「マリア!」

 ジョートショップのお手伝いが早めに終わり、寄り道でもしようかな、と考えていた時。
 マリアを巻き込んだ張本人、幸樹が声をかけてきた。
 「何?」
 「今度の休み、サーカス行かないか?」
 にこにこしながらチケットを2枚目の前に突き出して見せる。
 思わず、その表情とか仕草にむっとしてしまった。
 「……そんな子供っぽいの行くわけないでしょ!」
 ぷいっとそっぽを向く。
 「レディーを誘うならリヴェティス劇場とかラ・ルナとかにしなさいよね!」
 いつもみたいに意地を張って言い放って、ちらっと横目で幸樹を見てみる。
 「まぁどうしてもマリアと行きたいって言うんなら行ってあげても……」
 「そかー……じゃあまた今度! あ、いいとこに! トリーシャ!」
 マリアがぼそぼそとつぶやくのを聞かずに、ぱっと通りかかったトリーシャの方を振り向く幸樹。
 ぱたぱたとそっちへ行ってしまった。
 「ん、なになに幸樹? 何かおもしろい噂?」
 「サーカス行かないか?」
 「え、あー、うん。この日なら暇だし行く行くー!」

 「……」
 ……うー…!
 「幸樹のばかー!!! ヴァニシング・ノヴァ!!」
 「うわー!!?」
 魔法成功。
 平和な大通りに最強物理魔法の衝撃音が轟いた。


 「あいつも鈍感だけど、あんたも意地張るからー…」
 さくら亭。
 パフェを食べながらどんよりするマリアに、パティがあきれた感じで言った。
 「絶対美人になって、子供扱いできないようになってやるもん!」
 「ま、がんばんなよ」
 「ボウヤがあのまんまだったら道は相当厳しいだろうけどねえ」
 隣でピザを食べてたリサがひとこと憂鬱になるようなことを言ったけど、マリアは気にせずもくもくとパフェをぱ く付いた。
 覚悟しときなさいよ、幸樹!