■ Presented by Cow&chicken 2000'foundation. ■
月影の裏
底の見えない深淵へ落ちてゆく。仰向けになった体はゆっくりと、止めどない闇を漂う。
もがいたりはせずに、両手を重ねて胸元へ置く。瞼は開いていても、自分の体以外何も見えないので閉じていても同じだった。黒の中で自分の体のみ視覚に捉えることが出来るのは、果たして自らの体が発光しているからだろうか。しかしそんな思考回路さえも、何もない黒い世界では無意味。ただ、時折繰り返されるこの感覚が現実ではないことだけ知っていた。
闇の奥へ奥へと導くのは、滑った黒い手。淵の中でも見ることが出来ていた自らの体が足元から闇色へと溶けていく。滴る水の音のような、粘り気のある音が鼓膜を刺激しそうだ。徐々にその数は増え、足元から這い上がり無数の手が絡み合う。
足を、腹を、腰を、胸元を、腕を、肩を、首を。
ひやりとした自分以外の熱。そもそもの体温を感じさせないほど冷たい掌が、勝手に肌をまさぐっていく。時に快楽の琴線を掠めとられ、意思とは関係なしに体が反応してしまう。そうなると、熱ばかりが先行して脳は隅からじわじわと侵食されていってしまうのだ。
数え切れないほどの数の手は、まるでそれを狙ったかのように意思を持ってして、深淵へと自分を誘っていく。獲物を捕えた闇色は、意思に反して誇張する自らを煽り立てる。そうすることで責めているのだ。
この掌の数は屠った命の量。
滑りはきっと浅ましい感情。
一点に集中していく体中の血液。
自身を追いやる手とは別に、首元に添えられた手の所為で声は漏れない。代わりに、掠れた吐息だけがひゅーひゅーと溢れた。込められた力は少しずつ強くなっていく。
絶えず好き勝手に快楽を引き出していく掌。それに霞んでいた思考を集中するとひとつに収束されていく。ないと思われていた熱がある。どろどろとした液状だった闇色が、形を成していく。
自分の傍らの体温、それは誰のものか。
いつの間にか閉じていた瞼を薄く開けると、落ちていく闇の中で人物を象った。
ひく、と体が震えて覚醒した。
瞼の裏まで刺激する眩しさに、ゆっくりと視界を開く。
割り当てられている部屋の障子から朝日が差し込んで、板間を照らしていた。布団の中からゆっくりと起き上がる。すると、大きく息を吸い込み、咽た。
ろくに呼吸も出来ていなかったのか、荒い呼吸を繰り返す。意識して続ければ落ち着きを取り戻し、頬へ掛かる長い髪を掻きあげた。
体中、汗でべとついている。寝間着として着ている浴衣は胸元が大きく肌蹴ていたが、それでも暑いくらいだった。特に気温が高いというわけでもない。朝日はまだ昇ったばかりのようだ。
暫く敷かれた布団の上でぼうっとしていたイザヨイだったが、傍らに視線を寄越すと僅かに目を伏せる。
同室の相手が寝ていたであろう布団は畳まれていて、もうそこにはない。そっと右手を伸ばして床に触れるが、熱はとうに逃げていた。
確認するとイザヨイも立ち上がって身支度を済ませる。
布団を畳み、簡単な装束に着替えてから、長く伸びた光を反射すると紫に輝く髪を後ろ手に束ねる。一応、忍具も数点懐に忍ばせて、宛がわれている部屋を出た。
音もなく歩くのは習慣だ。また、気配を殺すのも。
イザヨイはまっすぐに彼がいるであろう場所を目指した。
廊下の窓から差し込む光は柔らかだ。昨日は寝る間もなく、情報収集を終えた朝そのまま別任務を行った。そのお陰か、存外早くに終わり早々に体を休めたのだ。ちなみに、今日は丸一日非番である。
だからといって、外に広がる新緑に心が動かされることはない。むしろ、どこか遠いものを見るかのように、イザヨイは目を細めた。
温かな陽だまりが幾つも出来ている。しかし自分にはその場所を歩く資格はないのだと、妙に悟っていた。自然と光の当たらぬ端のほうを歩いてゆく。
まっすぐに目的の場所を目指していくと、兵舎の外に達し、周囲を囲うように広がる深い森へと辿り着く。
聖龍族領で祭られている神木もこの森の中心に位置し、神子が住む社が存在した。しかしイザヨイは其方へ向かうのではなく、光も僅かしか差し込まない方へと足を向ける。
木々が大きく枝を広げ、光をその葉に注ごうと競い合うように聳え立っている。足元には新緑の模様が浮かび上がり、イザヨイはそれを越えて奥を見つめた。
一歩一歩草を踏みしめ、苔の生えた根を跨ぎ、静かな森を進んでいくと。視界は開かれ、そこはまるで広場のように、円形に木が囲いを作っていた。日の光が広く開いた隙間に差し込み、まるでスポットライトのようだ。輝く緑の青。その中で、光に内包されている銀色の短髪が瞬いた。
