此処は 【 人生色々 】 上忍待機所

その名の通り、人生は色々だ。






桜舞う






『 はぁ〜〜彼氏欲しっっ!! 』


首をカクリと曲げて呟いた心の声は、他の皆に聞こえそうな程大きかった。
吐いた溜息に項垂れる格好。
でもその様子から、深刻な問題では無い事が分るだろう。

……たぶん。

いや、私にとっては至って真面目、深刻な問題なのだけれど。



季節は巡って春麗、外は桜が満開。
だけど私の心と体は摂氏零度。
真冬並み。
移りゆく季節の初め、季節の変わり目というヤツは、いつもこんな気分にさせる。

だって夏は夏休み。
勿論、忍者にだって夏休みはある。
半ば無理やり、もぎ取る感じだが。
海や山、湖なんかに行って、ひと夏の経験……なんてトシではもうないけれど、開放的な気分になるじゃない。
浴衣を着てお祭りに行ったり、花火を見たり。
まぁ女の子同士でも、それは楽しいんだけどね。

秋は涼しくなって来て、人肌が恋しくなる。
木々達は葉を赤くして、一枚〜二枚〜三枚〜ってこれじゃ怪談か。
葉が落ちて行く度に寂しくなって行って。
寂しさを秋の味覚で誤魔化そうもんなら、後々大変な事になるし。

冬は最悪だ。
只でさえ寒いのに、身も心も凍る、一人身には辛い連続イベント。
世界中の恋人達がSEXしてる日でしょ。
それで姫初めになって、バレンタインデーだの、ホワイトデーだの。
あーやだやだ……。

そして春。
恋が実る事を、春が来たなんて表現する。
今の季節は春だけど、私には春が来ないんだってば。
近所の猫にさえ春が来たってのに。
恋人見つけて、サカっちゃってさ。
私も盛りたいっての!

そういえば、最後にえっちしたの何時だっけ?
誰とだっけな……。
秋に付き合ってた人?
短時間プレイが更に短くなって愛想尽きたんだ。
愛撫を端折るな!
濡れてからの愛撫が気持ち良いんだから。
すぐ入れるもんだから、いやになったんだよな〜。
あ、その後も一人居た。
クリスマスの間に合わせで付き合った人だ。
ポイントがずれるというか、読めない男。
喘ぎ方で解れって!!

気持ち良いSEXは、この所ご無沙汰……。
気持ちがあんまり入ってないんだから、仕方が無いのかしらねぇ……。


今度は流れる雲をぼんやり見つめて、向い側に座る男を見てみる。
細身の長身、銀色の髪。
微笑むその瞳は穏やかに、でも強くて頼りがいのある男。
分析力、行動力、共に花丸。
忍術の数は桁違いだし、必殺技も持ってるし、とんでもない瞳術も持ってる。
それ故にヘタレちゃう事もあるけど、あれだけの術を使うんだもんね。
チャクラも切れるよ。
っていうか、ギリギリまで良く頑張ってるよ。
でさ、そのヘタレちゃう姿がまた可愛かったりするんだけど。
う〜ん頑張ったねヨシヨシって、あの銀髪をぐりぐりしたい。


『 …………それにしても
        良い男になったよな……カカシ 』



モロに好みで大好きだったりするんだよね、カカシの事。
でも、別格っていうのかな。
一つ上で、幼馴染って言える位、昔から知ってて。
何度も任務で一緒になってて。
蓋を外したら溢れそうだから、気持ちを自然と押さえてた。
今まで友達で付き合ってて、今更??っていう感じが強くって。
そう、今更好きって言ってどうするのよって。
彼氏の相談もしたし、愚痴も言った。
カカシの彼女の話はあまり出なかったけど、それなりに相手が居たのも知ってるし。

女は愛するより、愛された方が幸せになるって聞いたしな。
それに一番好きな人より、二番目に好きな人の方が良いなんて言葉も誰かが言ってたな。


色んな人を見て来て、付き合って来て、結局はやっぱりカカシかい!!
幾らなんでも、遅いでしょ。
今更でしょ。
散々ってわけでも無いけど、男の愚痴を聞かせておいて「貴方がスキです」なんてね〜言えないよ。


