カカシはいつも先を走ってる。
自分が生まれた時には、既に付いていた時間の差。
それを必死で埋めようとするけれど、埋まる所か、あっと言う間に見えなくなって。
カカシの姿を探すように、追いかけるように、自分を鍛えた。
・・・・・・筈なのに!!
You know what?
今日も今日とて、同じ事の繰り返し…。
カカシに向って繰り出した拳が空を切る。
手応えを感じたと思っても、掌であしらわれるだけ。
「はい、はい。見切れてるよ、の動きは。」
難なくかわされて、スピードがこうも違うのかと泣けてきた。
カカシとの出会いの記憶はなくて。
気が付いたら、追いかけていた。
木登りも駆けっこも、いつも先を行く。
そんなカカシを、素直な憧れの眼差しで見ていた幼い頃。
でも自分の二歩も三歩も先を行くから。
平然とやり遂げるように見えたから。
悔しい、勝ちたい、という気持ちばかりが前にいて、
その後ろにある本当の気持ちに気づくのが遅れた。
好きなんだと気づいた今でも、それは大して変わらず、やはりカカシに勝ちたい。
勝ってみたい。
こんな風に思うのは可愛げがないのだろうか?
そんな自分への問いかけが僅かな隙を作って、カカシの足払いにひっくり返された。
「考え事なんかしてちゃ、だめでしょーよ。」
尻もちを付いたに、カカシが手を差し伸べるのだけれど。
その手が握られる事はなく。
掌を地面に付けて腕を張り、背中を反らして、の足は勢い良くカカシの腹部に入り込んだ。
綺麗に決まった蹴り。
身体を折り曲げて宙を飛ぶカカシの姿。
立ち上がって、その行く末を見守るけれど。
僅かな期待もすぐに消えて。
飛んでいたカカシの姿が白い煙に包まれた後、一つの丸木が地面に落ちた。
やはり変わり身の術。
はそのままへなへなと地べたにしゃがみ込んで、ポロポロと涙を溢し始めた。
悔しい。
実力の差がはっきりと分かる。
それを真横にある木の上から眺めていたカカシは、の前に降り立ち、膝を曲げて座り込んだ。
自分の太腿に肘を付き、掌に頬乗せ、小首を傾げる。
「あのね・・・。泣く程の事でもないでしょ?」
IRREGULAR LOVE ミカさんより
少し困った顔をして。
でもその口調は見下す風でもなく、和やかに。
「だって・・・カカシずるい。」
決定打を与える事は出来なくても、一発位綺麗に決めたい。
全部流されて、かわされる。
やっとカカシと、同じ物を見れる高さまで来たのに。
「ズルイってね・・・。オレは一応、お前より何年も多く忍をやってるんだし、
こんな事言いたくないけど、お前がオレより強かったら洒落にならないの。」
「なんで・・・?」
「好きな女くらい守らせてくれない?いざって時に守られてたんじゃ、格好がつかないでしょーよ。」
そこんトコ分かってくれると、嬉しいんだけどねぇ・・・
と呟いた顔は、“決まりが悪い”そんな風。
自分の頬を指で軽く掻いたカカシは、最後に小さく溜息を付けた。
「なに、それ・・・。」
「そう来るの・・・?愛の告白なんだけど?」
「うそだぁ・・・・・・。本当?」
「本当に。」
カカシは自分の頬に当てていた右手で、の頭を優しく撫でた。
はカカシの胸の中へ飛び込んで。
「うれしい!私ね、ずーっと好きだったんだよ。カカシの事。時間の長さなら負けないんだから。」
「それもオレの方が勝ってると思うよ?」
「う・・・どういう事?」
「初めてを見た時から、オレが守るって決めてたから。だからオレは強くなったの。その頃からだからねぇ・・・」
「やっぱり私には、カカシに勝てるもの、一つもないの?」
「そんなにオレに勝ちたい?」
