メープルシロップ



 私立女装学園。
 山奥にひっそりと存在する、全寮制、中高一貫の学校である。
 学力のみではなく、個性を重視するという、独特な入学試験を行っており、受験者も合格者も少なく、学園の内情はよくわかっていない。
 これは、数奇な運命を経てこの学園に編入された少年の、愛と青春の旅立ちを描いた物語である。多分。きっと。


 有紀は、高校一年生の少年だった。
 母と二人暮し、この前まで公立高校に通っていた。ところが突然、この女装学園への転校が決まった。

 最近母が病弱で、有紀には寮に入ってもらいたかったのだろう。有紀本人はそう考えているが、彼はまだ、真実を知らなかった。




 学校に着いた有紀は、まず、案内係の美雪という生徒に連れられ、学校内を歩いた。
 美雪は高等部2年生だという。この暑いのに、真っ黒なゴスロリをきっちり着ていた。

 教師たちへの挨拶、校内設備の説明、と一通り受けた後、美雪と有紀は、敷地のはずれにある、西洋の城にしか見えない建物に向かった。
 日の光を受けて燦然と輝く城は、校舎より何倍も大きい……。  それどころか、校舎のほとんどに、その巨大な影を落としていた。

 城の中も、広く大きかった。赤い絨毯が敷かれ、きらびやかな装飾品が立ち並ぶ通路を二人がしばらく歩くと、目の前には、巨大な扉。


「生徒会長、本日から転入の生徒をお連れしました」
 美雪がそう言うと、大きな扉がゆっくりと開いた。

 ここは本当に個人の部屋なのか、有紀は疑問に思った。
 広さは体育館ほどはあり、大量の花と白い柱で飾り立てられて、室内には人口の川まで流れている。
「生徒会長をつとめております、綾小路由香里と申します。よろしくお願いしますね」
 生徒会長と呼ばれた美しい少女は、微笑を浮かべながら、まるでどこかの王様かお姫様か、というほど豪華な椅子から、優雅に立ち上がった。
 これまた、どこのお姫様か、と思わせるような華麗な衣装をまとって。
 綾小路由香里は、優雅な足取りで有紀と美雪に近づくと、言葉を継いだ。
「さて、貴方は、もうここの生徒なのですから…これから守っていただかないといけない、幾つかの決まりがあります。それをお知らせしないといけませんわね」

「……もしかして、女装して過ごさないといけないとかですか?」
 有紀が言った瞬間、その場は騒然とした。
「恐ろしい子……!」
「なぜ知っているの……!?」
「いや、僕、ここ男子校だって聞いてきたんですけど」
「なるほど、わかりましたわ。受験を経てでなく、転校ですものね。そのくらいの情報は持っていても、おかしくはないですわね」
 一瞬動揺していたらしい綾小路由香里は、再び微笑を浮かべると、さきほどまで使っていた豪華な椅子に再び座った。
 有紀は、聞き逃す事はなかった。
 綾小路由香里が腰掛けるとき、聞き取れるかも怪しい小さな声だが、確かに、「よっこいしょ」と口にしたのを…。
 この人は本当に少女、いや女装だから、少年なのだろうか?
 その疑念は、有紀の頭の中から、決して去る事はなかった。

「というわけで、寮まで案内しますね。今日は授業は出ないでいいみたいです」
 美雪は、そう有紀に声をかけた。

 二人で歩いているとき、有紀はふと口に出した。
「生徒会長って、不思議な人ですね」
 生徒会長、という言葉を聞いた瞬間、美雪から感じる気配、オーラとでも言うものであろうか、それが急変したのを有紀は感じた。
 突き刺すような気配。触れば用意に切り裂かれるかと思うほどの、鋭い気配。
「そうね。不思議な人よね」
 美雪は笑った。そのときには、すでに美雪から危険な気配を感じなくなった。

「有紀さんのお部屋は、ここになります。
 同室者は、3年生の望さん。優しいってみんなの人気者ですよ」
 有紀を部屋まで案内すると、美雪はそこから立ち去って行った。


