「寝室の出窓から見える筈だ。先に行ってろ。」
「うん。」
大きな窓を閉めながら話すゲンマに、は笑顔で返事をして、寝室へ飛び込んだ。
夏祭り 後編
「うわ〜ほんとだ・・・。すごーい。」
寝室の壁面中央にある大きな出窓。
夜空を飾る赤や青の牡丹の光が、一瞬だけ部屋に差し込み、潔く消えて行く。
「ここは特等席だね。」
自分の腰よりも若干低めの、出窓の縁に手を置いて話す。
そんな彼女をゲンマは後ろから囲った。
足を少し後ろに伸ばして、腕を広げて出窓の縁を握る。
の目線に合わせて花火を覗き込みながら、軽く笑って。
「少し小せぇけどな。」
「十分だよ。ここまで見えれば。」
「そうか?」
「うん。」
遠くから聞こえる雷鳴にも似た爆音と、次いで広がる色取り取りの花火。
注ぐ光が飾るのはの横顔。
多彩な色に変化する彼女の肌に、ゲンマの唇が引き寄せられて、うなじの上にそっと落ちた。
ピクリとその感触に反応し、笑いを含んだ甘い声でゲンマの名前を呼ぶ。
「ゲンマ?んっ・・・。」
ゲンマはスッと立ち上がり、の首を己に向けさせると、抱きしめながら唇を重ねた。
最初は甘く、軽く触れ合って離れて行く。
それを二、三度繰り返して、段々と深くなって行った。
自分の身体にを凭れ掛けさせるように抱きしめて。
深く絡めれば、甘い声を漏らして震えるが愛おしく、何度も彼女の舌を追い掛けた。
一際大きな爆音と共に、ゲンマの唇が軽く音を立てて離れる。
「、花火。」
ゆっくり瞼を開けるの視線を、花火に促す。
が思い出したように背筋を伸ばせば、窓の奥に連射の花火が上がっていた。
「わりぃ、花火は見せてやるって約束したんだったな。」
「そうだけど・・・。謝らなくても、別に・・・。」
「木の葉の花火、見たかったんだろ?」
「うん。去年は中止になって見れなかったから・・・。」
「だったらはちゃんと見てろよな。」
「・・・ゲンマは見ないの?」
「俺か?」
ゲンマはそう言いながら、再びのうなじに唇を落とした。
舌を這わせて、唇で愛撫して。
「んっ・・・・・・あっ・・ゲン・・・マ・・・?」
大きく開いた浴衣の脇から両手を忍び込ませて、布の上から双方の膨らみを覆った。
ゆっくりと揉みしだき、背中に回った指が留め金を外すと、肩紐のない下着がの胸から離れる。
隙を与えず、すぐに柔らかい肌を楽しむようにゲンマの掌は動いた。
「俺はな、これから濡れてくお前の身体を楽しむ。」
「な・・・に・・・?んっ・・・んっあぁ・・・。」
「お前が花火を見てる間な。有効的な時間の使い方だと思わねぇか?」
「ゲンマ・・・あっ!」
中央の飾りを軽く摘まれて、の首が後ろに仰け反った。
「しっかり見てろよ。花火。」
優しく二つの胸を摩りながらの首筋に口付け、位置を正す。
起き上がったの顔。
その瞳が花火を捕らえたのを確認すると、四本の指が胸の飾りを挟み込む。
「俺にはお前しか見えない。今年の花火がどんなか、教えてくれ。」
「そん・・・なの・・・んっ!あぁぁっ・・・。」
摘まれた胸の先端が、浴衣の中で激しく向きを変えた。
衣擦れの音。
浴衣の中で蠢く気配。
花火の打ち上がる音が聞こえても、その瞳が辛うじて花火を捕らえていても、感じる二つに益々身体の芯が熱くなる。
「ゲンマ・・・んっ・・・あっ・・・。」
ゲンマの手の中で形を変える胸。
サラリとした大きな掌が自由に動き回る。
それに加えて、剥き出しの首筋を余す所なく食べられて、下腹部が痛いほど刺激を求めていた。
だから自然と太ももの内側に力が籠り、身体が揺れる。
