「なーなー。良いじゃねえかよう」
隣の男がしきりに話しかけて来る。
職員室で机が隣のコイツは前からあれを貸せとかこれを頼むとか、無駄口に加えていろいろうるさかった
が、今日はもうホントウザイ。
「うるさいですよ。銀八先生」
ぴしゃりと言い放ってもヤツはにやりと笑うだけでちっとも気にしない。思わず大きなため息が漏れた。
それもこれも自分がいけないのだ。
昨日、この男の愛の告白を自分は受けてしまった。
一夜明けた今となっては上手い事だまされたとしか思えないのだけど、昨夜の銀八はいつもと違って眼が
キラめいていて流されるように頷いていた。
しかし、自分たちの職業は教師。出来れば職場である学校内では内密にしておきたい所なのに…
「なんだよツンデレか?昨日はあんなにかわ…グハッ!」
顔を寄せてきてとんでもない事を口に出しそうになったそいつの鳩尾に一発決める。
「用もないのに、話しかけてこないでください」
「…てーっ! じゃあ、あれだ。腹が痛いから保健室つれてってくれよー」
「もう、ホント死んで」
なかった事にしたい。なんでこんな馬鹿に。
「カリカリすんなや。生徒が気にするぜ?」
学園一の美人教師なんだからよ。と、不敵な笑みを浮かべる男にまた一つため息を付いた。
「…消しゴム貸して」
昨日の一切合切を頭の中から消せるヤツ。
「あー…。 そのゴムは忘れた。けど、ちがうゴムはたっぷりあ…グハッ」
すべてを言い切るその前にもう一度拳を食らったダメ教師は昼休みを待たず机に沈んだ。
3Zお題より。 消しゴム忘れた
2007 ECLIPSE
ブラウザバックでお戻りください。