「生徒会長? 私、中学は一般出てからここ入ったんだけど、そのときから3年生で、ずっと生徒会長やってる。それ以上は、誰も知らないんじゃない?」
「知らないんですか?」
「怖い噂があるの。生徒会長の素性を探った子は、夜中にさらわれて、学校の地下の動力室で、人力発電機を回させられたり、どっか変な国に女装マゾ奴隷として売られたり、ひどい目にあっちゃうらしいんだよー」
「えー」
 有紀は、望とはすぐに打ち解けた。
 夕食をとって戻るなり、仲良く話している。
「それより、さ」
「なんですか」
「私……こんなに可愛い子が、同じ部屋に来るなんて思わなかった。ほら、すごくドキドキしてるんだよ……」
 望は有紀の手を取って、自分の胸に導こうとした。
 手が触れ合った瞬間、有紀はびくっと震えたが、望のしたいようにさせた。
「ね、有紀ちゃん……私のこと、軽い子だと思わないでね。でも、すごく胸がドキドキしてるし、手が触れあっただけで、私……。だから、有紀ちゃん、私と」
「いやです」
「ちぇ」


「ねえ有紀ちゃん……特別なの。お願いだから」
 夜も更け、消灯時間が近づいた頃、望は再び有紀に迫り始めた。
「私、本当は生徒会長の本名知ってるの…さっき、落ちてた学生証、拾っちゃったの」
「!!」
「もうだめだ、私、どうなっちゃうんだろう」
 望は天を仰ぎ見るように、呆然としていたが、すぐに気を取り直したようで、有紀をじっと見つめた。
「だからせめて、最後の思い出かもだから……有紀ちゃん……」
 徐々に自分に迫ってくる望から、有紀は離れようとした。
「だめ、絶対に逃がさないからね」
 望は、すっと身をかがめると、文字通り、獲物に飛び掛る猛獣のように有紀に飛び掛り、ベッドに押し倒した。
 さっきまで綾が持っていたコーヒーカップが床に落ちた音は、その後に響いた。
 すばらしい、まさに、すばらしい、早業であった。

 マウントポジション、そう呼ばれる形になった。
 しかし、望が繰り出したのは、容赦のない打撃ではなかった。
 望は有紀の両手を、優しく、そう、優しく押さえただけだった。
「抵抗していいよ……でもそうしたら、痛くしちゃうからね? 嫌われたら嫌だけど、でも私、もうだめかもしれないもん」
 望は、涙をためながら有紀を見下ろす。
 その涙が流れ落ち、有紀に当たるまでに、部屋は真っ暗になった。

 何が起きたのか。突然、望の重さがなくなった。
 有紀は手を伸ばし、そして、起き上がって再び手を伸ばしたが、その手は空を切った。

 ばちん。
 そういう音がした。

「見てしまいましたね?」
 暗闇に目が慣れてきて、有紀は、倒れている望と、その背後にいる、手にスタンガンを持った美雪の姿を、見る事ができた。
 美雪は昼間出会ったときと同じ、堂々たるゴスロリ姿で、立っている。
 ただ立っているだけなのに、そこには一部の隙もない。そう感じさせた。

「……そして、私が実は生徒会の秘密工作員で、生徒会長の本名が、毒島熊之助などという名前だと知った者を処分している事も、知りましたね」
「毒島……熊之助……!?」
「知ったどころか口にも出しましたね。情状酌量の余地はありません。あなたも、ほかの子たちのように、どっか変な国に売られるのです」
 美雪は、スタンガンを持ったまま、有紀ににじり寄る。
 しかし有紀は逃げようともせず、ぼそっと、つぶやいた。
「父さん……!?」
 必殺の間合いに達し、ゴスロリとは思えぬ素早い動きで有紀に迫った美雪は、その言葉を聞いて、止まった。
「有紀さん、今、なんと?」
「え……」
「動かないように。冥土の土産に、話だけは聞いてあげましょう」
 美雪はスタンガンを有紀の首に押し付けたまま、ふっ、と殺気を抜いた。
 しかし美雪に隙はなかった。
「僕の……いえ、私のお父さんが、毒島熊之助って名前なんです」
 有紀の言葉に、美雪は耳を傾けた。
「私が生まれる前に、行方知れずになっちゃったらしいけど…」



