St. Valentine's Day
この国では女性から男性にチョコレートをプレゼントする日。
これは子供の頃から馴染んでいた風習で。
だけど彼は甘い物が苦手。
だったら、何をあげれば喜んでくれるのだろう。
Just ready to eat
〜 From Your Valentine 〜
「ねぇ、カカシ。何か食べたい物とか、飲みたい物、な〜い?」
玄関に腰掛け、振り返る事なく、カカシに問いかけてみると。
「ん〜〜?ちゃん。もしかして足りなかった?」
相変わらず軽やかで、カカシらしいセリフが返って来た。
自分は純粋に食べ物、飲み物を聞いているのだ!とは心の中で叫んでみる。
間違っても、カカシに問いかけ、誘っているのではない。
だって、絶対、カカシの問う“足りなかったモノ”は“カカシのモノ”だろうから。
ここで恥ずかしがっては、カカシに遊ばれると、任務前の緊張感からか、冷静に受け流す事が出来た。
それとも、こう思ってしまう自分の回路が、すでに壊れているのだろうか?
「カカシの作ってくれた朝食、美味しかったよ。もう食べられないよ〜。これ以上食べたら動きが鈍くなっちゃう」
「オレが言ってるのは、昨夜の事なんだけど」
「昨夜……?夕食ナニ食べたっけ?」
「あのねぇ、ちゃん」
「うそうそ。た〜っぷり栄養補給したから平気」
「そう?」
「うん」
は脚絆を履き終え振り返り、カカシの唇にキスを一つ贈った。
昨夜のカカシはの口内で一度果て、相変わらず硬さと大きさを誇ったモノをの体内に埋め込むと、ゆるりとした動きで彼女を高みに登らせた。
そうゆるりと。
明日から里外任務に就くに負担を掛けさせない様、カカシなりの配慮なのだ。
これでも一応。
身体を繋げず、寄り添い眠るだけという選択肢もある事はあったが、自分も十日程の任務を明けたばかり。
飢えと乾きは限界に程近い所まで来ていて、その項目は早々に却下させて貰った。
の身体にしてもそうだ。
カカシから離れていた肉体は、触れられた途端栓を外したように蜜が溢れ出る。
それをカカシは舌先で掬い、ワザと音を立てながら飲み干した。
枯れる事のない泉は、カカシが掬い採るその刺激で新たな蜜を湧き上がらせる。
その透明な泉に己の肉塊を捻じ込み、獣ですら取らない格好で交わり、激しく腰を叩き付けたいと行為の最中何度思った事だろう。
これも愛しているからだと、自分の我を通す程カカシは餓鬼でもなく。
その代わり何度も愛を囁き、安心して眠れる場所を作ったのだった。
「じゃ〜言い方を変えるね。何か食べてみたい物とか、飲んでみたい物とかはない?」
「」
「へ?」
「だから、ちゃん」
「そんなのいっつも食べてるじゃない!それに飲み物じゃ……ない…で…しょ……」
しまった!と言いながら気づいた時には既に遅く。
脳が認識して声を止める前には言い終わっており、案の定、意味深な笑みを湛えたカカシの顔が目の前にあった。
「なに、その笑いは」
「え、だってね〜あるじゃない、ちゃんの…」
「ストップ、ストップ!!言わなくていいから」
「オレが言いたい事解るの?」
「大体見当は付くよ」
「当たってた?ラブジュースだって」
「がっ!@$*+#▽@□!!!!!」
「ちゃん、言葉になってないけど」
「もう!カカシのえっち!ドスケベ!!」
「男はえっちじゃなきゃねぇ、ダメでしょーよ。でもそういうも、オレとえっちするの好きでしょ?」
「…………うん」
「帰って来たら、たっぷり味あわせてね」
何をだ!と憤慨すれば振り出しに戻ってしまうから、は素直にコクリと頷いた。
「じゃ、行って来まーーす」
「行ってらっしゃい」
最後にぎゅっと抱き合って、は玄関の扉を開けると宙を跳んだ。
戦闘が予想させる依頼ではないから、日程通りこなせば十四日前後には戻って来れる筈。
出来れば、イベント当日には、カカシの腕の中に帰りたい。
結局何が良いのかは聞けず仕舞いで。
自分だとカカシは答えてくれたけれど。
何度抱き合っても、求めてくれるカカシはやっぱり可愛い。
そういう事が嫌いじゃない、否カカシとするならば大好きなにとって、嬉しい言葉ではある。
多少手加減をして欲しい時もある事はあるが、状況を見極めているから、まあいいだろう。
でも恋人達のイベントにセックスは付き物だ。
まして二週間程カカシと離れるのだから、イベントでなくとも、求め合うだろう。
カカシと同じく自分だって、禁断症状の一つや二つ、出るのだから。
では何を贈ろうか?
