息を切らし、全身に熱を帯び、里近くの森を走る。
普段のカカシなら、こんな事は無い。
チャクラ切れでも、大怪我をしている訳でも無く、それは数時間前に遡る。
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「これが今回の任務だ。少々きな臭い所もあるんだがな。」
綱手から渡された一枚の依頼書。
木の葉温泉に療養に来ていた女性の護衛だという。
目立たないようにと、カカシ一人を護衛役として指名して来た。
態々依頼料の高いであろうカカシを指名して来たという事は、よほどの事があるのか、それとも…。
「お前一人を行かせる訳にもいかんからな。暗部に見張らせる。
何が目的か分かるまで付き合ってくれ。」
「了解。」
カカシは依頼者の女性と共に、木の葉の門を潜り抜けた。
療養の身で無理は出来ないとの理由に、里近くの町で宿を取る事となった。
「カカシさんってかっこいいね・・・。私の体も温泉に浸かって大分良くなったし、どう?」
カカシに酌をしながら項垂れかかる。
「どう?ってねぇ。俺はそういう依頼じゃないでしょ。それに心に決めた女性がいるんでね。
そういう事はしないのよ。」
「あら?私そんなに魅力ないかしら?」
「イヤ…十分魅力的だけどね。それにそれは本当の君じゃないでしょ。
無理してるのバレバレなんですけど。いい加減、白状したら?何が目的なのよ。」
カカシが悟ったように言うと、依頼者の女性は涙を見せながら話始めた。
「単刀直入にいうと、カカシさんに夜伽の相手をして頂きたくて…。」
「で、何で俺なのよ。」
「私達一族は、血族間の婚姻を繰り返し、男性しか産まれなくなってしまったんです。
そして濃い血は、出生率の低下を招きました。再三に渡り長老達と話たのですが、
中々外部の血は受け入れられないと・・・。」
「そう・・・。」
「そして今一族の中で適齢期となる女は私しかいなくなってしまって、
より良い血を受け入れるならば、良しとすると決まったんです。」
「で、俺な訳?」
「はい・・・。木の葉一と言われる写輪眼のカカシさんなら・・・と。」
「・・・ふう。昔からの柵を払拭しようってのはいーんじゃないの。
でもその前に、ちゃんと好きな男見つけなよ。それからでも遅くはないでしょーよ。
それにね俺の血入れたって、写輪眼は出て来ないよ。
これは・・・形見だから・・・・。」
そう・・・これはオビトからのプレゼント。
「そうなんですか・・・。」
「まっ、明らかに調査ミスだね。俺はもうお役ごめんだから、後は其処の二人に任せるよ。
ずっと着けてきたんでしょ。」
女が振り向くと、天井から二人の男が現れた。
「あなた達!!」
「お嬢様の事が心配で・・・。すいません。」
「・・・うううん。いいの・・・。ありがとう。
でも・・・カカシさん。こんな事を仕掛けた私を、捕まえないんですか?」
「ん〜いいよ。目的は分かったし、君も分かってくれたでしょ。」
「はい。すいませんでした・・・。ありがとう・・・。」
「じゃ、俺はこれで・・・。」
カカシが行きかけると、女性はカカシを呼び止めた。
「何?」
「あの・・・すいません!!カカシさんにその気になって頂く為に、薬を少し・・・。」
深々と頭を垂れ、謝る女性。
「盛ったの?」
「はい・・・。」
「あ・・・でも俺、結構耐性あるから、平気かもよ。」
「・・・ですがその薬、私達一族の物で、何処にも出ていない特殊な薬なんです。
子孫繁栄の為に改良を重ねてて・・・その中でも強い薬をカカシさんに・・・。」
「解毒薬は?」
「ありません。時間が経てば・・・」
「元に戻る?」
「はい。」
「分かった。じゃ、俺は帰らせてもらうよ。もうこんな事はしちゃだめだよ。」
部屋の襖を後ろ手に閉め、控えていた暗部に目で合図を送ると、暗部は音を立てずその場から姿を消した。
全てを聞いていた暗部。
カカシが報告に行かないのを見越して報告をするだろう。
はぁ・・・と溜息を付き、カカシは宿を出る。
療養していたであろう一般人を連れての移動とは違って、カカシの速さならすぐ自宅に着く。
森を移動していると、徐々に体温が上がって行くのを感じた。
回ってきたか・・・。
普段涼しげな顔をしているカカシの顔が上気し、額には薄っすらと汗を掻く。
里に入り、自宅に着くと、カカシの体は限界まで来ていた。
は任務か・・・良かった。
こんな状態でが俺の前に現れたら、何仕出かすか、自分でも分かんないしね。
明かりもつけず、フラフラと部屋に入り、冷蔵庫を開ける。
体が熱く、口内が焼ける様だった。
まるで自分を形成している全ての水分が、沸騰している様な感覚。
ミネラルウォーターを取り出し、体に流し込む。
口に含んでいる間は僅かな涼を感じるが、それはあっという間に消え去った。
ベストを脱ぎ、残っていた水を頭に掛けると、カカシはバスルームへと向かった。
カカシ、帰ってきてるかな?
