vivamus, mea Lesbia, atque amemus,


 なんだか莫迦みたいに ふたり 盛り上がってた。下校を促す放送の後、長く影を引いて校門を出て行く生徒たちの背を見送って。見廻りの教師の目から逃れ、暗く肌寒い 階段 の隅に肩を寄せ合って隠れて。夕闇はさらに深くなり、昼間の喧騒はすっかり地平の 向こう へと消えて行ってしまった。ほぼ毎日通っている校舎/教室、見慣れたそれらがまるで違うものに見える__魔法みたい、思わず零れた呟きに彼は僕が云いたいことを察して微笑んだ。明るい廊下ではけして繋いだりしない 手 と 手 を合わせて、僕らは誰もいなくなった教室へと移動した。星を見ようと云ったのはどちらだったか。流星群が あるのだ、なんとかって星座の。それはちょうどこの時節、僕らの教室からよく見える方向にあるのだと、妙に詳しい彼が告げた。だからだったかもしれない。ああ、ふたりで星をみたいね、ここで。と云い出したのは僕だ。なんでもいいから、この場所で誰に気兼ねすることなく触れ合った思い出がなぜか欲しくてたまらなかった。繋いだ手のひら、ゆるり と指を動かす。どきどきした。こんなことで緊張するなんて。汗をかかなきゃいいんだけど。絡めた指先に力を込めると、彼もおなじように返してくれたのが嬉しかった。ふたりして座り込んだ冷たい床、掃除しても残るちいさな埃、窓から差し込む陽はすでになく、すぐそばの吐息がいちばん大きい 音 だった。日が暮れるのはとても早くて、新月だから今日は星を邪魔する光もない__星はつよいものから輝き出す。僕らは瞬きを数えることはできなかった。だってお互いを見ることに必死だったから。わずかな温もりを分け合う、高め合う、巡り合わせる__熱が僕を揺さぶり続け、彼は篭った息でそれを吐いた。キスはいつだって 彼の味 だ。きっと昼間に僕はこの味を思い出して、こっそり舌なめずりするに違いない。狂ったような 熱 は、体の内側で消えることなく燻りつづけ、彼が触れることで簡単に炎を上げて僕を焦がす。彼と唯一繋がれる 場所 も、互いに愛を囁く 舌 も、ぐずぐずに溶けてしまって今は意味を成さない。何度目か、僕の目尻からあつい滴が零れ落ちた瞬間、クリアになった視界、彼の肩の向こうで、僕らとおなじように熱に溶けて消える 塵 を見た。




(アレンとだれか/あーどっちが受けでも攻めでも構わないかんじ)