あ、イチャパラシリーズ変わってる。
新しいの出たんだ。
まぁ、カカシがバイブルとするのも、解る気がする。
同性の部分は共感出来るし、異性の部分は勉強になるし。
男が読めば女心が、女が読めば男心が解るなんて、ありがた〜い本だ。
えっちなシーンもいっぱいあるけど、またこれがツボを心得てたりするし。

それをいつも持ち歩いている位なんだから、やっぱりカカシは女の事が解るのかなぁ。


『 …………カカシと付き合う女は羨ましいっ!! 』


頭良し、見かけ良し、性格良し。
えっちも絶対上手い筈。
試してないから分らないけど……。

って何考えてるんだか……。

ヤバイ、頭の中、花が咲いてるッ。
違う、花ならまだいい。
胞子が飛び交ってる!!
これを俗に腐ってるっていうのか?
というより、人の頭を腐らせるカカシが悪いんだ!
アイツのキノコから、フェロモンという名の胞子が飛び出してるんだ!!そーだ、そーだ。


……ナニ自己完結してるんだか。

あ〜〜でもやっぱり良い男っ!!


「……さっさと食べちゃえば良かった」


ポロっと出た独り言に、カカシが笑いながら顔を上げた。

ヤバイ聞かれたっ?

「何がさっさと食べちゃえば良かったの?」

やっぱり聞かれてた……。

そんな風に聞きながら、私の隣に腰掛けてくる。
ソファーの沈む感じが伝わってくるんだから、近いって。

横を向いて見れば……やっぱり近い。

「えっ、あ、パン!!」
「パン?」
「そう、パン。カビ生えた」
「最近暖かいからねぇ〜」
「そうなのよ、暖かいからカビ生えちゃったの。食べそびれちゃってねぇ」
「そうか」

おお、取りあえず納得したみたいだ。
我ながら、マシな言い訳を思い付いたもんだ。

そうして視線をカカシから外すと、右耳がまた気持の良い声を拾い始める。

「てっきりねぇ……」
「…なに??」
「オレの事かと思ったよ」
「は、はぁ??な、なんでカカシなのよっ!!そ、それに男に女が食べられるんでしょうよー」

焦った、本当に焦った。
思わず目を合わせれば、ニヤリと笑うカカシが居て。
「男にだって食べられる所、いっぱいあるでしょ?」なんて聞いてきた。

うーーーーーーーーん……?男にも?あるねぇ。
唇でしょ、胸板でしょ、そんでもって………アレ。
カカシのアレ…………うゎお!

想像したら、顔が歪んでしまった。
イヤーーーカカシが笑ってる。
嵌められた……。
こういう時は頬を染めて「しらないっ!」って怒ったりするもんだ。
頭にキノコが生えていようとも!
なのに思い浮かべて口角を上げるなんて、私は変態だ………。
がぁーーーーーー!

「今さ、すっごく楽しそうな事考えてなかった?」

そういうカカシの声が楽しそうだってば。

ええ、考えましたとも。
美味しそうだな〜〜ってね。
だけど正直に言えるか!
まだ二十代の乙女だ!
心の中で自分に叫ぶくらいはイイだろう。

「べ、別に考えってません」
「ねぇ、
「なによ」
「やっとオレの魅力に気が付いた?」
「なに?どうしてそう話が飛ぶのよ」
「飛んでないよ。最初から聞こうとしてたの。ただ聞く前にがあんな事言ったからさ。食べちゃえば良かったって。だから〜話が反れたの」
「そうでございますか……」
「ハート型にヤケドしそうな位、熱い視線送ってくるんだもんね、ってば」
「そ、そんな事ないでしょーー」
「あのさ、幾らなんでも分かるって」

二の句が継げない。
そんな事言われて、なんて答えたらいいのやら。

黙っていればカカシが話し出す。
耳を疑うような言葉を。

「そろそろを束縛してもい〜い?」
「へっ?……ど、どういう事で…すか…?」
「だから、そろそろオレ達付き合わない?って言ってんの」
「今更?」
「今更ってね、オレは待ってたの。オレの所に戻ってくるまで」