 ――似ているわ。あの人に、似ている。
 綾小路由香里は、今日出会った新入生に、遠い昔の記憶を重ねていた。


 そのとき男は自慰をしていた。
 男には妻がいる。その腹の中には子もいる。
 子を思って、男は気を使って自分で済まそうとしたのだ。

 だが、普通の自慰ではなかった。

 セーラーヴィーナス。そう呼ばれる者の服が、その筋骨隆々たる体躯を包んでいた。
 服は破れ、かいま見える男の乳首には洗濯バサミが止まっていた。
 その尻には、太い、太いバイブが深々と挿さり、その一物には、ガムテープでローターが幾つも取り付けられていた。
 その上から両手で自分の一物を押さえ、膝と頭だけ支えに、うつぶせになっていた。
 普通の自慰ではなかった。

 おおおおお。
 おおお。
 顔を床に押し付けながら、男はうめく。男は絶頂に向かっていた。

 だが男は、ある事に気づいた。

 妻が、この部屋にいた。
 いるはずはない。買い物に行っているのだ。早すぎる。
 だが、いた。

 男は驚き、膝立ちになり、妻のほうを向く。

 ごとん。
 尻から抜け落ちたバイブが、床に当たる音が響く。

「へ、変態!!」
 妻はそばにあった物を、男に全力で投げつけた。
 投げてからわかったが、それは、目覚まし時計だった。
 それは、まるで吸い寄せられるように、男の一物に命中した。
「ぬふぅ」
 その瞬間に、壊れた時計からは耳をつんざく音が鳴り響き、そして男は達した。
 凄い距離、飛ばした。妻に命中せんばかりに。
 まさしく、銃弾か、砲弾か。はたまた大陸間弾道弾か。日本列島を通り越して太平洋に着弾するのか。まさかアメリカ本土までもが照準内なのか。

 ――タイモンよう、できるなら、時間など止めてしまってくれよ。

 鳴り響く目覚まし時計を見て、男は、くくっ、と笑った。
 そして男は、屹立したままの一物を隠すこともなく、その姿のまま走り去った。
 金木犀の香りが、あたりには立ち込めていた。




 ――いけないわ、わたくしとしたことが、はしたない。

 綾小路由香里は、くすっ、と微笑むと、優雅な手付きで、スカートの中で自己主張しているものの位置を直した。
「セバスチャン」
 綾小路由香里が、つぶやくようにそう言った直後、返事が返ってきた。
「こちらに」
 どこにいたのか。あるいは、最初からそこにいたのか。
 その、セバスチャンと呼ばれた者は、綾小路由香里のそばにいた。

 背が高い。綾小路由香里より、さらに頭ひとつは大きいであろう。
 服に隠れているが、手足は細く、長い。
 その細身の長身を、メイド服という戦闘服に包みんでいた。
「気になる事がありますの。調べてきて下さる?」
「はい」
 セバスチャンは間髪を置かず返事をした。
 何を調べるのか、何をすればいいのか。そのような問いは、その後だ。
 そしてほとんどの場合、セバスチャンから問う必要などない。
「よろしくて。今、美雪さんが寮で任務を遂行中なのですが」
「了解。至急現場に急行し、サポートします」
「お待ちなさい」
 その場を立ち去ろうとしたセバスチャンを、綾小路由香里は呼び止めた。
「たとえ貴方でも、不用意に行けば…ただでは済まないはずですわ。わたくしの推測が正しければ、なのですけどね」




