Scipio's dream of pieaces.


「たまにさー、テレビの近くでうたた寝しててさ、夢見るじゃん」 と彼はみかんのおしりに親指をめり込ませながら云った。 「そんでさ、なんかさ、意味フメイな夢を見るわけよ、」 脈絡のないはなしだった。オチとかあるのかな、と僕は思った。はあ、と気のない相槌が洩れたのを、申し訳ないとは感じなかった。 「耳からはテレビの音が、たぶんな、聴こえてるわけ。夢はさ、ほんとにもーわけわかんない内容で、なんだこれってオレもツッコミながらそれでも目覚めないわけよ。半覚醒状態? なんてーの、トランス? 知ってるおまえ?」 いいえと僕は答えた。 「あーまあ、そんな感じでさ、なんかふっと夢の中でいきなり結論が出んのよ。そういうことかー!ってオレは思うの。でさ、目が覚めんだよね、」 それでと僕は先を促した。みかんを剥いていると爪が黄色くなって困るよね。自分の爪でその黄色のごみを取って顔を上げた__彼を見た。それで? 「そんときはさ、"黒薔薇の意味は..." あーなんだっけ、忘れちゃった。とにかくさ、それが犯人からのメッセージだったわけよ」 なんのはなしだろう、と僕は思った。ああ推理ドラマかなにか? 「その答えをさ、探偵がなんか皆の前で話してばらすシーンのさ、ちょうど5秒前とかに目が覚めたわけよ」 ああやっぱり推理モノのはなしか。ふーん、それで。キミはその探偵より利巧ってこと? 「だってオレ寝ててそのドラマ見てないんだぜー。夢でトリック暴けるなんてすげくねー?」 そのはなしがほんとうならね、と僕はきれいに白い筋を取り除いた橙色を口に放り込んで云った。夢探偵?流行りそうにもないなぁ、それ。ていうか似たようなのもう出てるんじゃないですか。 「えーだめかなぁ。ときどきあるんだけど、」 確率って知ってます?そう百発百中じゃないと。当たった予言だけ数えてる予言者なんて所詮紛い物もいいとこだと思わない?でしょう?それよりほら、新しいみかん取って来てよ。 「...アレンがそうやってオレに籠差し出してくるの、きのう夢で見た...」 へぇ、そりゃすごい推理ですね、夢の探偵さん。




(テレビってぜったいへんな電波出てると思う/寝苦しくて仕方ない)