上半身に衣は纏っていない。お陰で、背中の隆々とした筋肉が露になっていた。肩から腕にかけての無駄のないライン。イザヨイは己の細腕を見つめてから、再び逞しい背中に視線を移した。金色の瞳に、どこか暗い光が灯る。しかしその中に、少なからず羨望の眼差しが含まれていることを他人は悟ることが出来ないのだった。
さすがに不躾な視線に気づいたのか、鍛え上げられた体で陽だまりの中、鍛錬を続けていた人物が振り返る。右側の欠けた角と、潰れた目にイザヨイは消えることのない胸の疼きを覚える。そんなことは微塵も出さずに視線を返せば、相手は微かに目を見開いて、すぐに普段の表情を浮かべていた。
短い髪を手で払うように掻き、イザヨイのほうへと近づいてくる。
「どうした」
低く掠れた、優しい声音に体が震えそうになる。イザヨイは、何でもないと言うように首を左右に振り、視線をザンゲツから逸らした。夢で浮かされた熱が再び湧き上がりそうだった。
目の前の彼の肌に汗の粒が浮かび、陽光を反射している。
見惚れていたなどと言える口を、生憎イザヨイは持ち合わせてはいない。
黙ったイザヨイに何を思ったのか、ザンゲツは暫く頭ひとつは小さな彼を見下ろしていると、突如その頭に掌を乗せた。撫で梳くように、紫色の糸のような髪に指を絡ませる。反射的に身を硬くしたイザヨイだったが、閉じた唇を噛み締めた。
ザンゲツは彼の様子をつぶさに見つめていたが、何も言わない。気が済むまで指先で紫を転がして遊んでいたが、それもさほど長い時間ではなかった。するりと、逃げていく。
温かな、それでいて骨ばった指が離れていくのを感じたのか、イザヨイが顔を上げるとザンゲツの瞳とばちりと重なった。一度捉えられると、逸らす術はなく見上げる形でイザヨイは静かな眼差しを全身に浴びる。
頭上から溜め息が漏れた。間違いなく、それはザンゲツのもので。
イザヨイは咎める気にならず口を噤んでいたが、次に出てきた彼の台詞にぽかんと呆ける羽目となる。
「今日は市井に出かけるぞ」
「…は?」
「暇だろう」
「確かに、非番だけれど……」
「なら、兵舎に戻ってさっさと準備をしろ」
珍しく強引な物言いでザンゲツは取り決める口調で言い切ると、イザヨイの脇を通り抜けて彼が歩いてきた道を戻っていく。
大きな背中に、何故人の了承を聞かない、とか、勝手に決めるな、とか言ってやりたいイザヨイだったが、口を開こうと思ったときにザンゲツが振り返り阻まれた。
「それとも、一緒に行かないのか?」
つまりは、ザンゲツと一緒に町へ下りるということである。
それを断る?
イザヨイが断る口実を持たないのを、彼が知る訳がなかった。
最後の彼からの問いに、イザヨイは左右に首を振るとその後ろについて歩く。小さな頭が自分の傍に追いつくと、ザンゲツは緑を掻き分けて再び歩き出した。
どこに行くのか、などとイザヨイは尋ねない。
ただし一度だけ後ろを振り返り、先程まで傍らの相棒が居た陽だまりの世界を見つめていたが、すぐに視線を外した。
夢の淵で冷え切っていた体温。それが今は少しだけ、熱を取り戻していた。
まだ僅かに残る朝靄の中を戻っていけば、朝日はしっかりと顔を出し新しい一日を世界中に告げていた。
部屋に戻るとイザヨイは忍の時とは違う、童の身なりに着替える。簡単な上衣と膝下丈までの下衣。高く結っていた髪を一度解き、下のほうで結べば町の子どものような姿となった。己の身分や職業を知られるわけにはいかない。だからといって町に溶け込めないような上位のものでも下位のものでもいけない。故に商人の子あたりを意識しているのが丁度良かった。
ザンゲツも同様で、軽く湯浴みを済ませた彼もイザヨイと同位くらいの者を意識している。ただしこの場合は簡素ながらも市松模様の着物に紺色の羽織り。目立つ片目の傷は包帯で隠す。折れてしまっている角はどうしようもないが、がたいのよさと強面な風貌から少々只ならぬ雰囲気が漂う。
それを見てイザヨイは溜め息をついた。
「……あやしい」
「仕方あるまい。これ以上はどうしようも」
何かとつけて情報収集として町へ下りることの多いイザヨイに比べ、ザンゲツは裏の仕事が主なため顔を知るものはいないだろう。故に斯様な身なりで平気なのだが。
再度溜め息をついたイザヨイを尻目に、ザンゲツは部屋の外へ出ようと扉に手をかけている。声をかけずに振り返っただけの相手に、イザヨイが素早く気づいてその後につく。後ろ手に戸を閉め、町の方角へと連れ立って歩いた。