今や常識とまでなったチョコレートは不可だ。
この時期になると店に並ぶ美味しそうなチョコレート。
思わず、自分の為に買いたくなる位なのに、勿体無いな〜と思いながら、そうだ、任務先の銘酒でも買って帰ろう。
単純だけど、これでいいかと、自らを納得させて、は合流地点へと急いだ。
今年はよく雪が降る。
一般人を連れての移動は、途中日程のずれが多少あったけれど、帰りは忍だけの移動。
何とか帳尻を合わせ、十四日の夜には里に戻る事が出来た。
冴えた空気と、雲一つない夜空に浮かぶ月。
そのどちらもが、自分の身体に突き刺さるようで。
刺されるのならば、カカシに、が良い。
その少し丸く尖った矛先で、甘い快楽に酔いたい。
今夜はそんな気分だった。
だけれど───
二週間ぶりの部屋には人の気配が無く、勿論明かりすら灯っていない。
カカシは居ないのかと落胆しながら部屋に入ると、やはり姿は無く、その代わりにメモ紙と小さな箱が一つ、ダイニングテーブルの上に置いてあった。
メモにはカカシの字で、緊急招集が掛かったから出掛けると書いてあり、これでも食べて待っててと付け加えてあった。
任務終了の報告を行った時、上忍会議があるとは聞いていない。
入れ違いに出て行ったのなら、先に休んでてと書いてあるだろう。
では今夜戻ってくる可能性はあるのか。
それも何とも言えない。
召集が掛かり、そのまま任務に就く事も大いにある。
まぁ、それはそれで仕方がない。
イベント当日に会えないのは残念だけれど、も同じ忍の道を歩む者。
状況は手に取る様に理解出来る。
メモ紙の横に置かれた小さな箱にはリボンが付けられていて、その間には小さなカードが添えられていた。
既製品のバレンタインカード。
愛のメッセージはカカシの直筆ではないけれど、一番下に署名が成されていた。
「今日は自分が貰う日なのに」
軽く笑って独り言を呟き、はリボンを解く。
そういえば、聞いた事があった。
異国の地では男女問わず好きな人にプレゼントをする日だと。
自分が知っているのだから、カカシも知っているだろう。
カカシに甘い甘いチョコをプレゼントして、自分が代わりに食べようかな?
