梅雨が明けて本格的に夏が始まるとそれとともにやってくるのが期末テスト。
これを片付けねば休みに入れないのは生徒も教師も同じ。
「と、いうことでみんな、死ぬ気でやって!」
「せんせー神楽さんが横で食べてる弁当のニオイに酔ったので保健室に行って…」
「試験用紙を埋めずにこの教室から出るなら、それ相応の覚悟をしてね?沖田くん?」
にこりと、いつもは見とれてしまってもおかしくないその笑顔に鬼気迫るものを感じて新八は
小さくため息をついた。
「…ハイ」
「神楽さんはさっさと食べて箸を鉛筆に持ち替えなさい。…それから近藤くん。
ストーカーは試験が終わってからにしなさい。でないと志村さんより先に私が殺しますよ?」
「先生是非お願いします」
全くうちの教師は…千差万別あれど、根底のところが似通った人が多い気がする。
この英語教師の女性もいつもは穏やかな事が多いが、今はこの試験をさっさと終わらせたい
&休みをゆっくり過ごしたいという一心らしく「テメエら追試なんかになるんじゃねえぞ?アア?」
とデカデカ書かれた顔で試験用紙を配っている。
「じゃあ、始め!」
いつもは騒音しか立てない3−Zがカリカリと鉛筆の音だけを教室に響かせた。
終了の合図のチャイムが鳴り集まった用紙を整えながら微笑む彼女はいつもの優しい先生に
戻っている。
「ハイ。お疲れさま」
その姿にホッとしながらも、ふと違うクラスの担任であるこの女性がどうして今日はうちのクラス
の試験に付き合っているのかを新八は今更ながら疑問に思った。
「先生、そういえばうちの担任は今日どうしたんですか?」
「…銀八先生は…今日は腹痛が酷くてね…」
そういえばあの男、昨日はアイスを死ぬほど食べまくっていたなあと思い出す。
それで腹を壊したのだろうか?全くダメ教師だ。
「性懲りもなくアイスの当りを換えに逃走を図ったので、保健室送りにしました」
「…ハ、ハハ」
乾いた笑いしか返せなかった自分を責める人はいないと思う。
ちなみに、ホームルームにやはり銀八の代わりで来たらしい高杉先生はやけに神妙な顔で
「アイスの食い過ぎにはくれぐれも注意しろ」と言い残し去っていった。
3Zお題より。 アイスの当たりくじ
2008 ECLIPSE
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