町へ近づいていけば行くほど、まだ朝は早いというのに活気付いている空気が風に運ばれてくる。
色々なものが揃う朝市はもうすでに開始されているようで、所々から値切りの声や談笑が飛び交う。挨拶の言葉は止めどなく、柔らかな日差しの中で人々は忙しない朝をきびきびと動き回っていた。
まるで世界が輝いている。多分、この場に居る自分以外の人にとって、大地を照らす光は恵みそのものなのだろう。イザヨイは、周囲を見つめながらそんなことを思った。
商人の客寄せの声、近所同士の挨拶、はしゃぎ回る子どもたち、母が子を呼ぶ姿。
どれもが世界中で瞬いているのに、イザヨイには色褪せて見える。否、自分がその色に染まっていないのだろう。
自分は、朝日に照らされれば消えてしまう闇と同じだ。
傍らを共に歩くザンゲツは何も言わない。時折市へと視線を投げかけながらも、しっかりとした足取りで進んでいる。どこか目指している場所でもあるのだろうか、とイザヨイが不思議に思う間もなく、通りの反対側から声を掛けられた。
視線を寄越せば、人のいい笑みを浮かべて手招きしている商人が居る。布の張られた天幕の下には色とりどりの布が広げられていた。どうやら、呉服屋のようである。
脇には屋号が示されており、どうやら老舗の呉服屋が市のために場所をとったのだと分かった。
声を掛けられたイザヨイがどうしようかとまごついていると、気が付いたザンゲツが其方へと近づいてゆく。その際に軽く腕を引かれて、足の止まっていたイザヨイは引かれるままに従った。
「どうです、そこのお嬢さんに似合ういい柄があるんですよ」
明らかに性別を見誤られていることに、イザヨイの形の良い眉が跳ね上がる。どう見ても男性ものの着衣なのにも関わらず、商人には少女が偽って斯様な服装をしているとしか見えないらしい。舌打ちしたい気持ちを抑えつつ、イザヨイは何やら布を物色しているらしい相棒を見つめた。
顎に手を添えているときは、本気で思案しているときである。長い付き合いでそれを知っているイザヨイは眉間に皺を寄せて、彼の名前を呼んだ。
「欲しいものでもあるのか?」
「いや……ここには見当たらない。主人、」
ザンゲツが顔を上げて呉服屋の商人を呼びつける。他に種類はないのかと尋ねれば、それなら店の方へと勧められた。
「確かに、この市に出すものより上等なヤツの方が、お嬢さんの可愛らしさが引き立つでしょうね」
悪意ない言葉にイザヨイの頬が引きつるが、それよりも前にザンゲツが天幕から出ていった。店は知っているかと背中越しに尋ねられれば、有名な屋号なので存じていると返す。イザヨイも仏頂面を作りながらその場所を去り、また男の傍に立った。
「…全く、私は男だ」
「いいではないか。それだけ見目がいいということだ」
そう言うザンゲツの表情は穏やかで、馬鹿にしている様子は一切ない。
イザヨイはそれを下から覗いて、固い表情を僅かに緩めた。
そういえば、とはたと気づいたイザヨイがザンゲツを呼び止める。すると視線だけをイザヨイへ寄越し、なんだとその目で問うた。
「ほ、本当にその呉服屋に行くのか」
「ああ」
「…何を見立てに?」
「お前のだが」
当たり前だろう、と言われ顔から火を噴きそうになったのを、日々の鍛錬でなんとか押し留めたイザヨイはザンゲツから視線を逸らした。
普段の無表情を貫いたはいいが、口がぱくぱくと開いたり閉じたりを繰り返してしまう。兎も角、言葉が出なかった。
ザンゲツは首を傾げはしたが何も言わず、もう着く、と先にある屋号を示す。
「似合うものがあったら買ってやろうと、前に言っただろう」
その言葉にイザヨイの心臓が飛び跳ねたが、同時に苦しいものが胸中に広がった。頭から血が引いて、口を噤むしかない。
分けた長い前髪がザンゲツと隣り合わせにしている方へ寄せられていてよかった、と思った。彼から自分の表情が見えないだろうという予測が、イザヨイにとって今、安堵の吐息を漏らせた。
ザンゲツが店の戸を潜るのを止められず、諦めてイザヨイもそれに倣った。
中では朝だというのにも拘らず、人々が色とりどりの布を物色している。
金銭の足りないものは市に広げられている布を見るが、商人同士やそれ以上の位のものはこうして本店まで出かけてきて布を見立てる。その布を裁断し、縫合して着衣としたものまで作り上げてくれるので客側は来る手間はあれども作る手間は省けるというものだ。