任務から戻ったが、カカシの部屋にやって来た。
気配はするのに、明かりは点いていない。
明かりを灯し、部屋へ入ると、床に脱ぎ捨てられたベストと、濡れた床。
そしてバスルームから聞こえる、タイルが水を弾く音。
は急いでバスルームに向かった。
「ねぇ・・・カカシ居るんでしょ?」
の問い掛けにも答えず、バスルームの扉は閉ざされたまま。
任務で返り血でも浴びたとか?
でもベストには付いてなかったし・・・。
まさか・・・怪我でもしてるとか?
それともチャクラ切れで、意識無くしちゃったとか?
「カカシ!!開けるよ!」
がバスルームの扉を開くと、本来ならカカシよりも先に出迎えるはずの蒸気は無く、
変わりに水飛沫と冷ややかな空気が流れ込んだ。
「何?カカシ、お水被ってるの?」
「あ・・・・・・分かってたんだけど、出れなくてごめん。」
「いいよ。そんな事。」
「そこのタオル取ってもらえる?」
「あ・・うん。」
カカシがシャワーを止めると、はバスタオルを投げ、出て来るまで背を向けて待つ。
すぐにの横を通り過ぎようとするカカシを見ると、銀色の髪から雫が垂れていた。
「ちゃんと拭かないと風邪引くよ。」
もう一枚のタオルをカカシの頭に被せる。
「カカシ・・・熱い・・・熱あるの?」
カカシの被っていたのは冷水なのに・・・
体を伝う水は少し温かくて、それよりもカカシの体が、
その水分を気化してしまうのではないかと思う程熱くて・・・。
はカカシの額に手を当てると、カカシの体がビクッと震えた。
「えっ?何?どっか痛いの?」
「ん〜任務でドジっちゃってね。怪我はしてないし、熱出してる訳でもないから安心して。」
「だってこんなに熱いんだよ?」
はカカシの両腕と、頬を触る。
その度にカカシの体が震えた。
「ちょっと俺、限界なんだよね。
3時間位、時間潰して来てくれる?その頃には治まってると思うから。」
「もしかして・・・カカシ・・・」
「そっ、薬盛られちゃってね。だからね。」
の体に触れないようにしながら、そっと頬に口付けた。
「何言ってるのよ・・・。ほっとける訳ないでしょ。」
媚薬を盛られた時の抑えたくても、抑えられ無い衝動は知っている。
「でも俺どうなるか、自分でも分からないよ。」
「いいから・・・私は平気。」
「いいの?」
「うん・・・。」
カカシはを抱えベットへと向かった。
「これは忘れないでよ。薬云々もあるけど、俺はの事愛してるから、抱くんだからね。」
「分かってる・・・。私もカカシの事、愛してる・・・。」
そして二人はシーツの波に溺れた。
一応これで終了ですが、別館に続きを掲載してあります。
年齢を満たしていて、苦手では無い方は、
そちらも読んでくれると嬉しいな。
かえで