初雪が降って、辺り一面が真っ白になった。
たまには息抜きも必要だとクラス全員を連れて校庭へと出れば、先客がいる。
どうやら何処も考える事は同じらしく、数クラスの生徒たちが思い思いに遊んでいる。
かまくらを作ったり、雪だるまを作ったり、お約束の雪合戦も始まっているようだった。
「ぎゃっ」
次々と雪まみれになっていく人々を見ながら慌てて校庭の端に避難した。
いっしょに遊びたいのは山々なのだが、生憎今日はジャージを持って来ていない。
びしょぬれのままこの後数時間を過ごすのだけは避けたいし。
…まあいざとなったら後輩のいる保健室で乾かせば良いのだが、質の悪い侵入者が
いないとはかぎらないので。と、カワイイ生徒たちを見守る先生に徹する事にした。
「オーなんだァ?こういうときにゃあ、先頭を切る女がよう」
すると銀八がめざとく自分を見つけて近づいてくる。
「だって、濡れたくないんだもん」
むうっと頬を膨らますと、煙草をくわえた唇が緩く上がった。
「ジャージねェんか」
「うん」
スニーカーがあっただけマシだった。そう言うと、自分の隣に立って同じように校庭で
遊ぶ生徒たちを見渡していた銀八が楽しそうに笑いながらそっと指を絡ませて来た。
「風邪でもひかれちゃあ、たまったもんじゃねえからな」
冷たい自分の指とは違って、大きくてごつごつした銀八のそれは暖かい。
「銀八、手ェ暖かいね」
「…心が冷たいからなァ」
「ふうん」
そうは言いつつも、誰よりその心が優しくて温かい事を知っている。
そっと瞼を閉じていると、頬に先ほどの暖かさが触れた。
「どっかで、暖ま……グアッ?」
不意に途切れた言葉とぬくもりに目を開けば銀八の姿がない。
「ぎ…?」
よくよく見れば、足下に無惨にも崩れ落ちている。
それから、やけに静かになった事に気づき辺りを見渡せば、周りは屍の山。
「ぎゃーっはっはっはっはっはー!!!」
神楽の勇ましい勝利の笑い声が広い校庭に響いた。
3−Zお題より。 雪合戦の勝者。
2009 ECLIPSE