メリークリスマス
新しくなったデンライナーにクリスマスツリーが飾られた。
食堂車の飾り付けをみんなでした。
ツリーには願い事の短冊もぶら下げた。
まさか今年もクリスマスをやるとは思いもよらなかった。
ウラはクリスマスに彩られた食堂車を見つめ去年を思い出す。
『あのまま永遠の別れになってしまってたかもしれないのに。
すべての愛しい者達と大切な時間とともに・・・』
「どうしたの?カメちゃん」
感傷的になっていたウラの顔を覗き込みリュウタは問う。
「ああ、ごめん。ちょっと考え事をしていてね」
心配そうに見ているリュウタに微笑むと優しく頭を撫でた。
頭を撫でられリュウタは嬉しそうに笑う。
幸せという言葉がウラを包みこむ。
『こんな可愛い子を心配させちゃいけないな。
もう二度とあんな悲しい思いをさせたくない。
しちゃいけないんだ』
ウラはまた感傷的になりそうな自分を押し殺す。
「ねえ、何を考えてたの?」
リュウタが再び問う。
「クリスマスのプレゼントの事」
「クリスマスのプレゼント?」
「そう。今年のクリスマスは何をあげようかなって」
「誰に?」
「一番大切な人に」
「え?誰?」
「リュウタだよ」
きょとんとしているリュウタにウラは言う。
「僕が一番大切のはリュウタだから」
「カメちゃん・・・」
「嫌かな?」
リュウタは首を横にブンブンと振る。
「嫌じゃないよ、嬉しいよ。ボクもカメちゃんが大好きだから」
そう言うとリュウタはウラに抱きついた。
「あの時、カメちゃんと別れた時・・ボク凄く悲しかった。
もう会えないと思ったから悲しかった。
でもまた今年もカメちゃといられて凄く嬉しいんだ」
ウラをぎゅっと抱きしめウラの広い胸に顔を埋めながら言う。
「ボクにとってもカメちゃんが一番大好きで大切な人だから」
ウラの胸元に冷たい感触が感じられた。
リュウタの背中と肩が小刻みに揺れる。
『この冷たい感触はきっと涙だな。リュウタは泣いてるんだ』
リュウタの腕に少し力が入る。
ウラハ優しくリュウタに言う。心配かけたくないように。
「今年はクリスマスもお正月も一緒だよ。
ううん、これからもずっと一緒だから」
顔を埋めている愛しい恋人をウラは優しく包み込むように抱きしめた。
「本当!」
嬉しそうな声と共にリュウタは顔をあげた。
瞳からは溢れた涙が頬を伝い濡らしている。
だがその顔は歓喜に溢れていた。
「うん本当だよ」
ウラは抱きしめたまま頷く。
「やったー!カメちゃんと一緒だ!」
嬉しそうにリュウタは歓ぶとウラの胸に自分の頬を擦り寄せる。。
小犬のように歓ぶリュウタにウラまでもが嬉しくなってしまう。
「だからプレゼント考えないと・・ね」
ウラは腕の中にいるリュウタにそっと甘く囁く。
「うん」
「何が欲しいリュウタは。クレヨン?それとも・・」
「うーん、どうしよう」
リュウタはウラを再びぎゅっと抱きしめた。
「少し考えていい?もう少しカメちゃんとこうしていたいから」
「ああ・・いいよ。僕もこうしていたいよリュウタと。ずっと・・ずっと」
ウラもリュウタを強く抱きしめた。
抱き合う二人の向こうに飾り付けをされたクリスマスツリーが見える。
ピカピカ光るクリスマスツリーに飾られた二人の短冊の願い事には
「ずっとずっと一緒にいられますように」と書かれていた。
きっと叶うだろう二人の願いは。
もう叶ったのかもしれない。
食堂車に駅長とオーナーに似たサンタが来て祝ってくれるだろう。
二人のクリスマスを・・・。
永遠のメリークリスマスを。
おわり