「先生、どうぞ召し上がれ」
そう言って志村姉が目の前に差し出した皿を、銀八は穴が開くほどに凝視した。
「いやコレね。どう見ても食べ物じゃないで…ぐはっ」
「良いからつべこべ言わずに食べろや!」
「ぐ、ごあっうげ…」
「テメエ、吐いたりしたら承知しねえぞ」
「いや姉御。銀ちゃん先生もう落ちてるアルヨ」
「ふっ口ほどにもねえヤツだ。次行くぞ!」
「アラホラサッサー」

「うっ!?…腹が…」
そして数分後、早くも身体に変調をきたした男は猛スピードで職員室を飛び出す。
「バイオテロか…やるな」
その後ろ姿を冷ややかに見送った高杉の声が、静かな職員室に響いた。
瀕死の状態ながらもなんとか保健室までたどり着くと、そこにいたのは保険医ではなく
E組の担任兼自分の恋人の女性教師だった。しかも、何故か白衣を着ている。
「ん?お、お前…何してんだ?」
「お留守番」
近藤くんが志村さんの例のアレを食べて病院送りになって、あのコ付きそいで出ちゃったの
そう言って彼女はゆっくりと脚を組みした。
身体がこんな事になっていなければかなり美味しい光景なのだが、正直今の銀八は
それどころではない。
「ああ、そうか…それより。お、俺も瀕死なんだよ…。胃薬くれよォ」
「…その前に問題です」
脂汗をたらして今にも倒れそうな銀八とは対照的に、彼女は一切冷静な態度を崩さず
そう切り出した。
「…ハァ? そんな場合じゃねえんだって…。もうヤべェんだって…」
わけが分からず、そしてわけを考える余裕もなく、ヨロヨロと伸ばした男の手はあっけなく
弾かれてしまう。
「第一問!黒にピンクの水玉の私のお気に入りの下着は一体何処にあるのでしょう?」
絶望的な表情で今にも崩れ落ちそうな男を尻目に、細い指が胃薬の箱を突つく。
「え?あ、…」
「さあ、何処でしょう?」
最初はわけが分からず、きょとんとしていた銀八だったが、すぐに思い当たる事があったのか、
青い顔を更に青くしてガタガタと震えだす。
「いや、あのー。え?それ今…ぐ…!」
なんとか誤魔化そうと言い訳を考えてはみたものの、腹部の激痛と目の前の氷のような視線が、
思考をまとまらせない。
「…そ、それ答えたら胃薬頂けるんですか…?」
「…………」
とうとう観念した男が縋るように見つめてくるが、彼女の表情はぴくりとも動かない。
「いやあの…つい出来心で…愛しさのあまり…っつーか、ムラムラが治まらなくてっつーか
 ぐはあ…!」

その日、銀魂高校では病院送り一名。軽症者数名。の他、意識不明の重体一名を出す大惨事となった。




3−Zお題より。  凶器:食べるもの?







20090601 ECLIPSE





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