「でもね、このまま何もなし、というわけには、いかないでしょう?」
 有紀の話を聞き終えた美雪は、溜め息をつき、続けた。
「あなたは嘘を言っているかもしれないし、もし本当だったとしても、毒島熊之助なんて名前、他にもいるかも知れないじゃないの」
 美雪は手にほんの少し力を込め、有紀に押し付けたスタンガンを操作した。
 すぐに電撃の炸裂する音が響いたが、電撃が捉える範囲に、有紀はいなかった。

 どこだ。どこへ消えた。一瞬の戸惑い。
 下。
 来る。

 次の瞬間、大きな衝撃とともに、美雪の意識は闇に落ちた。
 しゃがんでいた有紀が、立ち上がる勢いで美雪の顎を掌で跳ね上げたのだ。

 有紀は自分がわからなかった。なぜ、今のような動きができたのか。
 自分には、体術に覚えなどまったくない。母が許さなかったのだ。




「会長がお心をわずらわせるほどの使い手が?」
「そう、わたくしの推測が正しければ、美雪に倒せる相手ではありませんわ」
「しかし美雪など、生徒会執行部の中では一番の小者……」
「貴方でも、勝てるかどうか、わかりませんわよ?」
 由香里様が、私の戦力を疑った。セバスチャンはわずかに動揺した。今までに、一度もなかったことだったからだ。
「心してお行きなさい、そして……勝っていらっしゃってね」
「必ず」
 言い終えたとき、セバスチャンは、もうその場にはいなかった。




 有紀は、気を失った望をたんすの裏に隠すと、廊下に出た。

 ――殺気。

 身をかがめた有紀の頭があった場所を、まるで鉈のような一撃が襲った。
 何者かの、蹴りだった。壁を粉砕するほどの重い蹴り。
 その場から横に転がった有紀がいた場所を、今度は踵落しが襲う。

「なるほど、確かに」
 背の高い、メイド服の男は微笑を浮かべると、言った。
「生徒会執行部冥土隊筆頭、セバスチャン……参る」
 こう言い終わるや否や、次の攻撃が有紀を襲う。
 何とか回避したものの、回避した先に、次の攻撃が襲い来る。

 このままでは、ジリ貧におちいり、負ける。
 負ければどうなるか。考えるまでもない、そして考えたくもない。
 だが、どうすればよいのだ。

 そうだ。
 有紀は、咄嗟の思いつきで、セバスチャンの蹴りを回避する方向を変えた。
 正面。
 一気に間合いを詰める。

 有紀の予想は、当たった。
 必殺の蹴りを持つセバスチャンも、この至近距離では有効打を持たなかった。
 そしてさらに予想通り、グラウンドにおいては、素人同然だった。

 セバスチャンは、押し倒されながらも苦し紛れに蹴りを繰り出すが、ほとんど当たらず、当たったところで、威力は激しく減殺されている。
 むしろ不用意に暴れたせいで、転がされ、背後を取らせてしまった。

 有紀の腕が、背後から、セバスチャンの首に回った。
 まずい。
 セバスチャンはそう思ったが、どうにもならなかった…。


「……あら」
 綾小路由香里の手にしていたワイングラスが、突然、ひび割れた。
「可哀想な子」
 ワイングラスを床に投げ捨てると、綾小路由香里は、手に滴った赤ワインを、妖艶な仕草で舐め取った。
「やはり、わたくしが行かねばならないようですわね」


 有紀は、自分に、さらに大きな疑問を抱いていた。
 なぜ、こんなことが、できたのか。
 これほどの使い手をただ倒しただけでなく、易々と気絶させ無力化した。よほど能力が上回っていなければ、できるはずはないことだ。
「優しいのね、有紀ちゃんは」
 突然声をかけられて、有紀はその場を飛びのいた。
 そして振り向くと、そこには望が立っていた。
「先輩……」
「助けてくれて、ありがと。ますます好きになっちゃった」
「……」
「セバスチャンと戦ってるとこ、こっそり見てたけど、無理矢理しないで良かった。そうやって、綺麗に眠らされちゃってたかもね」
「なんでこんな事ができるのか、自分でも、わかんないんです」


