春立つ陽
昨晩の嵐のような風に吹き飛ばされて、見渡す限り雲ひとつ無い真っ青な空。
冷たい風が吹く中、冬だというのに夏のように強い日差し。
最近は異常気象だと言うけれど、こう日差しが強くては・・・
「任務がやりづれぇ・・・」
手を翳して空を見上げるの横に降り立ち、楊枝を噛みながら目を細めて同じように上を向いたゲンマが、呟くように言った。
ツーマンセルで組まれた今回の任務。
特別上忍二人と聞いた時点で、そう簡単ではないと思ったが。
抜け忍や盗賊の巣窟と言われる山を超えての、密書の受け渡し。
しかも。
「雪山とは、どういうこったよ。」
諦めの響きと共に出た言葉は、もう何度も聞いたそれと同じだった。
一面に積もった雪に強い日差しが反射して、いくら忍の目といえども視野が狭まる。
暖かいのは歓迎するが、雪崩の心配をしながらルートを変更しての道中、予定よりもすでに3日ほど遅れている。
黙ってまばらな木々を眺めているの横顔を見ていたゲンマが、不意に声をかけた。
「よう。」
横を向くと伸びてくるゲンマの手が、の両手を包み込む。
「痛いか。」
普段は白い手の甲が赤くなっている。
掠り傷のように細かく傷ついて、きっと冷たい風に染みるだろうに。
「忍でもあかぎれになるんですね。」
は少し恥ずかしそうな笑みを見せた。
「こんな雪の中じゃ薬草も見つからねぇし。我慢してもらうしかないんだが。」
そう言いながらの両手を優しく摩るように暖めるゲンマは、任務中の顔ではなく、普段見せる自信に溢れた顔でもなく、とても優しい目をしている。
「それにしてもオマエ、つっめたい手してんな。ハヤテより体温低いんじゃねぇか。」
少し垂れ気味の目を丸くして聞いてくるゲンマが、なんだかとても可愛く見える。
自分よりも年上の彼を、そう思うことは失礼だろうか。
「ハヤテさんって、体温低いんだ。ハヤテさんの手も、こうやって温めてあげたりするんですか?」
丸くした目がますます丸くなり。
暫く小さく口を開けたままだったゲンマが、突然笑い出した。
「オマエ、やっぱり面白れぇわ。」
くしゃくしゃとの頭を子供のように撫で、行くぞ、と一歩先に歩き出したゲンマが振り返る。
「少しは温まっただろう。」
雪に反射する強い日差しを背に受け、ゲンマの表情は窺えない。
それでも、きっとあの優しい目で、笑っている。
「それとも、もっと温めとくか?」
差し出された手。
その心地良い温もりを感じたくて、迷わずその手を取る。
その途端、楊枝を咥えた隙間から、小さな溜息が漏れた。
「お前、ちぃっと鈍感すぎやしねぇか?・・・・・里についても離してやらねぇからな。覚悟しとけよ。」
自分の手を包むゲンマの手の大きさと、その力強さ。
不意に落とされた言葉に、隣りのゲンマを振り仰ぐ。
視線の先で。
陽光を反射する雪景色と、何処までも続く真っ青な空を背負ったゲンマが、悪戯に笑っていた。
超、尊敬サイト様の
銀の翼で翔べ 壬生 ソラさまより、68000打を踏みましたとご報告させて頂きました所、
このような素敵なドリを頂戴致しました。
カカシメインサイト様ですが、ゲンマもすご〜くカッコいい。
そしてこの表現力!
映像が目に浮かぶでしょ。
キャラ達の言い回しも完璧!
ああ・・・本当に頂いちゃった・・・。
凄〜い!
キリリクは現在停止中ですが、お土産をくれたんですよ。
私の大好きなお話を。
ま、その時の私の興奮ぶりったら、お見せ出来ないくらい。(苦笑)
このサイトを立ち上げる際にも、適切なアドバイスを下さってね。
私は勝手に師匠と呼んでいます。(←迷惑な話? 笑)
ソラさん、ありがとー!!
私が頂いたものですので、お持ち帰りはくれぐれも為さらない様お願い申し上げます。
かえで