校庭の隅にある桜の木。
  その木の下でキスをすると、二人は永遠に結ばれるという。

  「…えー、そんなくだらないジンクスですが、恋は盲目と言います」
  ダン!
  と、大きな音をたてて机に両腕を付いた3年E組の学級委員長は、決意を秘めた瞳で有志総勢二十数名
  (男子全員とも言う)に語りかけた。

  自分たちの担任が、あの一癖も二癖もあるZ組の担任と付き合っているらしい。という噂が流れたのは
  数ヶ月前の事。
  明るくて綺麗で生徒思い。男女問わず人気のある自分たちの担任に付いたクソ悪い虫をこのまま放って
  おく事は出来ない。
  戦争だ。
  誰がそう言ったかは覚えていないが、それから彼らのお邪魔作戦が始まった。
  そこに春の訪れを待つ身としてはこの上もなく気がかりな問題が勃発する。

  話しは冒頭に戻って、この学園の有名なジンクスの一つ。
  桜の木の下でキスをすると、その二人は永遠に結ばれると言う。
  などと誰が信じようか、…もちろん誰も本気にはするまい。
  だが、それに託つけてこの時期になると花咲くあの木の下に佇むカップルが増えるのは揺るぎない事実。
  「奴はきっと動く!!断固として阻止しなければ!!」
  「…そのターゲット本人の授業中に目の前で作戦会議をするってどうなのよ」
  その何とも暑苦しい光景を窓際に寄りかかり見ていたである銀八(お邪魔作戦の標的)は欠伸をしながら
  突っ込みを入れる。
  「うっさい天パー!小テストと銘打った自習ばっかじゃねーか!」
  もちろん授業中なので女子もいたりするが…おしゃべりに夢中でそれどころではない。
  「うちの担任、男見る目だけは激ナシー。高杉センセーとかのが、全然イイ男なのにー」
  他はイけてるのにね。カワイイし。話しやすいし。と、ケラケラ笑っている。
  「へいへい。まあせいぜい頑張んなさいよ。おいそこ女子!高杉のが全然変態だぞ!!」
  どうでもいい事の方を突っ込んでやった意味の少ない小テストを集めさせた鬼畜教師は、最後の最後に
  爆弾を投下した。
  「…それに、桜が咲いてなきゃダメだって誰が言った?」
  しれっと、言い放つその一言に生徒たちは固まった。
  「花が咲いてるとき限定って訳じゃねえんだなー。コレが」
  …じゃあ、…もう?と、唖然とする男子に、勝ち誇った顔でにやりと笑う男が一人。
  「ご想像にお任せしますよー」
  白々しくもそう言って、チャイムとともに教室を出て行く白衣はご機嫌であったという。





  3Zお題より。  ジンクス:桜の木の下







2007 ECLIPSE





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