確かこの呉服屋、とイザヨイはふと屋号を横目に思い立ったがザンゲツは早々に商人を呼び布を見ているため、思考は一時中断となった。
いくつか選ばれた布を、胸元に当てられる。
幾分質素な柄や色使いから、男性物だというのが窺えた。
商人の、今の流行だのこの柄が生えるだのという説明を聞いているのか、ザンゲツは色とりどりの布を当てられているイザヨイをじっと見つめている。珍しく男物を当てられているイザヨイは、複雑な心境ながら正直普段よくある間違いがなく機嫌は悪くなさそうだった。
しかし、やはりあれで、とザンゲツが指差した布地を見て一気に眉間に皺を寄せる。イザヨイの表情をちらりと見たが、ザンゲツは僅かに目元を緩めただけで、彼に向かって手を招いた。
何、と尋ねる前に、伸ばされた無骨な指が結った髪を解く。そしてザンゲツの手で布を当てられた。
茫然としていたイザヨイを無視して、ザンゲツがいくらか満足そうに頷く。濃紺の布地には上弦の月と、淡い水色で描かれた藤の花が咲き誇っていた。闇夜に浮かぶ河原の畔。所々散りばめられている柔らかな黄は、蛍か。これからの時期に相応しく、何よりコントラストにイザヨイの白い肌が際立った。
「良くお似合いです。それにしてもまぁ、お可愛らしい娘さんで」
「………」
女性の店員が、布を当てられているイザヨイを見て微笑を浮かべる。
しかしイザヨイの方が僅かに震えたのを捉えて、ザンゲツが布を店の座敷へと戻した。立ち上がりながら解いてしまった髪結いの為の紐をイザヨイに渡し、出るぞ、と彼を促す。
両足の固まっていたイザヨイがはっとして、一度店員に頭を下げると早々に戸口を出た。ザンゲツは随分と先を行ってしまっている。走って追いつけば、静かな瞳がイザヨイを見つめた。
「大丈夫か」
「……え、」
「いや…買ってやれなくてすまんな。あれは結構似合っていたが」
「…いい。それだけで」
十分だ、と首を振ればザンゲツは微かに眉を寄せた。
イザヨイは、首を振ると俯いてザンゲツの視線から逃げる。それでも頭上から降り注ぐ雰囲気が何とも言い難く、目に付いた茶屋へと彼を誘った。
二人揃って店先の布の掛かった椅子へと腰掛ければ、目の前は人々が行き交う市を眺めることができる。だがイザヨイは其方へ視線を向けることなく、自らの足元を見つめていた。
ザンゲツの目が己から逸れ、安堵する。反して心の奥底では哀しみのような何かが渦を巻いていた。イザヨイは一度瞼をきつく閉じる。
耳の奥で反芻される声。市で店を広げていた呉服屋と、先程の店員の言葉。
どこまでも、自分と彼は釣りあわないのだろう、と打ちのめされる。そんなことは随分と昔から分かってはいた。彼はどんどん先へ行き、自分も成長しているとはいえまだまだだ。周囲の認識では、全く自分たちは釣りあっていないのだ。
足元へ注いでいた視線を、己の腕へと注ぐ。細い細い腕。男という性にありながら、痩せ型の体躯はいくら食べても年齢を重ねても変わらない。それでも筋力はあるのだ。ただ、肉のつきにくい体質で、イザヨイにとってそれは重い重い枷だった。
指先で自らの喉元を撫でる。声変わりを迎えた筈のそこにはきちんと喉仏もある。けれど声音は僅かにトーンが下がっただけで、今でさえ変装し女性として任務をこなすこともないわけではない。つまり、女性に間違われることは差して苦痛ではないのだ。
耳の中で、こんなにも声が響き渦を巻くのは、そこに彼と己とが他人には親子に見えるということ。確かに、年齢の離れ具合と互いの外見を見ればそう見えることもあろう。現に、イザヨイが幼い頃はそうだった。ザンゲツは年齢の割りに年上に見えることもあって、イザヨイは自分も小さいし仕方がないと思っていた。だが、彼と町を歩くのはそういった理由であまり好まなかった。
違う。怖かったのだ。
今のように、打ちのめされるのが嫌だった。
他者の目というものを常に気にして生きていく陰の者であるが故か、イザヨイは周囲の視線と言うものに敏感だった。胸に抱いている感情云々もそうだが、それ以上に彼と釣りあいたいという気持ちは、幼い頃からずっとあったのだ。
だが、まだ変わらない。変わっていない。
イザヨイは、湧き上がってくる重苦しい溜め息を留める事が出来なかった。
「イザヨイ」
不意に名前を呼ばれて、反射的に顔を上げた。視線の先には真剣な眼差しのザンゲツがいる。そこで漸く自分が考えていたことや行動を自覚して、まさか彼が全て見てはいないだろうかとイザヨイは不安になった。