「今の音はでかかったな。どんな花火だった?。」
「・・・やしの葉っぱ・・・みたいなのが・・・いっぱい・・・。」
「そうか。」
ゲンマはの胸から右手を外し、下に降ろして、浴衣の隙間に入れた。
カットの深いやわらかな布で覆われた部分には触れず、足の付け根に指を這わせて、太腿を弄る。
ゆっくりと戻ってきたゲンマの掌が、布の上に置かれた。
「熱いな・・・。」
ゲンマが耳元でぼそりと囁く。
彼を求めて熱を上げる其処。
放出されない熱が籠り、溶け出す蜜が空気をも湿らせる。
布の上から二本の指を上下に滑らせた後、その指先が天辺にある小さな粒を捕らえた。
何度か押しては引っ掻いて。
「はぁ・・・んっ・・・」
布越しの刺激に、の吐息が段々と、もどかしそうな色に変わって行く。
下に降りたゲンマの指先が、布の横から入り込りこむ。
水源のある場所を軽く押せば、其処はくちゅっと音を立てて蜜を溢れさせた。
「かなり濡れてるな。」
髪に口付けを落としたゲンマが、嬉しそうに語るのだけれど、の返事は甘い喘ぎでしかなく。
ゲンマの指先が溝の隙間を動く度、水面を撫でる音がする。
その間ずっと両胸を弄っていた左手が胸から離れて、右手と同じく浴衣の隙間から入り込み、腰の位置にある二つの結び目を解いた。
ひらり舞い落ちる一枚の布。
が言葉を発する間も無く、ゲンマは壁との間に入り込んで蜜の滴る華を舐めた。
「あっ・・・んッ・・・」
指で花びらを開き、舌を這わせて、粒を責める。
舌先を叩きつけられる感触に、左右に踊らされる感触。
「あっ・・・ゲンマ・・・もう・・・だめ・・・。」
は出窓の縁を強く握りしめて一気に駆け上がった。
「あッ、あっ・・・んっ、んんっっ!!」
途端に力の抜けるの身体を支えながら、ゲンマは後ろに回り込んで、彼女の身体を自分に凭れ掛けさせた。
先程と同じく、左手は膨らみに、右手は暗闇に咲く華に添えて。
ゲンマの左手はの鼓動を感じ取る。
徐々に小さくなっていく心臓の音との吐息。
再びゲンマの掌が動き始めた。
「んっ・・・・・・。」
やんわりと揉み、時々乳首を弾く。
溝に宛がわれた中指が、滴る蜜を楽しみながらゆっくりと上下に動く。
さっきの余韻が逃げるのを待って、ゲンマの指が濡れる粒を撫で回した。
静かに、優しく、緩やかな動き。
「はぁ・・・・・んっ・・・・。」
ゲンマはもう一度、快楽の波にを誘いこむ。
誘われて、漂うのだけれど。
それはゆるりとした波でしかなく、の腰が舵を取り始めた。
「どうかしたか?。」
ゲンマがわざとらしくに問いかける。
「んっ、んっ・・・ゲンマぁ・・・。」
一度大きな波にさらわれた身体は、高波に上手く乗れない。
激しい波にさらわれたいのに、その波が逃げて行く。
ゲンマがその波を起こしてくれてくれている様で、逃がすから。
「なんだ?言ってみ?」
緩慢な動きを繰り返しながら、もう一度問い掛けて。
「もう・・・少し・・・・・・。」
「もう少し?」
「・・・・・・・・・早く・・・。」
「早く?」
「はぁ・・・・んっぁ・・・・・・動かして・・・・・・。」
ぎゅっと目を瞑ったが、今にも泣き出しそうに見えて。
ゲンマは胸を引きよせた。
の背中にピタリと自分の胸を当て、強く抱きしめる。
こめかみや頬に唇を落として。
「あんまりお前が可愛いんで、苛め過ぎた。わりぃ・・・。」
耳を甘噛みしながら、そう囁いて。
もう一つ言葉を付け加える。
「だけど、。良い女になったな。」
出会ったのは子供の時。
再会して、想いを告げて。
