「アン?パラレル設定?」
ええ。
「それで?俺に何しろってーの」
ハイ。今日はホストになって頂こうかと思って…。
「ふーん。それで?」
お店でナンバー1のホストなんてどうでしょう?
「…女にモテモテってことか?」
そうですね!
銀さんはいつもモテモテですけどね!
「ま、そこまで言われたらやってやらない事もねーけど?」
ありがとうございます!
じゃ、今日は金魂設定で!一つよろしくお願いしまーす!!!
5. 襲われる
それは、夜の町のお話。
この町でホストをしている金時は、その日も仕事に向おうとしていた所だった。
その道すがら、向かいから歩いてくる女性を目に入れ、思わず頬を緩める。
心底愛してやまないただ一人の女。
彼女はきっとすぐ自分をみつけてニコリと笑ってくれるだろう。
蕩けるようなあの笑顔で。
「あら、金さん。こんばんは」
「ッ!? ? …なんかソレ、変じゃね?」
実際 は笑ってくれた。
しかし、なんだか何時もとは違うような気がしてならない。
「なにが?」
そう言って首を傾げる仕草は変わらないのに、何故だか嫌な予感がして、金時はじわりと汗の滲む掌を握りしめた。
「なにがって…。 なんで、そんなよそよそしいワケ?」
「そうかな?」
「そうだろ。オメエ、いつもは呼び捨てじゃねえか。それを『さん』付けって…? ああ、そっか!付き合い初めって設定だな!?」
いつもとは違う自分。
いつもとは違う態度の女。
なんだよ、書いてる奴。たまには気が利くじゃねえか。など にやり としたのも束の間、思ってもみなかった爆弾が投下された。
「え?違うみたいよ?」
「違う…?」
「私、『スナック お頭裸』でホステスをしている、 っていうの」
「はあ」
ニコリと微笑むその可憐な笑顔に、大抵の男はころっと騙されるだろう。
きっと常連客もたくさん付いて、さぞかし人気だろうと思う。
他の男にそれを見せるのは癪に触る。
だがしかし、それとは別に、先ほど感じた嫌な予感が じわじわ と確信へと変わりつつある。
「それで…」
困惑気味に頷く金時を気にした様子もなく、恥じらうように頬を染めたは話を続けている。
「お店の上に住んでる『万事屋 …ちゃん』と付き合ってマス」
ゴンッ!
その言葉を聞いた途端、金時は真横にある電柱にしこたま頭を叩き付けた。
「え!? 金さんっ大丈夫ッ?」
慌ててこちらに手を伸ばしてくる女はいつもと何ら変わりはない。
のに…、
その口で他の男の女だと言っているではないか。
「そっちにかかってんのかよ!!!?」
「な、なにが?」
伸ばされた小さい手をそっと握って、その顔を覗き込む。
「なにが?ってオメエ…。お前は…『』は、俺の『坂田銀時』…まあ今日は金時だが…の恋人じゃねえか! ナニが如何して、ドコがどうなって『万事屋』の恋人って設定になっちまってんの!?」
たらりと冷たい汗が背筋を伝う。
「そうわれても…」
困ったわ。
とばかりに美しく整えられた眉をひそめて、が悩まし気にため息をつく。
姿形の美しさは言うまでもなく、その真っ直ぐな心根も凛とした姿勢も綺麗で、愛しくてしょうがなくて。
じっと見つめられると極上の酒を呷った時のように頭に血が昇る。
なによりも大切な唯一無二の存在。
そいつが、…俺のモンじゃねエ?