そんな冗談を言った事もあったから、余計にその箱の中身が微笑ましかった。
可愛いチョコレートが四つ入っている。
食べてしまうのが勿体無い位の。
けれど任務明け、糖分は不足していて、只でさえチョコレートが大好きなのだ。
はその一つをポンと口の中に放り込み、お湯を沸かすと紅茶を淹れた。
飲み物があれば余計に進むもので、勿体無いと思いつつ、いつの間にか最後の一個。
カカシが帰って来るまで取って置こうと思うけれど、誘惑には勝てず箱だけを残す事となった。
紅茶も飲み干し、立て肘を付いてカードをもう一度開く。
置き手紙と交互に。
カカシの字は、何だかとっても温かい。
早く帰って来てねと、カードに書かれた“はたけカカシ”の文字を指先でなぞった。
お風呂に入って、歯も磨いて、髪も乾かして、リビングに戻るけれど、やっぱりカカシは帰って来ていない。
ソファーで待とうかとも思ったけれど、何となく横になりたい。
寝室に入ってベットに潜り込めば、カカシに包み込まれているような錯覚に陥った。
身体が熱くて、何だかドキドキする。
逆上せる程の長湯ではなかったし、上がってから髪を乾かしたり色々していて時間は経過している。
でも何故か熱かった。
今夜は冷えるからと暖房を入れ、厚手のパジャマを着こんだのがいけなかったのか。
普段このベットで寝る時は、何も身に付けない事が多い。
裸で眠るというのは案外気持の良いもので。
はベットの中でごそごそと動き回り、厚手のパジャマを床に落とした。
身に付けているのは、キャミソールとショーツのみ。
それでも熱さと動悸は消えないけれど、二の腕や太ももに触れるシーツの感覚が気持ち良く、そしてその感覚と直結している記憶を呼び覚ました。
それは勿論カカシと愛し合う時の事。
いつもならば感じるカカシの重み。
瞼を開ければそこにある、カカシの顔。
自分の指先が絡む銀髪も、快楽に溺れて掴むカカシの腕も肩も今は無い。
だけど。
───
そう甘く囁くカカシの声が耳に残ってる。
キスをした後、耳元へ落とされる言葉。
その唇が徐々に首筋、鎖骨へと移って行く。
紅い華を散しつつ、下から持ち上げられる様に揉まれるのは、二つの膨らみ。
頂きに贈られる刺激は、の潤いと欲求を加速させる。
「………カカシ」
居る筈のない人物に話し掛け、贈られる事の無い快感を自ら生み出す。
柔らかな布に隠れた膨らみはの手の動きによって形を変え、指先が頂点を引っ掻いて。
全然足りない。
カカシがするように真似てみるけれど、その快感は比べ物にならない。
でもさっきから感じている熱さと動悸は既に全身に広がっていて、下腹部は刺激を求め内部でざわめき始めていた。
「……んっ……」
直接素肌を弄り始めたの手によって、キャミソールは捲れ上がり、張りのある豊かな胸が顔を出した。
下腹部に感じたざわめきは疼きに変わり、快楽を得ようと無意識に足が踊り出す。
それだけではもう足りなくて。
熱く湿り気を帯びた其処は、神経を剥き出しにして刺激を求めているのではないかと思うほど。
胸に置かれていたの掌は、戸惑いながら身体の中心を通り過ぎ、小さな布まで到達した。
熱の籠るその場所にそっと掌を宛がい、溝に沿って中指を上下に動かす。
それだけでビリビリと全身に官能の波紋が広がった。
カカシがくれるなら極上の焦らしである攻めも、今のにはもどかしいだけ。
早く直接的な刺激が欲しくて堪らない。
腰を浮かしショーツを下げると、足の動きだけで器用にソレを外した。
指先が溝に触れた途端、くちゅりと水の音が聞こえた様な気がした。
水源から溢れ出た蜜が指先に絡み付き、動きを滑らかにさせる。
やわらかく膨らんだ花弁を往復して、主張を始めた花芯へと指が動く。
カカシが以前教えてくれた様に、くるくると円を描きながら。
─── カカシ……
心の中で愛する人の名を呟いて。
行為の最中にカカシが落とす甘い囁きと淫らな言葉が、頭の中で繰り返し木霊する。
でも部屋に流れるのは、の詰まる息と僅かに漏れる吐息。
そして官能的な水音。
の指の動きが激しさを増せば、その音色も一際大きくなっていき。
「んっ……あっ………」
は僅かに嬌声を溢した。
─── カカシ……もっと
見えない彼の手が自分を愛撫するけれど。
カカシを迎えるその場所へも、教えられたように進入を繰り返すけれど。
やはり、足りない。
もどかしい。
