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ー」
昼ご飯の片付けをしていたに神楽が近づいてきた。
「なあに?」
「ちょっと出かけてくるアル」
洗い物をしていた手を止めて振り返ると、そわそわと落ち着きのない様子で、そう言う。
「良いよ。でも夕飯までには帰ってきてね」
「ウン」
珍しく、こそこそと内緒話のような小声で話す少女に合わせるように、小さな声で返事をした。

今日は、10月10日。
銀時の誕生日で、もちろん夜は誕生日会を行う予定だ。

「ドコ行くの?」
「…プレゼント…」
「買いにいくの?」
「まあ、…アレあるヨ。気が向いたから…」
そっけない態度をとりながらも、ほんの少し恥ずかしそうにしている神楽に、は微笑んでお財布を取り出した。
「カンパしようか?」
普段貰える少ないお小遣いは酢昆布に消えてしまってるのを知っていたので、
なにを買うつもりなのかはわからないが、ちょっとでもないよりはマシだろうと申し出ると、神楽は暫く迷っていたようだったが、やがて こくり と小さく頷いた。
「じゃあ、100円…」
頬を染めて普段勝ち気な性格がウソのような小さな声。
「えっ?そんだけで良いの?」
吃驚しておもわず大きめの声をあげると、目の前の少女は不思議そうに首を傾げた。
「100円大金アルヨ?」
「…そっか。じゃあハイ、100円」
そういえば万事屋の子達は100円でも大金だった。と、思い出したは、ほんの少し悲しくなりながらも、財布から100円玉を出して神楽の掌に乗せてやる。
「ありがとう!」
「どういたしまして」
そうしてるうちに新八が台所にやってきた。こちらも神楽と同じように声を潜めている。
どうやらプレゼントは二人で買いにいくらしい。
本当に銀時はこの子達にとって大切な存在なのだと、改めてわかって、はとても嬉しかった。
「神楽ちゃん、銀さんがトイレ入ってるうちに行っちゃおうよ」
「新八ー、に100円貰ったアルヨ」
「え?あ、ありがとうございます!」
「良いよ。でも、100円で足りるの?」
「ハイ!100円大金ですよ!」
「…そうね」
思わずほろりと涙をこぼしたに気づかない子供二人は目をキラキラさせている。
「あ、そうだ、帰りにケーキを受け取ってきてもらっても良い?」
新八がいるなら大丈夫だろうとお願いした。
「「了解しました!」」
元気な声と共に二人は玄関を飛び出していった。





それが数分前の事。
暫くして、片付けも終わり万事屋のソファで雑誌をめくっていたの隣に、トイレから戻ってきた銀時がドサリと腰を下ろした。
雑誌を読んでいる振りをしながらも、子供二人がいない事の言い訳を考えていただったが、隣の男は珍しく何もしゃべらない。
気にしていないならそれでも良いかと思ったその時、ぼそりと小さな呟きが聞こえた。
「コレ絶対あの女のせいだよなァ」
しかしそれだけではなんの事かわからない。
「…何の話?」
あの女と言うからには、自分の事ではないようだが、はて?と、雑誌から目を離しその横顔を見れば、いつもの腑抜けた顔がほんの少し眉をひそめていた。
「ここんとこご無沙汰だって話」 
「何が?」
「ナニが」
「………」
それを効いた途端、は隣の男以上に眉をひそめた。
いつもの下ネタか。
ならば付き合うのはバカバカしいと、再び視線を雑誌に戻す。
しかし、そんな彼女の態度を気にした風もなく、銀時は独り言のように言葉を続けた。
「可哀想になァ。あれでも一応女なのに…顔とかしばらくは腫れたりするんだろうなァ」
「……だからそれ、誰の事言ってるの?」
銀時のその一言でそもそもその「女」は誰だかわからないままだったのを思い出す。
自分と…その、ご無沙汰なのと、その女性がどう関係してくると言うのか。
内容が内容だけに、気分は良くない。
少しだけムッとしながらも、極力顔に出さないよう平静を装って聞いてみると返ってきた答えは想像以上だった。
「これ書いてる奴」
「そう。………ええ!?」
思わず顔を上げて銀時の顔を凝視するに、その男はいつも通りのふ抜けた表情で何処かを見ている。
「だいたいよー、どんだけ放置プレイさせるつもりだよあの女」
「ぎ、銀時さん…?」
「俺達ァいちゃこらしてなんぼだろうがッ、それをヅラとか…バカ杉だとかに寄り道ばっかしやがってよォ」
予想も出来ない展開に、固まるをよそに銀時はしゃべり続ける。
「こりゃもう、実力行使に出るしかねェと思うんだよなァ」
言ってから、ようやく銀時がチラリとを見た。
ばっちりと重なったその目は案の定少しも笑っていない。
「あれでも一応女だからなァ、四分の二殺しの刑くらいで勘弁してやるつもりだけどねェ」

