声を張り上げる。
しかし幸村は、狭いアナルの内部へその楔をぐいぐいと押し込んでくる。
堪らず政宗は、幸村の凶器と腕から逃れんと両腕をベッドの上へつき抱えられた脚をばたばたと暴れさせながら一歩、一歩と前へ進む。
腿には屈強な筋肉が多分についており、それが暴れれば行為を続けるのは難しいであろうに、幸村は政宗の脚を離さないどころか政宗が前方へ進むのに合わせ己も足を進めて結合を深めようとする。

目に涙を浮かべ必死に痛みと幸村から逃れようとする政宗は、脳天をベッドのヘッド部分へごちりとぶつけ、とうとう逃げ場を失った。
胎内には最早幸村のペニスの半ばまでを挿入されていて、痛みやら羞恥やらでこれ以上抵抗する気力もなかった。



「ッう…痛ぇよ、幸村ァ……」

「もうすぐ、気持ちよくして差し上げます故…」

「…アホ!強姦魔!!死ね!!!うあっ、ぐあああァっ!?」



懇願も通じぬとなればあとは思いつくだけの罵声を浴びせるしかなかったのだが、幸村がとうとう根本までを中へねじ込んできたので政宗はそれさえも叶わなくなった。
政宗はシーツへ涙をぱたぱたと零し、少しでも痛みから気を逸らすべく自らの腕へ思い切り爪を立てる。



「あと少しだけ我慢をして下さいませ…」

「っ…アンタ、マジ、…最悪……」



その辺りから、段々と痛みは和らいできた。
それどころか内臓は熱くなり、快感にひくひくと痙攣しているのが自分でもわかった。
己の中にも未だ多量のアルコールが残っている所為でもあろう。

―――酔いに任せてバックから犯るって、俺の初めて何だと思ってんだ、馬鹿野郎…。

政宗は痛みからだけでなく目頭が熱くなるのを感じた。
しかし弱い光を宿す隻眼に溜まった涙も、やがては生理的なものとして零れ落ちる。
政宗のアナルは幸村の陰茎へ吸い付くようにきゅっと絡みつき、奥へ奥へ導こうと収縮していた。
それを感じた幸村は、熱棒を引き抜いてはまた収めてと緩い律動を始めた。
くちゅ、くちゅと唾液と幸村の先走りが掻き混ざる音が部屋に響く。



「っ、い……ま、待て…!」

「嘘を仰る……気持ち良いのでしょう?おちんちんを、ぎゅうぎゅうに締め付けてくる…」

「……っ!?あ、っく……言って、んじゃねぇ…!!」

「…しかし今おまんこがきゅっと窄まったのは、図星だからでしょう?それとも、いやらしい言葉で攻められるのがお好きなのか…?」

「違っ……ぇ!!ン、あぁっ…も、やめてくれ!!」



政宗は紛い無い快感を味わいながらも矜持を捨てることは出来ず、口での抵抗を止められなかった。
それが幸村の欲を更に煽ったらしく、政宗は中に在るものが一層大きくなるのを感じた。
熱い肉の塊が、それの収まる筒をぎちぎちと押し広げる。
腸に並んだ襞一つ一つが歓喜するよう、波が起こったが如く蠢く。
幸村のペニスを中へ受け入れ、また出て行く度、政宗は掠れた嬌声をあげた。
侵入時の充足感、退行時の排出にも似た感触が絶え間なく襲い来て唾液を飲みこむことも出来ず、声と共にそれを口端から零す。
体をひくひくと震わせつつ、眼前にあった枕を掻き抱く。

――――本当は幸村の背へ縋りたい、などと虚ろに考えながら。

そんな本心も悟ることなく、幸村は楽しげに目を細め政宗へあられもない言葉を浴びせる。



「ほら、素直に言うたらどうです?気持ち良い、もっと恥ずかしい言葉を吐きながら引っ掻き回してくれと…」

「んなっ…言え、るか……っア…!!」

「……正直に言えぬのなら…っこうですぞ?」



言葉と同時に、幸村は政宗の最奥を抉るべく思い切り腰を突き出した。
幸村のペニスのエラが政宗の前立腺を一層強く擦り上げる。
政宗の腰は一段と大きく跳ね上がり、余計に結合は深くなった。
たぷん、と赤々とした睾丸同士がぶつかり、互いの射精感を根底から刺激する。

そのような深い穿ちを数度繰り返した後見えてきた絶頂へ昇り詰めるため、幸村は律動を更に速いものとした。
部屋に響くは水音と、二人分の荒い呼吸。



「ああぁっ…!!ッ、ん……もう、テメェ後でぶっ殺してやるからな…!!」

「政宗殿に殺されるのなら、これ本望にございます…」

「っ〜……アホ!!マジ、あ……、そこッ…ヤベ、擦ん…な、ア…!!」

「は、…ッ……政宗殿、貴方のような愛らしい方と想い合えて、よかった……!」

「…馬鹿!あ、あ、は……ンぁ――――ッ…!!!」



政宗は枕を絞め殺さんばかりの力で抱き締めながら、全く触れられていないペニスの先端からシーツへ向かって精液を噴出させる。
それと同じくして、幸村も政宗の穢れの無い体の奥へ雄の欲液を注ぎ込んだ。






















二度、三度と体を重ねた後漸く政宗は解放された。
散々揺さぶられて最早体はまともに動かず、白い肌の至るところには赤い痕が散らされていた。
政宗は仰向けに寝かされ、隣に寝転がる幸村の腕中へ抱き締められていた。
幸村は政宗の髪を撫でては肌を摺り寄せていたが、呆けたような表情を浮かべている政宗を見にふと口を開く。
その顔には好いた者と交われたという満足感と、少々の後悔の念が同居していた。



「………初めてでしたのに、申し訳なかった」

「………強姦魔」

「酔いは……最中に醒めたのだが、止まらなかった…」

「色魔」

「…正直を申せば、良くて仕方がなかった」

「好色一代男」

「………あの、そのように罵られるとまた勃ってしまいます」

「この変態ッ…ってこらどこ触ってやがる調子乗んな!……アンタ、なんざ…!」

「…アンタなんざ?」






「……アンタなんざ、―――――――― 初めてをbackで奪いやがった責任、一生かけてとれよ」













―解説―

・押し車
背位でハメながら前進すること。
女役は腕立て伏せのような姿勢をとり、男役がその両足を持って(ハメながら)立ち上がり、前進。
一見すると滑稽な体位ではあるが、実は後背位から両足を抱え上げられると内腿が緊張し、締まりも良くなるという理に叶った体位。






ごめんなさいこの体位、本当に上手く書けませんって…。
だって女役前に進むんですよ。絶対おかしい。押し車やってるAVなんて見たことない。
というか、こんなの小学校の体育でやった気がします。

そんなこんなでその場面以外で一生懸命誤魔化した感がありますね。
でも、これを書き終えてしまえば後はそんな苦労する体位は無い……ような気がする!
だといいな!



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