戻ってくるって、どういう事よ。
心で叫ぶ問いかけが声にならないでいると。

「色んな経験したでしょ?他の男とも付き合った。最初からオレだけに縛り付けてるもの、どうかと思ってね。冒険させた訳。好きな子には旅をさせろかねぇ〜」
「それって、親が言う台詞だってば」
「で、旅した結果は?やっぱりオレが良いでしょ?」
「すっごい自信」
「まぁねぇ、の事は分かってるからさ、色々と。それに一回食べたらヤミ付きになるよ」
「なにが?」
「オレの味」
「あのさぁ、今って告白の場面だったりするよね?」
「だろうね」
「だろうねって……まいいか。……ねぇ、今からでもいいの?」
「今付き合おうって言ってるんだけどねぇ」
「私処女じゃないよ」
「オレも童貞じゃないし」

カカシの言葉には吹き出しちゃった。
今のカカシが童貞だったら、なんてねぇ……。
私も他の男は知ってるし、カカシの過去にはヤキモチ妬いたりしないな。
童貞な方が怖いかも。

「お互い他の芝生も、他人の芝生も見て来たでしょ」

それって、もう目映りしないでしょ、って事?
お互いだけを見れるって事か。
色んな選択肢の中でお互いを選んで、他の道を過程し想像するなんて事もないわけか。
浮気予防にもなったりして。

「で、オレの女になる、ならない?」
「なります!」

快諾した私にカカシは満足そうに微笑んで。
したら、いきなり……
立ち上がって、私を小脇に抱えた。
な、何故?
なんで抱えられるわけ?
そうして叫んだ言葉は、遠くに座るアスマに向けて。

「アスマー!オレと早退!!」
「理由は?」

アスマの笑いが混じった声は、カカシがするこれからを絶対解ってる。

「花粉症」

カカシの声に鼻で笑ったアスマが近づいて来た。

「発症まで随分掛ったな」
「遅咲きなもんで」
「投薬後、状態の改善は明朝って所か」
「ま、それくらいで大丈夫でしょ」
「借りは返せよ」
「オレ達の任務を変わってくれたらね」

私達に任務が入らなければ借りじゃない、とカカシは言ってるのか。
まぁそうだよね。
待機中だし、何もなければ帰れるわけで。

「ったく、ささっと行け」
「じゃ、後、ヨロシクネ〜〜」

そう言いながらカカシは待機所の窓から飛び出す。
私を抱えたまま。


「つかぬ事をお聞きしますが」
「な〜に?」
「どちらへ?」
「オレの部屋」
「カカシの部屋??」
「そう、文句ある?」
「文句っていうか、ねぇ」
「今までが長かったんだから、いいでしょ。これまで鍛練に鍛練を重ねて修行してきた成果を見せてあげる」
「修行って……」
「上手いと思うよ〜オレ」
「あのさー他の女で上げたスキルでしょうに!」
「文句ある?」
「いえ、別に……」
も上がってるんじゃないの?」
「何が」
「ん?感度」

そうこうしている内にカカシの部屋に着いて、私はベットの上に置かれた。

うん、そうだね。
上がってるかも、感度。
だってほら、もう開いて濡れてるもん。

「私の事、すき?」
は?」
「すき」
「オレも、の事は大好きだ〜よ」



春が来た

春が来た

何処に来た?



私の所にやってきた

外も中も桜が満開

散る事のない桜は 蜜を垂らして 咲き続ける───


「や、カカシ、だめっっ」

「ダメなわけないよね〜。こ〜〜んなに垂らして、締めつけてるのに」

「んッッ、あぁっっッ」

「また見つけた、のイイ所」

「カカシッ、スゴっいぃ」

、コレ無しじゃイケなくなるよ。…オレもそうだけどね。この味知ちゃったから」


昼の桜

夜の桜

宴の終焉は、いつになっても 来る事はない。



2008/04/02 かえで


勢いで一気に書いたヒロイン一人称、おバカ話にお付き合い下さり、ありがとうございました。
時は春。
私の頭も春だったという事で、お許し下さいませ;;

BGM 午後ティー最高♪