To Be With You + αの後日談(奏視点)
連休最終日の月曜の夜。
俺は居間のソファで膝枕をしてやっている響(ヒビキ)と一緒にテレビを
見ながら、俺と同じ髪質なのに、髪を染めている俺とは違うその真っ黒な
髪を指で梳いている。
昨日は響と、母さんから貰ったチケットで映画を見てきた。
さすがに午前中は腰が痛くて身動きが取れなかったけど、心配する
響を、せっかくの初デートだから、と説き伏せて午後から行って
来たんだ。
響は映画を見ている最中もずっと俺を心配そうに見てて、一つも
内容を覚えてなかった。
何で覚えてないの〜?と映画が終わった後に響を責めた俺も、実は
俺を見ている響を見ていて全く覚えてないけどね。
映画を見終わった俺達は真っ直ぐ家に帰って、俺が作った炒飯を
食べた後、一緒に風呂に入った。
さすがに恥ずかしかったので、さっさと体を洗って先に湯船に入り、同じ
遺伝子なのに何故こんなに違うんだろうと、湯船の縁に頬杖をつきながら
ボーっと響を眺める。
すると、今夜は何もしないつもりなんだからあんまり見るな、と苦笑した
響に言われ、そっか、しないんだ……とホッとしたような残念なような
気持ちで風呂をあがり、響のベットの中で濃厚なお休みチュ〜をし
て寝た。
今日は朝のオハヨウチュ〜から始まったが、時々軽いキスを落しては
くれるものの、それ以上響は俺に触れてこない。
俺の体を心配してくれてるのはわかる。
確かに触れればそれ以上したくなるのが男の性(サガ)だ。
でも、その気持ちはすごくありがたいと思うけど、俺も男だから。
やっぱり好きな奴には触れたいし触れて欲しい。
でも今日は母さんが何時に帰ってくるかわからないから、無茶は
出来ないし……
そこで俺が考えたのが膝枕だった。
これならお互い自然に触れていられるから。
最初は戸惑っていた響も、俺が『兄の言う事を聞けないのか?』と
言うと、苦笑しながらも今の体制に落ち着いた。
で、俺は自分と同じ響の顔を上から見ながら髪を撫でているって訳。
「ただいま〜♪」
相変わらず陽気な声で母さんが帰ってきた。
俺と響は慌てて起き上がり、玄関に向かう。
「お帰り。」
と言って玄関で靴を脱いでいる母さんを俺と響が並んで出迎える。
靴を脱いだ母さんは、はい、と俺達に自分の荷物を渡すと、じ〜っと
二人を見比べた。
そして鼻でフフンと笑って、荷物を持ったまま玄関で立ち尽くしている
俺達の腕を両手で掴み、二人供来なさい、と俺達を居間に連れて
行った。
4人掛けの食卓に俺とヒビキが並んで座り、向かいに母さんが座る。
母さんはもう一度俺達をしっかりと見た後、俺を見て問いかける。
「……奏(カナデ)、その様子じゃ、貴方の気持ちは通じたと見て
間違いないかしら?」
俺の気持ちの経緯を知っている母さんは、いきなりそう聞いてきた。
それに少し赤くなりながらも、はっきりうん、と頷く。
それを見て、そう、と言いながら今度は響を見た。
「響、貴方は自分で今の結果を選んだの?」
そう聞く母さんに、響は、あぁ、と真剣な眼差しで返した。
そして俺達二人を見て再度問いかける。
「……茨の道しかないわよ?
どの道を進んでも、辛い思いをするだけなのよ?」
その母さんの言葉に、俺は横にいる響を見た。
響も俺を見ている。
俺達は迷いなく母さんに向き直ると、うん、と同時に頷いた。
すると母さんはフッと軽く溜息をついて、お互いの思いが通じて
良かったわね、と微笑んだ。
俺達は双子で男同士。
微笑む母さんに、嫌じゃないのかと俺は聞いた。
すると『私は腐った女ですからね〜♪』(作者(笑))と意味不明な言葉を
言って笑った後
「確かに孫の顔が見たくないと言えば嘘だし、やっぱりノーマルな道で
行った方がリスクは断然少ないと思う。
大事な息子達に、出来るだけ辛い思いをして欲しくないと思う気持ちも
当然ある。
でも離婚していた時に、本当の幸せっていうのは自分で掴み取る物
だって私自身が学んだの。
だから貴方達が悩んだ挙句にその答えを掴み取ったのなら、親として
反対するつもりはないわ。
お父さんも貴方達が幸せならそれでいいって。
後は自分達で選んだ道を自信を持って進んで行って欲しいと思う。
わざわざ苦労する道を選んだのだから、少々の事でへこたれない
強い自分達になりなさい。」
と励ましてくれた。
俺も響も両親の思いに心の底から感謝した。
元々俺達がうまくいったのは母さんのおかげもあるしね。
でもその代わり約束させられた事もある。
「@成績を下げない事。
学生の本分は勉強なんだからそっちが疎かになったら即別れさすわよ。
A私とお父さんの目の前でイチャイチャしない事。
年寄りには目の毒ですからね。
B自分の洗濯物は自分で洗う事。
貴方達が汚したシーツを私が洗濯するなんて嫌よ。
以上、3項目、しっかり守ってね♪」
……@は理解できる。
でもAとBの項目に、俺も響もただただ目を
白黒させるばかりだった……
− 完 −
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