突如とした波がイザヨイを襲っているのを知ってか知らずか、ザンゲツは訝しげな視線を彼へ送る。だが短い時間だけだった。
大きな掌が、イザヨイの左頬を包む。前髪に覆われていない頬を、ザンゲツの骨ばった親指が撫でて、そのまま目の下を拭うように擦った。
イザヨイは目を見開き、彼の人を凝視している。
穏やかな目は、強い光を放っていた。
「寝不足だろう。また魘されていたぞ」
「……………」
ぎくり、とイザヨイの肩が僅かに震える。
情報収集を終えた後に、見てしまう悪夢。慣れぬ頃は常日頃のように見ていた夢も、いつしか鎮まっていた。だが、ここ最近再発していたのだ。かなりの頻度で、イザヨイは魘されていた。
ザンゲツはそのことも知っていただろうし、原因も掴めていたろう。それでも今の今までこうして言ってくることはなく、イザヨイにとっては救いだった。
こんなことで苦しむ自分を、彼に知られたくないと思っていた。
なのに、ザンゲツは今、イザヨイの傷を口にしている。
「お前が慣れるまで黙っていた。実際、最近までは落ち着いていたはずだ。なのに何故、突然また魘されるようになった」
「……分かりません」
あんたが原因だよ、とは言えなかった。
元凶であるザンゲツは、イザヨイの答えに更に眉間に皺を寄せる。そんな顔をしたいのはこっちだ、とイザヨイは胸中で毒を吐くも表情までには出さなかった。心の中とは違い、添えられている温かな掌が心地よくて目を細めてしまう。
思わず頬を摺り寄せそうになって、イザヨイは唇を噛んだ。
ザンゲツはというと、小さく溜め息をつくだけだ。同時に添えていた手をゆっくりと離してしまい、イザヨイは名残惜しさに駆られた。
「…任務を、無理してこなしてはいないか?」
ザンゲツの言葉に、イザヨイは驚いた表情を隠せず、大きな眼が零れ落ちてしまいそうなほど目を見開いた。
何を言っているのだろうという疑問符が、イザヨイの脳内を占める。ザンゲツは彼の表情から何を汲み取ったのか、どうなんだ、と瞳で尋ねてきた。
しかし見開いた目を逆に伏せて、イザヨイは口を噤んでしまう。暫くの時間、沈黙だけが二人の間に落ちた。
賑やかな市場の空気とは違い、二人を包んでいる空気はどこかひんやりとしている。働き盛りな時間の為、茶屋で休んでいるものは殆ど居ない。
ザンゲツの静かな瞳は、イザヨイに注がれたままだった。それでもイザヨイは頭を垂れたまま動かない。耐えかねたのか、それとも見限ったのか分からないがザンゲツが長い溜め息をついた。イザヨイの細い肩が震える。
瞳と同じように静かな、落ち着いている声音がイザヨイの鼓膜を震わせた。
「……お前が任務の最中、俺はどうしていると思う」
「……?」
「情報漏洩の防止とお前が聞き忘れることがあっても大丈夫なように、誰かが張っていると考えたことは?」
つまりは。
イザヨイの表情が先程とは比にならないほどの驚きに包まれる。どういうことだ、という訝しげな表情から一変し、ザンゲツの言葉を理解して血の気が一気に引き、大きな瞳が微かに潤む。視線をザンゲツから逸らすと、自らを抱きしめるようにして腕を組んだ。
細い体と、声音が震えている。
「あんたは……」
「…………」
「全部、……知ってたのか…」
イザヨイは、ザンゲツは己が情報収集のために陰間に忍び込んでいることしか知らないと思っていた。これは自分個人の任務なのだと。だから己が任務をしている間、彼は何をしているのだろうとぼんやりと思った事はあった。しかしまさか。まさか己が客相手に体を開いている所を見られていたとは、誰が知っているのだろうか。
いや、多分イザヨイ自身が聞き損じのないように傍観の位置に居ることが彼の任務なのだ。それを、彼は黙っていた。自分は気づかずにいた。
知らずに、自分は客に彼を重ねて抱かれていたのだ。彼の腕の中に居るのを夢想して、彼のもので達する夢の中にいた。
最悪だ。
足元が崩れる音がする。どんどん深淵へ落ちてゆく。
情報収集の間に散らした命も多数あった。自分が手をかけても、何も問題にならなかったのは、彼と他の仲間や頭が処理してくれていたのだろう。時折暗殺の任務もあったりはした。場所が場所なので表沙汰にされることなく今に至っている。
そうしたことの全てが、こうした形で返ってきた。最悪の形で。
見張りを立てられていることの衝撃より、彼がまさか自分と他人の情事を見ていたことのほうが、何倍もイザヨイには苦しかった。
戦慄く体を、どうすればいいか。
「………無理なんか、していない」
搾り出すようにして呟いて声は擦れていた。