…それって半殺しィー!!!?

声泣き叫びが聞こえたのは気のせいではないだろう。
あわてては暴走しかけた銀時の説得を始める。
「銀ッ、い、いくらなんでも人殺しはダメだよっ?」
「あー?殺しゃあしねえよ。四分の二だけだって…」
「半分でもダメだってば!ね、お願いだから落ち着いて」
必死で肩を揺すると、銀時はほんの少し考えるように黙った。
「………」
「ぎんとき?」
恐る恐る声をかけるを、血走った目がじっと見つめてくる。
「…でもまあ、お前ェが今から誕生日プレゼントになってくれるって言うなら今回は見逃してやらないでもねえケドなァ」
「えっ?」
「せっかくガキ共もいねえようだし?」
「で、でも…昼間っからは…」
慌てて後ずさるが、伸びてきた腕にあっという間に捕まってしまった。
そのまま引き寄せられて、銀時の膝の上に倒れ込む。
「じゃあ、やっぱ死んでもらうかー」
声だけは間延びしたいつものモノだが、にじみ出る殺気が半端ない。
「…ちょ、それは…」
「あーあ。可哀想になァ。が「ウン」って一言えば一人の人間が助かるのになあああ」
「………」
だらだらと冷や汗が滲むも、は顔を上げる事も出来ず、銀時の膝を見ながら固まるしか出来なかった。
「じゃあ、やっぱ死…」
「銀ッ」
さすがにそれは…と、物騒な声を遮った途端、視界がくるりと回って、は銀時の膝の上に横抱きに座せられる。
「…………ッ」
「まいどー」

