本気の恋

 
   愛してる・・
  そんな言葉は僕には無縁だ。
  そして必要ないと思ってた。
  こんな言葉は口に出したら泡となってすぐに消えてしまう。
  愛なんて蜃気楼のようなものだ。
  だから僕は使わないよ。本気ならなおさらね。
  
   最初はうっとおしいと思ってた。
  年上だから仕方なしに子供の面倒を見ていた。
  ただ、それだけだった。
  なのに今は胸を焦がすような想いまでしている。
  こんな子供に・・・。
  僕らしくない。
  冷静で沈着でクールの僕が蒼い炎に揺れている。
  情欲と嫉妬との炎。
  
   リュウタが先輩やキンちゃんに懐くたびに僕の動悸が収まらない。
  手を出される前に出す。釣られる前に釣る。
  それが僕の信条。
  だから僕は釣り上げた。誰も釣る前に。
  紫の美しい魚を、いや龍を・・この手に納めた。
  リュウタは思っていたほど子供じゃなかった。
  初めての肉欲の行為に戸惑っていてもすぐに順応した。
  僕に貫かれながらリュウタは痛みと快楽に酔う。
  たまらなく美しい情欲の龍に僕は魅せられていく。
  繋がっている体が永遠だといいのに。
  僕のモノにしたいずっと・・・ずっと。
  
   カメちゃんカメちゃんと吐息混じりに僕の声を呼ぶリュウタ。
  可愛い・・・。
  なんて愛おしいんだろう。
  僕はその声に答える。
  リュウタ・・・と名を呼ぶ。
  僕は決して愛してるとは言わない。
  この想いが泡と消えるのが怖いから。

   本気で愛しているから・・・リュウタを。 

   
  
                               おわり