口の端がくっと厭味臭く上がる。なんともまぁ、滑稽だ。
イザヨイはゆっくりと椅子から立ち上がり、ザンゲツを見下ろした。彼の瞳は相変わらず凪いだ湖面のように静かだ。そのことが気に食わなくて、イザヨイは目を細めて彼を睨み付けた。
「見ていたなら知っているはずだ。…何も無理などしていない」
「だが、こうして魘されているだろう」
「別にたまたま夢見が悪い日が続いただけだ」
「…………」
「私だっていつまでも子どもじゃない。それに」
あんたには、関係ない。
そこまで口にして、イザヨイは身を翻した。雑踏に紛れるようにして市場へと走っていく。
背後でザンゲツが立ち上がる気配があったが無視をして、兎も角彼の視線から逃れたくて駆けた。上手く人を避けて、全力で走り抜ける。
胸の中に湧き上がっている感情が何か、良く分からない。けれども悲しくて、悔しいのは分かった。湧いて溢れた感情は黒くとぐろを巻いてしまい、ずしりと重く圧し掛かっている。振り払うように首を振って、イザヨイは朝二人で来た道を一人で走っていた。
息が微かに上がって、足を止めた。いつの間にか噛み切っていた唇のせいで、口内は鉄の味でいっぱいだ。それに眉を顰めながら後ろを振り返り、イザヨイは無意識に肩を落とした。
ザンゲツが追ってくる気配は、ない。
雑踏はもうとっくに遠ざかり、喧騒すら聞こえない。町の方角よりも緑が極端に多い場所まで辿り着いて、イザヨイはその場に座り込んだ。
追ってくるとは、思っていない。けれど、少しでもその素振りを見せてくれればと思った。
彼の反射神経と体躯ならば、駆け出したイザヨイを引き止めることは容易かったはず。だが彼はそれを跳ね除けた。イザヨイの愚かさに辟易して、言葉を投げかけることもしなかった。
途端に込み上げてきた感情の波は、簡単にイザヨイの心を攫っていった。目の裏が熱い。頬を伝う幾つもの筋を留めることなど出来ず、イザヨイは地面を濡らす自らの雫をじっと見つめて、声を押し殺した。
外はもう宵闇が空を包んでいる。
室内を照らす照明は、いつもぎりぎりまで絞られていた。
艶やかな着物の袖を汚さぬように引き寄せて、イザヨイは正面に座している客に微笑を浮かべる。
夜に任務があったイザヨイは、泣き腫らしてしまった目を何とか静めて、灯篭の灯った店を裏口から入った。
禿(かむろ)の少年がイザヨイの姿に小さく微笑んで、いつものように宛がわれている太夫専用の部屋へと通してくれた。そしてそのまま服装を整えて、髪を結い上げ、時間になるのを待ったのだ。
予約の客の前に通される間、軋む音すらしない廊下を進みつつ、イザヨイは先の部屋にはもう彼がいるだろう事が想像できた。
今も天井裏から見ているだろう相棒を想像して、イザヨイの口角は微かに上がる。普段であれば惰性も微かに含めながら客の相手をしていたが、彼が見ているのならば存分に力を見せてやろうじゃないかと、店に来る前から妙な高揚感に包まれていた。
常連である客にイザヨイは酒を注ぎ、上機嫌な今回の任務遂行の餌は気をよくして酒を一気に呷った。
そこで、客がそういえば、と言って傍らに置いてあった包みをイザヨイへと差し出す。
嬉しそうな笑みを浮かべる演技をし、イザヨイは包みを開けた。
艶やかな笑みを浮かべていた目元が、微かに見開かれる。
「…これは、」
「上等なものだろう。太夫に似合うと思うて、買ってしもうた」
微かに震える手を抑えて、イザヨイは包みの中の布を手にとった。
布地は濃紺。柄は上弦の月と、水辺の藤の花。そこに散るのは蛍の光。
奇しくも、昼間にザンゲツが選んだ布と全く同じの着物であった。
戦慄く唇を袖で隠し、驚きの演技に変える。イザヨイの様子に喜んでいると勘違いした客は、いっそ着替えてきたらどうだとイザヨイを急かした。
その申し出に笑みを返して、礼を述べると同時に立ち上がる。それにすかさず反応した、襖の奥にいた禿が戸を開けて太夫を招いた。
帯を解きながら、イザヨイは天井をちらりと見やる。
物音ひとつしないが、彼がいると知ってから全身で梁を探っている。未だに気配を感じ取ることは出来ないでいるけれど、きっと見ているだろう。
そう思うと、イザヨイの口元が笑みで歪む。
昼間に息づいた黒い黒いとぐろは、未だイザヨイの胸中で生きている。それが今、顔を出して彼を闇へと引きずり込もうとしていた。
重なった熱を嫌悪する間もなく、イザヨイは声を上げる。
