勝負には負けたくない。
勝つか負けるかを選択するとすれば、迷わず己は勝つ方を選ぶ。
誰だってそうだろう。
しかし、今回ばかりはちょっとばかし事情があって。
勝てば掃除も終わったし晴れて解放。部活に行く事が出来る。
「じゃあ、じゃんけんいくぞー」
負ければゴミ捨て。でっかいゴミ箱を抱えて焼却炉まで。
…もれなくあいつと二人きり。
「じゃーんけーん…」
土方十四郎17歳(高校三年だからこれで良いよね!?)
この日、生まれて初めて負けたいと思った。
「ぽん!!」
「ありがと。土方くん…」
ゴミ箱の取っ手の片方を持ちながら小さく礼を言う女。
「別に。負けたんだからしょうがないだろ」
たまたま日直のもう一人が早退してしまった為、そいつの代わりに
じゃんけんで負けた土方がゴミ捨てに付き合う事になっただけ。
そのおかげで焼却炉までの短い道のりを二人きりで歩ける。
本当は自分一人で持って行ってやると言ったのだが彼女は聞き入れてくれなくて、
こうして二人で持つ事になった。
「でも、ありがとね」
そう言ってはにかむ彼女の笑顔はとても可愛らしくて、もう片方の取っ手を持つ
土方はろくに見ないうちにそっぽを向いてしまった事を少しだけ後悔した。
3Zお題より。 ゴミ捨てじゃんけん
2007 ECLIPSE
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