「・・・う〜ん・・・今は少し分からなくなってきた。前はね、カカシが好きでどうしようもなくて。
でもカカシは、私を置いてどんどん先に行っちゃって・・・。カッコいいし・・・もてるし・・・。」
だから悔しかったのかも・・・とやわらかな言葉をカカシの胸に囁いた。
「がオレに勝てる方法ならあるよ。」
「・・・?」
「試してみる?」
「うん。」
が返事をすると二人の姿は風に消えた。
甘く漂う意識の中で思い出してた以前の事。
「何考えてるの?」
カカシが連れて行った場所から、すぐに戻って来れないのはいつもの事だけど。
何かを感じ取ったカカシの声で、元の場所に戻ってきた。
「・・・ん?初めてこうなった時の事、思い出してたの。」
胸に埋めた顔を上げて、カカシを見上げれば、優しい瞳が待っていた。
「勝てる方法ね・・・。」
はカカシの瞳を見つめ、クスッと小さく笑う。
「本当だったでしょ?」
「・・・・・・そう?あれから負けっぱなしのような気もするけど。でもね今日も・・・。」
「な〜に?」
「いっぱい負かされたいな・・・。」
「そんな事言って、知らないよ?どうなっても。」
背中にシーツの感触を感じれば、カカシの唇が軽く触れた。
すぐにちゅっと音をたてて離れた唇が、再び降りて来て、熱い舌が絡んでくる。
唇から漏れる喘ぎすら吸い取るような激しい口付けに、身体の芯が溶けだした。
「・・・?」
「・・・?」
薄っすらと瞼を開ければ、カカシの瞳が放つ甘い罠に絡め取られる。
目を閉じる事も、視線を逸らす事も出来ずにいれば、
下腹を掠めるように撫でていたカカシの掌がゆっくりとそこに触れた。
「キスだけで濡れてる。」
「ちが・・・う・・・。それはさっきの・・・。」
「さっきのねぇ・・・。オレ、中で出してないし、綺麗にした筈だけど。」
意地悪く笑うカカシの指が、ヌルリと泉の中に沈んだ。
「んぁ・・・あ・・・。」
「ほら、溶けだしてる。自分でも分かるでしょ?」
ゆっくりとした指の動きは、穏やかな波のようで。
寄せては返す潮騒が部屋の中に響いた。
「もうここは欲しそうだね?」
カカシが指を挿し入れれば奥まで誘い込んで、引き抜けば悲しげに糸を引く。
「そんなにオレが欲しい?」
言葉と同時に宛がわれた硬直の先端。
「・・・・・・う・・ん。」
「めーいっぱい、啼かすけど?」
「・・・それがいい。そうして・・・おねがい・・・。」
の放った言葉に、カカシの雄は一層熱く猛る。
「オレの弱み、全部握ってるのはそっちじゃないの。」
壁を押し広げながら一気に入り込む楔に、の口から悲鳴混じりの嬌声が上がった。
奥底を突き上げられて、何度も駆け上がっては墜ちてゆく。
飛びそうになる意識を、カカシに繋ぎとめようと瞼を開けて。
普段は隠れた鋭角な顎に手を伸ばす。
するとカカシは律動を止めて、の掌にそっと口付けた。
でも次の瞬間、また奥深く挿し込まれた肉の杭。
ずるりと落ちたの掌がカカシの肩を強く握った。
「ぁ・・・っ・・・カカ・・シ・・・んっあッ!!」
―― こんな風に負けるなら、何度だっていい・・・。
心の声に重なったカカシのくぐもった声と、自分の収縮に合わせてドクドクと吐き出す彼の欲望。
体内がカカシの熱さで埋め尽くされて。
ふわりと、身体が合わされば、その重みが心地良く。
「オレに勝てるのはだけだよ。」
霞みゆく意識の中で、カカシの囁く声が聞こえた。
2007/06/21 かえで
IRREGULAR LOVE のミカさんへ捧げさせて頂きました。
絵師様で文師様という、才能溢れたお方です。
そちらの一枚のカカシ画。
「あのね・・・。」
というカカシから、妄想が膨らみまして、この作品にv
英語監修Mさん(笑) ありがとうv