「もう、どこかへ逃げてしまったかと思っていましたわ」
 聞いたことのある声がする。綾小路由香里の声だ。
 声がした方向を向くと、すでに綾小路由香里は、間合いの一歩手前、という位置まで来ていた。

「私は女になりたかった。女は無理でも、せめて、もっと美しくなりたかった……」
 綾小路由香里は、唐突に言った。いいかげん作者も飽きてきたようだ。
「でも、皆にザンギエフだのゴリラだの地上最強の生物だのと言われていた私は、そんな事をとても口には出せなかったわ」
「……」
「あなたには、きっとわからない悩みよね。母親似だもの」
 綾小路由香里は何かを思い出したように、続ける。
「多分聞きたいでしょう。そのザンギエフが、なぜこんな姿になっているか……」




 ……妻の元を去って、どれほどたったか。
 毒島熊之助は、ガード下に築いたダンボールの城で、目を覚ました。

 何か違和感がある。
 おかしい。

 この手は、しなやかな指を持つ手は、誰の手だ。
 おれの手であるはずはない。
 おれの手はもっと指が太く、固い、固い拳ダコに覆われていたはずだ。

 金属の扉すら蹴り破る、丸太のようだった脚は、細かった。
 筋肉の鎧で覆われていた胸は、肋骨に触れられるほどだ。
 たまに日雇いの仕事に出れば、人間重機の毒島、と冗談交じりに呼ばれ、四人分の日当を貰うほどの膂力を持っていたはずの肉体は、あまりにも変わり果てているように感じた。

 熊之助は走った。公園の公衆トイレへ。
 他のダンボール城の城主を、途中で何人か見た。
 普段なら、「よお、熊さん」と必ず声をかけてくる連中は、何も言わない。それどころか、奇異の目で自分を見ている。

 公衆トイレに入った。
 鏡を見た。

 何が起きたのだ。
 これが、おれか。
 おれなのか。

 鏡に映っているのは、美しい少年だった。
 そう、即座に下半身を確認した。あった。あったから少年だ。

 自分を殴る。驚くほど力がない。なのに、とてつもなく痛い。
 夢ではない――

 そうか。
 これが、おれなのだ。
 理由はわからないが、これは現実なのだ。

「やらないか」
 突然、ツナギ姿の男がトイレに入って来た。どちらの意味だ。いずれにせよ、身構える必要がある。
 男が近付いて来て、間合いに入った。
 以前ならば一撃で倒す事ができただろうが、先ほど自分を殴った時に感じた威力では、それは到底無理だろう。
 ではどうする。熊之助は賭けに出た。
 威力は低下したが、速さは増していると感じていたからだ。

 人中。
 胸尖。
 水月。
 丹田。
 金的。

 見事な、あまりにも見事な五連撃を浴び、ツナギの男は地に伏した。
 やはり以前よりも、筋肉に覆われていた頃よりも、圧倒的に速い。

「けひぃ」
 熊之助は、獣のような歓喜の叫びを上げた。




「そういうわけよ」
「……何の説明にもなってないと思う」
「きっと、神が悪戯心を起こしたのでしょうね」
 綾小路由香里は、すっ、と身をかがめた。

 来る。
 何が来る。
 来ていた。

「期待はずれね。私からは何も受け継いでいないのかしら」
 有紀の首を掴んでいる綾小路由香里は、落胆の表情を浮かべた。
 何か反撃の手は、と有紀が思ったとたん、首を掴む手に力が入る。
「もう、負けているのよ。あなたの全ての攻撃より、私が力を入れるほうが早い」
「……」
 有紀の意識は、そのまま、闇に落ちて行った……。




 ……!?
 有紀が目を覚ますと、そこはベッドの上だった。自分の部屋だ。

 なんだ、夢か。


<完  ていうか、でも何だろうこの気持ちは>


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