唾を飲み込んだ喉がごくりと鳴る。
「…あり得ねぇ」
そう呟いたときだった。
ピシッと手刀を叩き込まれ、握っていた細い手が奪われてしまう。
「くっ…」
思わず声を漏らす金時の耳に勝ち誇ったような笑い声が聞こえた。
「くくっ…。俺は一向に構わないぜ?」
いつの間に現れたのか、いつものあの派手な着物でなく、常の己が身に着けている着物を黒い洋服の上に同じように着た男が、当たり前のようにの隣に立つ。
「高杉…テメエ…!!」
「晋助!?」
唸るような金時の声にの驚きを含んだ声が重なった。
…イラッとする。
思ったより数千倍イラッとするではないか。
が万事屋の名前を出した時から、何となく想像はついていた。
多分コイツがそうなのだろうと。だがしかし、それを制定するとコイツにをみすみす渡す事になるような気がして、故意に頭から消していたのに…。
この男…高杉晋助は一番嫌なタイミングで現れやがった。
「お前の話しは聞いてねえ」
「アアン?」
ギロリと剣呑さを少しも隠さずに射殺しそうな視線で睨み合う男二人に辺りの空気が冷たくなる。
道行く人々も遠巻きに通り過ぎるのが精一杯のその緊迫した雰囲気の中、が二人の間に割って入った。
「やだ晋助…。喧嘩、しないで?」
金時に背を向けて、庇うように高杉と向かい合う女の表情は伺いしれない。
けれど、向かいの男の、隠してはいるようだがほんの少し綻んだ口元を見れば、想像に難くない。
きっと普段は柔らかな目尻をきっと上げて、睨みつけているのだろう。
男の劣情を誘うような視線とは気づかずに。
「…しょうがねえなあ」
案の定、高杉は金時から視線を外し、存在すら消し去ったかの如く、ふっくらとしたの頬を手の甲でそっと撫でる。
「ありがと」
「クッ…」
自分の頬に添えられた手を握り嬉しそうにそう言ったに、反対の手が小さくガッツポーズを決めた。
「ぎゃー!!!!!」
その光景を目の前でばっちり見てしまった金時は叫びながら辺りを見回し、腕で大きく×を作る。
「ちょ、待て、この話 終了!!金魂ナシ!マヂあり得ねえ!!」
「何を騒いでいる。このバカホスト。…くくっ。とうとう糖が脳みそに回ったかぁ?」
その必死な様子に高杉はさも可笑しそうに言いながら、更に唇の端をつり上げ、ついでとばかりにを引き寄せた。
「ウッセエ!!! ゴルアア!高杉、テメエッを返しやがれ!!!」
抵抗もなく、高杉の腕の中に囲われた女を取り戻そうと更に激怒した金時が腕を伸ばすも、その手はあっさりとはたき落される。
「うるせえのはそっちだ、この毛玉が!さっさと消えやがれ」
奪われないようにか、よりいっそう身体を密着させ、高杉はしっしっと追い払うように手を振る。
「晋助ッ、ダメでしょ!そういうコト言っちゃ!」
「いいんだよ。それより、」
「なあに? 晋助?」
「………クッ」
「ちょ、もう、そんなぎゅってしたら痛いー」
「だー!!!終わりだっつてんだろオオオオオ!!!!!」
あり得ないくらいのバカップルぶりに、悲痛なまでの叫び声が降り注いだ。
「わかったわかった 金時。この話は終わりで良いゼ?」
その様子を哀れむような目で見た半笑いの男が宥めるように言う。
「っせえ!テメエにゃあ言ってねえ!!」
「そうだな。じゃあ。帰るぞ」
「はあい」
まさしく勝者の笑み。
「………………」
呆然と立ち尽くす金時を置いて、高杉とは仲睦まじく身体を寄せ合い去っていった。
「晋助、今晩は何食べたい?」
「」
「もー。そうじゃなくって!」
「今日はもう店じまいしたから二人だけだ」
「だからー…」
「…お前でいいだろ?」
「………もうっ」
「返事は?」
「…承りました」
ハピバ!高杉サン!!!
でも、銀ちゃんも好きなの!!ごめ!!…オチ有りデス。
心の広い方(&銀時スキーさん)だけ、このずっと下の方でお会いしましょう(笑)
プチ。と、ナニかが切れる音がした。
「………………ああ、そうか。そうか。そういうことか。」
…オレ、今やっと「ミナゴロシ」って言葉の意味が分かった気がするわ…
抑揚のない声でぶつぶつと呟く男がいつの間にか手にした木刀を握り直す。
「…アレだろ?あのバカ杉とこれ書いてる奴、どうにかすれば良いだけの話だろ?」
フフフ。と嗤う声と共に放たれる殺気で、辺りの温度が下がっていく。
「そうすりゃ、お前はいつもどおり俺だけのモンだ…」
そう言ってゆらりと身体を揺らしながら振り向いた男の目は、正に血に飢えた鬼のようだった。
…えー。命の危険があるのでココまで。逃げます!!!
2008.08.10 ECLIPSE