イエスとは言ったつもりは毛頭ないが、男はそう捉えてしまったようだった。










「はあっ…ん…」
喉元をきつく吸い上げられて、ふるりと身体を震わせたは湿った吐息を吐いて快感に抗うように小さく頭を振った。
着物の合わせ目から侵入した銀時の手が内股を撫でて、必死に閉じようと抗う股の間で怪しく蠢く。
横抱きの姿勢のまま尻が銀時の足の間に嵌っていて、ろくに動けないは唯一自由になる右手でなんとか阻止しようとしたのだが、女の力では全く歯が立たず、人差し指が敏感な付け根を掠った。
「んあっ…」
思わず声を漏らすと、開けた胸元に舌を這わせていた銀時が小さく笑ったのを皮膚の上で感じて、羞恥で全身が熱くなる。
「い、…や…ッ」
「イヤじゃねーだろ?」
必死に首を振っても、目の前の銀色の頭はの肌から離れる気配はなく、ピンと起っているであろう乳首を唇に食み先端を舌で突いた。
「いっ…ああっ?」
突然の強い刺激に反り返る身体を背中に回った銀時の腕が強く支える。
その間も、足の間の手は止まる事なく動いて下着を膝まで下ろして露になった其処を集中的に攻めだした。
「あ、ン…ッ アアッ」
滑りを帯びる花弁に沿って人差し指がなぞるように幾度も上下して、硬くなった芽を摘まむと、愛液がトロリと溢れる。
「はっ、…美味そうなのが溢れてるじゃねえか」
「やあっ…、ぎん…ッ」
頭が痺れるような快感にいやいやと首を振って請うと、胸を愛撫していた銀時の顔があがって ぺろり とこぼれた涙を掬いとった。
「…ダメだってーの」
「ぎ…、んっ…あっ」
「こんな色っぺーを見せられて、今更止められるわけねえだろうが」
普段聞いたことのないような優しい音色で、普段見る事の出来ない愛しげな視線で、銀時はを溶かしていく。
しかし、そのうちに くちゃり と濡れた音まで漏れ始めて、はぎくりと身体を竦ませた。
ッ」
「…ヒッ、あ、アアッ」
腕を突っ張ってふるふると頭を振るが、そんな乱れる姿も男にとっては劣情を煽るだけなのか、さらに不埒な指は勢いを増し、その奥の孔に潜り込んできた。
膝の辺りで止まっていた下着はいつの間にか剥ぎ取られて、脚は銀時の指が動く度、だらしなく開いていく。
「あああっ!!!」
指の数が一本、二本…と増えて膣内を激しく掻き回して、達しそうになったの身体が小さく痙攣し始めると、今まで我が物顔で占拠していた指が引き抜かれた。
圧迫感がなくなっても、ピクピクと震える身体は止まらないまま、銀時を跨ぐように座らされる。
向かい合う姿勢に、潤んだ瞳を上げると唇が重なった。
「はうっ…、…ん…」
ねっとりと咥内を這い回る舌が上顎をなぞっての其れに絡み付く。
暫くして、唇が離れるとゆっくりと力の入らない身体を持ち上げられ、先ほどまで銀時の指が入っていた場所に、熱い熱が押しあてられた。
もったいぶるようにぬるぬると表面を銀時の男根が行き来する。
「ぎ…ッ」
その熱に震えた小さな身体が逃げないように腰を固定して視線を合わせると、潤んだ瞳がじっと銀時を見つめた。
…」
耳元で熱の籠った声が愛しげにその名を呼ぶ。
と、同時に身体が降ろされて、熱い契りがの内へと押し入ってくる。
反り返る身体を眩しそうに見つめた銀時は耐えられないように、腰を突き上げて内部を抉った。
「銀…ッ!!!!」
息が詰まるような圧迫感と、焼け付くような熱と、何も考えられなくなるような快感に、悲鳴のような声で喘ぐように銀時を呼ぶと、口づけが降ってくる。
早く解放されたいのに何故か、このまま、このままと、何度も繰り返し願った。










忙しなかった呼吸がようやく治まって、乱れた着物も直させてもらえないまま、まだは銀時の膝の上に横抱きに捕われていた。
「銀…」
「ああ?」
呼んでも胸に顔を埋めた銀時はその感触を堪能しているのか、動こうとしない。
「も、だめ…」
咎めるように視界に広がるくるくるの銀髪を一房摘んで引っ張った。
さすがにこれ以上されると、こちらの身が持たない。
それに、もう少ししたら子供達も帰ってくる筈だ。
銀時も一応わかってはいるのか続きを始めそうな気配ははないが、解放してはくれない。
「…もう」
引っ張っていた髪の毛を離してそっと撫でると男はくっと小さく笑った。
「ごっさんでしたー」
力の抜けた穏やかな声がの胸の上におちる。
「…お粗末様でした」
ため息と共にそう言えば、胸の上の頭がふるふると振られた。
何事かと首を傾げると、小さな声が聞こえる。

「いや、スゲエご馳走だったぜ?」

くるくるの髪の毛の間から微かに出ていた耳がほんの少し赤く染まっていたように見えた。…気がした。








2009.10.10 ECLIPSE






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