初めてを抱いたのは自分の誕生日。
が初めて、男に抱かれた日でもある。
ゲンマは最後の言葉と同時に、指の動きを速めた。
「んっ!!あぁっっ・・・あッ!!」
「元から良い女だけどな。ずっと俺が惚れてたんだ。」
「あっ・・・んっ、んっ、んっ!!」
「俺にとって、最高の女だ、。」
円を描いて敏感な粒を責めたてていた中指が、の中心を貫いた。
「あっくッんっ・・・・あっ・・・。」
ゆっくりと掻き混ぜて、髪に口づけを落としながら追加するもう一本。
「あッうっっん・・・。」
「、花火。」
緩やかなピストンを繰り返して、ゲンマは髪に囁く。
「・・・んっ・・・もう・・・む・・・はぁぁ・・・んッ!」
徐々に派手さを増す花火。
「最後は約束通りゆっくり見せてやる。待ってろ。」
「あッ!!ひゃぁっ!!んっ、んっ・・・あッ!」
早さと激しさを増すゲンマの指。
間接を折り曲げ、内壁を擦り、親指が粒を押さえ込む。
「ゲンマ!!」
ゲンマの指を締めつけるの中。
「、受け止めてやるから安心しろ。」
その言葉と同時に其処は激しく収縮し、の身体から力が抜けた。
「っん・・・・・・。」
ゲンマは両腕でしっかりを支えながら、波が引いて行くのを少しの間眺めた。
「。」
普段より深く呼吸するが瞼を開ける。
「見えるか?花火。」
「・・・・・・うん。」
窓の外には錦冠が幾重にも重なり。
「そろそろ終わりだな。」
「綺麗だね・・・。」
「ああ。」
数えきれぬ程の花火。
金色の花が開き、花びらが放物線を描いて、細く長く垂れ下がる。
最後には色濃く、その形を大きくして、夜空を飾る花は涙を零しながら、静かに消えて行った。
の足が少しづつ自分を支える力を取り戻す。
ゲンマに掛るの重みが徐々に軽くなって。
「大丈夫か?」
「・・・うん。」
穏やかにが微笑めば、ゲンマは自分の帯を片手で解き、浴衣を床に落とす。
くるりとを己に向けて、両肩に手を置き、深く唇を重ねる。
右手がかんざしに伸びて引き抜くと、の髪がはらりと下に降りた。
それを出窓の近くに置いたゲンマは、ゆっくり唇を離して。
は下を向き、瞼を閉じたまま。
ゲンマは彼女の帯を解いて、肩から両手を差しこむ。
すると白い浴衣が、肌を滑りながら、床に舞い落ちた。
うなじに伸びたゲンマの手は、の髪を解して。
ふんわりと広がる髪の上を滑り。
今だに俯き、瞳を閉じるの後ろ髪を、ゲンマは軽く下に引いた。
毛先を優しく、呼びかけの代わりに。
の顔は自然と上向き、反射的に開いた瞳にゲンマを映す。
「もう花火は終わりだ。今からは俺だけを見てろ。」
肌と肌が触れ合い、唇も触れ合う。
ベットに移動しを横たわらせて。
ゲンマは肘を伸ばし、の顔の隣に手を付いて見下ろした。
「お前の中に入っていいか?」
「・・・うん。」
は小さく返事を返し、微笑む。
「・・・っ!」
「あぁ・・・あっ!・・・ゲン・・マ!」
今宵、二人のフィナーレは、まだ少し先。
ゲンマが見せてくれる花火と、ゲンマが打ち上げる花火は、水の音を伴い、夜更けまで続いた。
終
2007/08/26
photo by KAEDE
夏祭り、終了です。
ありがとうございました。
最後のキスシーン。
「ゲンマが後ろ髪を軽く引っぱって、顔を上向かせてするキス。」
というリクエストを、10万打記念リクで、よっしぃさんから頂きました。
書いている途中、あそこで!と急にひらめき、早速(笑)
イメージに合っていたかどうか・・・ ?ですが、お納め下さいv
リクエストありがとうでした。
かえで