そして寂しい。
カカシがくれるのは快感だけではなく、安心感も与えてくれるのだ。
─── ん〜食べ頃。美味しく仕上がったね、
溢れ零れるの蜜。
白い双丘に熟した赤い実が二つ。
どれを取っても食べ頃だ、と微笑むカカシの姿がある事にはまだ気づいていなかった。
「カカシ……早く…来て」
帰って来て欲しい意味と、繋がりたい意味とで、無意識に声に出してしまった言葉。
勿論聞かせるつもりなんて無いのに。
「アゲルヨ。もっと見てたかったけど、食べ頃過ぎちゃったら勿体無いからね」
自分の呼び掛けに返って来た返事は、幻聴なんかでは無く。
バチっと音が聞こえるのではないかという位、勢い良く開いた眼に映ったのは、アンダー姿のカカシだった。
「嘘!ちょ……ヤダ」
「ヤダはショックだねぇ〜〜」
辛うじて布団は掛けていたけれど、やはり何をしていたかは分かっている筈。
こんな所を見られて、恥ずかしくない訳がない。
は胸まで掛かった布団をずり上げ、顔を隠そうとするけれど、カカシに止められた。
「なんで居るのよ……もうヤダ……」
「なんでって、自分の部屋だし?呼ばれたし」
「だからって……や、本当にヤダ!!」
カカシに押さえ付けられた布団では顔を隠す事が出来ない。
だからはプイっと横を向いた。
「あーーショックだね〜〜ソレ」
ショックなのはこっちの方だと。
自分はこんな最中に踏みこまれて、いや此処はカカシの部屋であるけれど、うろたえないのかとは心で叫ぶ。
見られたのならしょうがない。
でもだったら、果てるまでそっとして置いて欲しかった。
そして何食わぬ顔で帰って来て欲しかった。
「チョコ食べたんだ」
カカシの顔を見る事も出来ず、は横を向いたまま頷いた。
「オレ、チョコはあんまり食べないからね」
それは知ってる。
「だから、チョコを食べたちゃんを美味しく頂こうと思ってさ。ちょこっと小細工」
小細工とはなんだとの耳だけがカカシに向く。
後は未だに拒絶だ。
「二週間もオレから離れて、あのチョコ食べて、な〜んにも無かったら逆にその方がショックかも」
だから一体何をしたんだ!!
との拒絶姿勢が怒りに溶け始めて行く。
「まさか……」
ゆっくりとその首が元に戻り、瞳がカカシを捕らえると。
「ん〜〜合法よ、合法。オレ達が使うヤツじゃないから。軽〜〜いの」
覆い被さるカカシは目を弓なりに細めて、ニッコリと笑った。
「ちょっと!!信じられない!!カカシの馬鹿ーー!!」
「だってちゃんさ、折角教えてあげたのに、全然見せてくれないんだもん。一人えっち」
「が!!@$*+#▽@□ーーー!!!!!」
「だから、言葉になってないから」
「カカシのバカーー!!」
「さっきから酷い言われようなんですけどね、オレ」
当り前だ!とは心の中で叫び声を上げて。
「ちゃんが何食べたいって聞くからさ〜〜。やっぱり一番はちゃんなんだよね」
カカシはサッサと全てを脱ぎ捨てて、に掛る布団を剥ぎ取った。
「きゃあ!!」
「叫ばなくったっていいじゃない」
又しても文句が声にならない。
そんなに跨ったカカシは、笑みを浮かべながら、パクパクと文句を言う彼女の口を唇で塞いだ。
恥ずかしさと怒りとで、隠れていただけの欲望が顔を出すには、然程時間がかからなく。
すぐさまの変化を感じ取ったカカシは、更に濃厚なキスで酔わせると、豊かな乳房の感触を楽しんだ。
先端の赤い実を味わいながら、開花した花に手を伸ばして。
「いっぱい出てるね。がオレを愛してる証拠」
そう耳元で囁きながら、濡れた花弁の中に指先を沈めてくる。
そして「ココ、食べてもいい?」なんて可愛らしく聞くから、こっちも素直に頷いてしまって。
の足の間に割り入ったカカシは、丁寧に花弁の一枚一枚を開いて。
「では、戴きマス」
語尾にはハートマークに音符まで付いているかの様で。
カカシは透明な蜜をたっぷりと湛えた桃色の花を、心行くまで存分に堪能した。
長期任務の翌日は余程の事がない限り休暇。
朝が来るまで、カカシに思う存分食べられたの休暇は、無いに等しく。
それはそれで、自分も気持ち良かったし、愛された時間は充実していたけれど、メラメラと燃える復讐心。
お返しは十倍の薬量で、放置プレイなんてのは、如何ですか?
はたけカカシさん。
でも里一の上忍にはきっと通用しないだろうなと、はカカシの腕の中でまどろみながら呟いた。
END
2008/02/14 かえで