口元に片手の甲を当て、下半身を燻る熱をどうにかしようと身を捩った。しかし彼を上から押さえつけている力が逃げることを許さない。むしろ逃れようとしたことを咎められて、絞り上げられている根元を更にきつく締め上げられて、イザヨイは切ない声を漏らした。
広げられた布団の上で、ふたつの熱が絡み合う。イザヨイの背中には、着替えたばかりの着物が皺となっているが、わざとそれに指を引っ掛け、引き寄せるようにした。
微かな光の中で彼の額や首筋には汗が光を反射させ、目元の涙が瞬く。一糸纏わぬ姿で膝を大きく開いて、その腹部には別の体温が彼の体を弄んでいた。
口元まで紺の生地を引き寄せ、食む。客の肉付きのいい掌が脇腹を撫でると、いやいやをするように頭を振った。その度に、ぱらぱらと髪の毛が散る音がする。
艶かしく肢体を震わせて、イザヨイはあられもなく喘ぐ。そんな姿を見下ろし、客はいやらしい笑みを浮かべ、珍しいと囁いた。
馬鹿め。
冷め切っている脳内でイザヨイが吐き捨てる。別に肉と権力の塊を喜ばす為に自分は喘いでいるわけではない。
わざわざ鼻腔を刺激する生臭い臭いと、水音に耐えてやっているのではない。
自らの胸元の突起に舌を這わせる熱源を冷ややかに見下ろしながらも、彼は熱っぽい吐息を漏らすのを忘れず、時折挑発するように腰を揺らめかせた。
挑発しているのは、他でもない。
濡れた金色の瞳が天井へと注がれる。
太腿を撫でる脂肪だらけの掌を、豆の潰れたごつごつとした掌に置き換える。
気持ち悪いほど耳元に注がれる荒い吐息で、身も焦がすような低音を吐き出す唇を想像し差し替える。
最奥の蕾に擦り当てられる肉棒を、彼のものだと思い込む。
脳の裏にこびりついてしまった記憶を引き出して、出来る限り彼を重ねた。そうして全てのピースが埋まった瞬間、イザヨイの体を今までに感じたことのないほどの快感が貫く。
揺さぶられる度に、びりびりとした電流がイザヨイを焦がす。その度に声を上げて、噴出す汗を周囲に散らす。
薄っすらと瞼を開いて、木で張られている天井を見つめる。彼はきっと今の自分も、行為も、声も全て見ているだろうし聞いているだろう。
何を思っているかなど知らない。知りたくもない。
イザヨイには、彼は自分がこんなことをしていても軽蔑しないだろう確信があった。
任務は任務。客は客。それを良くも悪くも理解している人だから。
ただ、見せ付けてやりたかっただけだ。
何を、と尋ねられてもイザヨイ自身分からない。けれど兎に角、心にぽっかりと空いた何かを彼に見せ付けてやりたくて、イザヨイは彼の物ではない熱を彼と思い込んで、白くなる視界を受け入れ、果てた。
情報収集をした日は必ず朝帰りになってしまう。
彼が見張りとして張っているのならば、頭に報告するのはまた後ででもいいだろうと、イザヨイは自室に戻ってぼんやりとしていた。
気だるさは抜けず、無茶苦茶に引っ掻き回された我が身はそう簡単には言うことを聞きそうになかった。
それでも客を見送り、店で湯浴みを済ませ、こうして自力で兵舎まで戻ってきたのだ。今まで通り彼は手を貸してくれることも、顔を出すこともなかった。
まさか最後までいなかったのだろうかと考えるが、あの人の性格を考えてそれはないだろうと、イザヨイは思いなおす。
あの時のような黒い感情は、朝を迎えたときはなりを潜めていた。
見せ付けてやろうという衝動に任せて自ら体を開いてみせた。何故そう思ったのか、衝動に任せたのか、冷静になった頭でなら分かる。
ザンゲツにとって、自分は眼中にないのだとあの時悟ってしまったからだ。
確かに、好いてはくれているのだろう。そうでなければ呉服屋に連れて行ったり、稽古をつけたりはしてくれない。だが、その好意は自分が彼に抱く想いとは掛け離れているのだ。
熱に触れたいと思うような、他者が彼に近づけば嫉妬するようなものではない。
そんなこと、とうの昔に分かっていたというのに。
どうも先日触れられて以来、自制の箍が外れやすくなっているようだった。自分で戒めたことを破って、彼に触れられることを望んでいる。そんなことは絶対にないと、あり得ない話だと理解しているにも関わらず。
「…………」
結論に達し、自分で自分を傷つけるような自虐的な考えにイザヨイは泣きそうになった。
自覚するために、思い知る為に自問自答したことだったが傷は浅くはない。涙腺も昨日からの後遺症か緩くなっており、目元に溜まった雫を軽く拭い、イザヨイは膝の上に広げた布を握り締めた。
それはザンゲツが似合うと言ってくれたものだった。ただし、彼の手から渡されたものではなく、別のものから手渡されたものだ。
けれどもあのまま店に置いてくる事が出来ずに、禿に頼んで包んでもらいここまで持ってきてしまった。
性行為の痕は殆ど残っていない。何故なら自らの下に敷かれていたそれは、どさくさに紛れて端へ追いやった。手の届く所に置いてはいたが、手を伸ばして引き寄せるくらいしかしていない。
彼の眼中に当てはまらない自分を、彼の人へ結びつける為の最後の糸だった。
似合うと言ってくれた人を思い浮かべながら、イザヨイは藤の花を抱きしめる。
その時、背後の戸が開いた。
「…寝ていなくて、いいのか」
「……大丈夫」
案の定、ザンゲツが室内へ入ってきた。昨日の昼間に別れた気まずさが彼にはなく、何も変わらない。そのことに安堵しつつも、イザヨイは目を伏せた。
任務の装束のままのザンゲツは、室内に上がって装束を解きながらふとイザヨイへと視線を走らせる。視線を感じてゆるりとイザヨイが顔を上げると、そこには渋面の相棒がいた。
どうやら自らではなく別のものに注がれている視線を追い、その先にイザヨイが握り締めている着物があることに気づく。
沈黙が重く横たわり、イザヨイは身を硬くした。ザンゲツの視線はどこか鋭く、真剣なもので、声をかけづらかった。
どうしたのか、と尋ねることも出来ず暫く互いに声を発することもなく、だからといって身じろぎするでもない。
そうして暫くすると、ザンゲツの低い声がイザヨイを呼んだ。
「その着物は、昨日のか」
「…そうだ」
「客にもらった?」
「…………」
心なしか咎められるように問われて、イザヨイは小さく頷くしかなかった。
ザンゲツはイザヨイが頷くのを見ると溜め息を零し、それ以上はなにも言わない。ただ鋭かった視線を細めて、着物ではなく今度はイザヨイを見つめている。
そんな目で見られるいわれはないと、イザヨイは叫びだしたくて仕方がなかった。否、こうして貰ったものを持って帰ってくるような、私情を挟むことはご法度であるが、別にあの客に未練があったわけではない。それをザンゲツが知るはずもないのはイザヨイも承知である。まさか言うつもりもないのだから。
ザンゲツは物怖じしながら見つめてくるイザヨイを暫し見つめてから、盛大な溜め息をついた。イザヨイが眉を寄せ何か言おうと口を開くが、その前にザンゲツが言葉を発するのが早かった。
「いつもは、焼き捨てているのにな」
その言葉にイザヨイはカッとなったが、やはり顔に出すようなことはしなかった。代わりに握り締めている濃紺を更に更に握りしめる。視線は、ザンゲツから逸らすことはなかった。
イザヨイの様子を見下ろしていたザンゲツが、彼のほうから視線を外す。そして装束を解いて楽な格好になると、視線の端でイザヨイを見、小さく呟きを零し部屋を出て行った。
戸が全て閉まりきると、イザヨイの手元に込められていた力が抜ける。
つられて倒れそうになる体を、背中に力を入れることで何とか保ち、長く深呼吸をした。
ザンゲツが出て行った戸を、肩越しに振り返る。気配はもうとっくになく、イザヨイは視線を床に落とした。
去り際に零された言葉を、脳内で咀嚼しようとする。
すまない。
彼が落として言った言葉。
その心意を量りかねて、イザヨイは瞼を閉じた。
終
カウさまへ心を込めて
ザンイザ小説
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セプトさんの小説に感化されて女郎イザヨイを贈った所、
なんと小説を頂いてしまいました!!ありがとうございます!!
私、セプトさんのザンイザ小説がツボでツボでツボでツボで!
片思いっぽいイザヨイが可愛いのですよ!たまらんのですよ!
あまりの読みたさに『いつもの続き』をリクエストしてしまいました。
是非是非この前にあたるお話も皆様に読んで頂きたい!!
特にオススメは2話目ですよ!
「…うん…」とか言っちゃうイザヨイにものすごいもえます。キュンキュンします。
セプトさんのサイト。
http://seventh.onmitsu.jp/
■2006年5月 comment&illustration by カウ■
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Our HP is the illustration center HP where two people of Cow&Chicken manage it.
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